毎週水曜日連載中の『教えて!サクラバレエ』シリーズ。
見学や体験レッスンに来てくれた方達が書いてくれたアンケートの質問への答えや、私発信でサクラバレエについてのお話しをしていきます。
3回目の今回は、~本気のバレエ教室ってどういうこと?~の続編になります。
前回は、サクラバレエのサブタイトル“本気のバレエ教室”というのは、“スパルタでレッスンする教室”ということではなく、
“ある程度の覚悟と心の準備をして、めんどくさいことをきちんと積み重ねて行って、その先の幸せへと進もうとする教室”だというお話しでした。
ちなみに前回の記事はこちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12433178119.html?frm=theme
前々回の記事はこちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12431378725.html?frm=theme
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サクラバレエの“本気のバレエ”について、さらに詳しくお話しすると、サクラバレエが目指しているものは、野球に例えると、高校野球。部活動ですね。
高校球児たちの本分は、勉強です。学生ですから。でも、部活も本気でやる。
春の選抜。夏の選抜。正式名称は『選抜高等学校野球大会』。
出たい。どうしても出たい。人生かけても出たい。受験そっちのけでも本当は出たい。
レギュラーに選ばれたい。試合で活躍したい。試合に勝ちたい。監督を胴上げしたい。動機はどうあれ、暇さえあれば練習したい。彼女もつくらなくてもいい。遊びにも行かなくてもいい。甲子園に行くまでは。または、甲子園で優勝するまでは。
部員たちは皆、暇さえあれば、練習、練習。
サクラバレエの生徒たちも本分は、仕事だったり、母親だったり、妻だったり。でも、バレエも本気でやる。
発表会。年に一度の発表会。出たい、どうしても出たい。仕事も家庭もそっちのけでも本当は出たい。
主役に選ばれたい。あの役に選ばれたい。舞台で活躍したい。もっと上手になりたい。先生を喜ばせたい。動機はどうあれ、暇さえあれば練習したい。彼氏も旦那もつくらなくていい。遊びに行かなくてもいい。舞台であの役を踊るまでは。みんなで「やりきったよー!」ってハイタッチするまでは。打ち上げではしゃぐまでは。
生徒たちは皆、暇さえあれば、練習、練習。
(これはあくまでも例えで、実際には生徒の皆さん、彼氏や旦那はご自由に。遊びもしっかり。どちらも踊りにも活きますし、幸せであることは何をするにも最強なので。)
どちらのケースにしろ、なぜそんなに頑張るのか。
それは、楽しいから。
仲間と切磋琢磨することが。
自分の居場所があることが。
上手になることが。
情熱を燃やすことが。
こんなにも打ち込める何かに出会えたことが。
そして、サクラバレエが野球部だとするなら、普通のバレエ教室の大人クラスは、日曜日に集まって楽しむ野球です。
皆でランニング、しない。
バッティング練習、しない。
ピッチング練習、しない。
キャッチボール、しない。
ほぼ、試合を楽しむ。
“今”を楽しむ。
仲間達とのコミニケーションを楽しむ。
大好きな野球と少しでも関われることを楽しむ。
体を動かすことを楽しむ。
バレエでいう、センターで回ったり、跳んだり、“踊る”要素が多いレッスンがこれにあたります。
また、ストレッチが多めの“美容バレエ”のクラスなんかもそうですね。
それはそれで、とても良いことだと思います。
野球との、バレエとの関わり方がそれで満足いく人であれば。
でも、この日曜野球のようなレッスンを、野球部のレッスン、またはプロ野球のレッスンだと思っている人、意外に多いです。
良く聞くのが、
「いえいえ!うちは子供中心のバレエ教室の中の大人クラスですけど、先生も厳しいですし、本気です!ちゃんとした本気のレッスンです!」という声。
では、そのレッスンは、立ち方の練習だけで1曲終わるほど、細かく指導されていますか?
お顔の向き、爪先、腕の使い方、バーレッスンだけで1時間2時間、あっという間に終わってしまうようなレッスンを受けていますか?
バレエ経験3年未満(本当は5年未満)の人に回転の練習をさせない先生ですか?
もしそうじゃないとしたら、どんなに先生が厳しかったとしても、残念ながら本気で生徒を育てるためのレッスン内容ではありません。
そもそも、バレエは上手になるためには、週2~3回ではムリです。
発表会で主役、準主役、ソリスト役を踊ろうとおもったら、コンクールにエントリーするなら(つまり、ヴァリエーションと言われる曲を踊りたいなら、ピルエットという回転をきちんと回りたいなら、大きなジャンプを跳びたいなら)週5~6回でも足りないくらい。
で、そもそもそのスタジオに大人がレッスンを受けられるクラス、週に5~6回あります?って話です。
恋愛に例えるなら、彼氏のような気がする男性から、毎日「愛してるよ」というLINEが来たとしても、週に5日デートしていたとしても、自分の親や友人に紹介してくれない、自宅に呼ばれない、プロポーズされる気配もない…となると、本気ではないだろうな~っていうのは、10代の頃はわからなくても、大人になるとわかってきますよね。何なら目を見れば一瞬でわかりますでしょ。
私もバレエを習いはじめて7~8年目くらいで大人になりまして(笑)、ああ、バレエの先生達、大人には本気じゃないんだな、と気がついて、とても寂しかった。
でもこれは、ちゃんとした理由があります。
そもそも、バレエは子供からはじめることが当たり前でした。
だって、バレエはプロのバレリーナが職業として踊るもので、一般人が趣味で踊るものではありませんでした。
(歌舞伎を趣味で習ってる、っていう話をあまり聞かないのと一緒ですね。)
バレエが日本に入って来てしばらくはそうでしたが、バレエブームと共に、裾野が広がり、ついにプロを目指す訳ではない大人にもバレエ教室の門が開かれた訳ですから、当たり前と言えば、当たり前なんですね。
それでも、先生方、大人にも一生懸命教えて下さるし、そんなバレエの歴史なんて趣味で習っている大人は知らないので、錯覚してしまうんですね。
また、先生方も「大人はおまけよ。」とはっきりおっしゃるケースは少ないです。まぁ、言いにくいことですし、言わなくても気がついてねってことなんでしょう。
さて、これから、ちょっとショッキングなことを書きますので、読みたくない人はパスして下さいね。
はい、書きますよ~。
世の中のバレエの先生の99.9%は子供の頃からバレエを習って、バレエの教師になっています。
バレエを習う人のゴールは、ほとんどは教師ではありません。プロのバレリーナです。
子供の頃から必死でバレエを習ってきたけれど、プロにはなれなかった。または、なれたけれど、思うようには成功できなかった。成功したから、次は指導者になろう。
そうやって、教師になった人の次の目標は、自分の生徒を自分以上のバレリーナに!というのが、割りと一般的かなと思います。
だから、世の中のバレエ教師の99.9%は、大人ではなく、子供を指導して、プロのバレリーナに育てたい。
そもそも大人はバレエに向いていない。子供と違って自分のやり方、こだわりがそれぞれにあります。価値観も出来上がっています。これからプロになれる可能性もなければ、コンクールで上位に入ることもありません。
“硬い体と心の大人”より、“素直で柔らかい体と心の子供”を育てる方が圧倒的に楽です。
つきたてのお餅と、1ヶ月前についたお餅、どっちが食べやすいですか?料理するのが楽ですか?って話です。
(ごめんなさい、はっきり言いますが、子供と大人の体と心はそれくらい違います!)
だから、世の中のバレエ教室のほとんどの先生の本命は“プロになる素質のある、バレエに向いている体と心を持った子ども達”であって、“大人になってからバレエを本気で習いたい人達”ではありません。
そうなると、大人が本気で上手になりたくても、受け皿がない。
子供達のためのスタジオ、子供達のためのレッスン、子供達のための発表会、子供達のための先生。
私は大人になってからバレエをはじめたので、子供をプロに育てたいという思いが一ミリもありませんし、だからこそ、本気でバレエに打ち込みたい大人が中心のバレエ教室を作りたかった。
バレエはとても魅力的なので、子供だろうが大人だろうが一度その魅力にとりつかれたら、自分がどこまで行けるかチャレンジしたくなるのです!
カピカピのお餅だって、上手に料理すれば、お正月のごちそうになります。時間は戻りません。どうやったって、つきたてのお餅になることはありません。ありませんが、違った良さがあります。
カリッと香ばしく焼いて、海苔を巻いて砂糖醤油につけても、お雑煮にしても、美味しく食べられます。また、中にはとんでもなく上質な素材、優れた素質を持っている大人もいます。シェフの腕が良ければ、そしてお餅自身も頑張れば、やる気のない、つきたてのお餅よりも美味しくなります。
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さて次回、さらに衝撃的なことを言います。
最初にお話ししたように、私は、子供向けバレエ教室の大人クラスというのは、“日曜に集まってやる楽しい野球”と同じように定義していますが、実はもうちょっとしっくりくる表現があるのですが、長くなりましたので、また次にお話ししますね。
気になるでしょ?うふふ。
つづく