毎週水曜日に連載中の『プリマの条件』シリーズ。
バレエでプリマ(主役)になるために必要なことの中から、“人間力”についてお話しさせて頂いています。
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46回目になる今回は、前回に引き続き、『懐の深さ』についてのお話しです。
前回の記事はこちら↓
https://ameblo.jp/sakuraballet/entry-12291852192.html
“懐の深さ”とは、私の中では“武士”のイメージとリンクする、というお話でした。
自分の懐に相手の刀をどれくらいまで入れてあげられるか、という、本当にあくまでも、私のイメージなんですけれど。
自分を刺しに来た相手を平然と受け入れる、度量の広さというかね。
相手のことを受け入れ、なぜ相手が自分刺そうとしているのかと、相手のことを理解しようとするくらい、相手のことが考える余裕がある。
“相手と真正面から向き合って、相手を受け入れて、理解してあげられる力”
バレエは、舞台なので、すべてライブ、生で物事が進んで行きます。
“本番”に向けて、すべてのスタッフとキャストが全力で良い物をつくろうと、ベストをつくします。
そうすると、時にぶつかることがあります。
キャストにとってのベストと、スタッフにとってのベストは違いますし、キャスト同士でもそれぞれの役や立場によって、大切にするものが違ってきます。
本番に向けて、どれだけエネルギーをかけられるか、といったことや、様々な事情や感情が入り混じるので、そこにいる人達が本気であればあるほど、ちょっとしたミスコミニケーションや言葉や表情の行き違いで、誤解したり、されたり、ぶつかったりもします。
それが舞台だし、それがバレエです。
だからこそ、活気も出てくるし、エネルギーとエネルギーのぶつかり合いが面白い。
また、それらが化学反応をおこして、予想も出来なかったほどの面白いもの、良いものがうまれたりもしますが、まるで『ケンカ祭り』のように、大きなうねりとなって、ごった返したり、意見が食い違う時もあります。
そんな時に、この、
“相手と真正面から向き合って、相手を受け入れて、理解してあげられる力”
すなわち、“懐の深さ”が大切になってきます。
舞台は1回では終わりません。
何回も、そして何年も続いていきます。
その時に、相手を理解したり、受け入れたリ、許してあげたり、お互いに水に流すことが出来なければ、バレエを続けることは難しくなります。
これは、どこの組織、どこの団体に行って何をしても同じことです。
真正面からぶつかる。
時に何時間でも話し合う。
相手の主張を理解する。
胸襟を開いて、自分の気持ちを相手に伝える。
「まぁ、このくらいでいいか。」ではなく、
少しでも前へ、少しでもより良いものを、と皆で何かを作りあげようとするときに、必要不可欠なことです。
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私は昔から、バレエに限らず、演劇でもジャスダンスでも何でもそうですが、いつも真正面からぶつかってきました。そして、
「舞台が終わったら、ぜんぶ忘れる。」と決めていました。
どんなに腹が立つことがあっても、
そりゃないよ!と思わず叫びそうになることがあっても、
舞台が終わったら、お互いさま。
ぜーんぶ、水に流して、忘れてしまうのです。
もちろん、次回のときに、どうすればもっとコミニケーションが上手くいくかな、
お互いにもっと余裕をもって関われるかな、というのは考えますが。
基本的には水に流します。
(だからと言って、みんなにそうしろと言っている訳ではないですよ。昔の私の場合は、のお話しです。)
なぜなら、そうしないと舞台というものは、続けることが難しいからです。
プリマになるためには、舞台経験をたくさん積む必要があります。
プリマになるまでに、自分と考え方や価値観が違う人達と、一緒になって色々なことを成し遂げて行く必要があります。
またプリマになるためには、真剣に自分や相手やバレエと向き合う必要があります。
そんな時に、
「私は正しい。あの人は間違えている。」という“正しさ”で関わるのではなく、
「あの人も、私も、良い物をつくろうと一生懸命だった。あの人は真剣に向き合ってくれた。ただ、それだけ。」と考えることが出来るか。
「あの人がああしたのも、わかるよ。」
「あの人がああ言ったのも、わかるよ。」
そう思えるか。
どうすれば、お互いにもっと歩み寄れて、
どうすれば、もっと良いステージになるか。
それを考えることが出来る、つまり懐の深さが
プリマになるためには、大切なのではないでしょうか。
◇
・・・気がつけば、あっという間に12月。
この連載もそろそろ終わりが近づいて来ています。
もう少しだけ続きます。
よければ、最後までお付き合い下さい。