大人がバレエを習うということ㉛ ~ONとOFFを切り換える その1~ | サクラバレエ 

サクラバレエ 

サクラバレエは岡山市にある“大人からはじめる本気のバレエ教室です。
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バレエが上手に踊れるようになるために大切なことの一つに、『気持ちの切り換え』があります。

舞台芸術において、舞台の上というのは、非日常の空間です。

そこは、人に見られるための場所で、ある時は中世ヨーロッパのお城になったり、架空の世界の森の中になったり、スペインの街になったりします。

そこがどんな場所でも、大きなホールでも、スタジオ内の発表会でも、特別な空間になります。

一歩舞台の上に上がったら、自分の日常を引きずってはいけません。引きずっていてはクラシックバレエは踊れません。

なぜなら、バレエは自分ではない役、妖精やお姫さまや村娘になって踊りで感情を表現しますから、舞台の上に“いつもの自分”がいてはいけないのです。

幕が開いたら、よーいどん、でそこは非日常の世界、非日常の自分です。

つまり、舞台というのは、自分の中のスイッチをONにして上がらなくてはいけません。

 

ところが、このスイッチをONに切り換えることは、普段から練習していないと、急には出来ません。

ですから、バレエというのは、レッスンがはじまったら、気持ちをパッと切り換えて、集中してスイッチをONにしなくてはいけません。

途中で間違えても、お顔に出してはいけませんし、「あっ、間違えた」などとつぶやくのはもってのほかです。

舞台の上で同じことをしてしまうと、たった一人のこのリアクションで何十人でつくり上げている舞台の上が、日常になってしまいます。舞台を観てくれているお客様のスイッチがオフになります。

そうすると、お客様はもう舞台の世界に入っていけません。“夢の世界”である、バレエのステージを観に来たはずが、あっという間に“日常生活戻ってしまい、“バレエを一生懸命踊っている人達”を冷静に見ることになります。これは、とても残念な時間になってしまいます。

 

こういったミスをしてしまう人は、“オンとオフの切り替え”が普段から出来ていないのです。舞台上で踊りを間違えて、思わず「あっ」と思わずつぶやく人は、普段の練習の時から同じことをしています。

ミスをしたことが、うっかり表情に出てしまう人も、普段のレッスンで同じことをしています。

踊りの間違いをごまかすため、とっさに笑う人も、ウォームアップ用のレッグウォーマーなどを身につけたまま、舞台に上がってしまう人も、本番でも他人の踊りを見ながら踊ってしまう人も、すべて、普段のレッスンから同じことをしています。

 

普段出来ていないことは、舞台の上では絶対に出来ません。では、どうすれば良いのか。

基本的にバレエを習うということは、“スイッチをONにすること”、つまり“緊張感を持って何かをする”ということを身につけることを学ぶということです。

“オンとオフの切り替え”というのは、つまり、“緊張感”のことなのです。

だから、バレエの先生というのは、みんな普段からピリッとしています。近寄りがたいような雰囲気だったり、あえて少し怖いような雰囲気や緊張感を漂わせています。

それは、生徒がバレエ教室に来たり、先生の前に立ったり、レッスンを受ける時にスイッチをオンにしてあげるためです。

また、クラシックバレエの伝統として、『少し緊張している状態のほうが、集中力が増す』という考え方により、緊張感のあるレッスンが行なわれます。

だから、バレエはレッスンがはじまると、ピリッとしたほど良い緊張感があるのです。

それはまた、バレエで一番実力を発揮したいのが、舞台という緊張感のある場所であり、舞台は常に生でライブで行なわれるから、ということもあります。

また、バレエは毎日レッスンするものですので、教師と生徒の関係がなぁなぁになることを防ぐためでもあります。

ともかく、バレエというのはレッスンがはじまったら常に自分ONにしておかなくてはいけません。

もっと言うならば、バレエというのは、教室の扉を開けた瞬間から、もっと言うならば、バレエのレッスンがある日は、朝からスイッチをONにしておかなくてはいけません。

ところが、日本人は、この“オンとオフの切り換え”が苦手な人が多いです。

仕事をしている人はプライベートと仕事のオンとオフの切り換え、家庭を持っている人は、家の中と外との切り換え、大人と子供との切り換え、行く場所によっての服装やメイクの切り換え、相手との距離感による話す内容の切り替えなどです。

高級レストランでのパーティーにジャージで行くのではなく、きちんとしたメイクとドレスで行ったり、ヨガやスパに行くのにスーツにハイヒールにバッチリメイクではなく、リラックス出来る服装で行ったり、外国の人はこのあたりの切り換えがとても上手です。

けれど、日本人はスエットのままコンビニに行ったり、スッピンののまま仕事に行ってしまったり、人前でメイクしたり(外国の方にとても驚かれます!)、良い意味での緊張感が持てなくなっている人がいます。

これは、大人の女性としてもあまりよろしくありませんが、バレエを踊る上でもよろしくありません。

普段から“緊張感”のない人は、バレエのレッスンにも“日常”の“OFFの感覚”のまま参加してしまいます。

緊張感のない人は、バレエを何年、何十年とレッスンしても上手になりません。

なぜなら、バレエは“非日常”と“緊張感”の上に成り立っているからです。

緊張感のない人の踊りは、どんなに上手に動いても、観ている人にとっては

(なにやら動いている人がいるね)という認識です。

“緊張感”を持って踊っていて、自分自身が“非日常の世界”の中にいて、そこに観ている人を引っ張り込める人だけが、(バレエを踊っている人)になれるのです。

それは、普段のレッスンの時から同じです。

普段のレッスンを練習だと思って、素のままで踊っている人は、何十年レッスンしても(動いている人)です。普段のレッスンで“非日常に入る”、つまり、“スイッチをON”に出来ない人は、本番では、絶対に非日常のスイッチを入れることが出来ません。たとえジゼルの役を踊っていても、舞台の上には(ジゼルを頑張って踊ろうとしている○○ちゃん)がいるだけです。

観た人達は「お~、○○ちゃん、頑張ってるな~。パチパチパチ(拍手)」で、おしまいです。

でも、踊っている人は、頑張っている自分を見せたいのではありません。(子供のバレエならそれもあると思いますが、日本のバレエ教室はほとんどが普通の趣味としてではなく、芸術を学ぶ場として提供されていますから、最終的に目指すのはそこではないはずです)白鳥の湖なら白鳥の湖、海賊なら海賊の世界にお客様を連れて行って、酔わせてあげることが、クラシックバレエの最終目標です。そうでなければ、壮大なコスプレ大会になってしまいます。バレエはお客様を非日常の世界に連れて行ってあげてることが出来て、はじめて芸術になるのです。このことを忘れてはなりません。

だから、バレエでは、普段のレッスンはもちろん、日頃から“緊張感”を持つこと、つまり、“オンとオフの切り換え”が出来るということが、とても大切なのです。


つづく

 

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