雨穴「変な家2」疑問点とラストの考察 | 読後つれづれ

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雨穴「変な家2」

雨穴最新作!『変な家』第2弾!
14万字超、完全書き下ろし!
あなたは、この「11の間取り」の謎が解けますか?
前作に続き、フリーライターの筆者と設計士・栗原のコンビが
不可解な間取りの謎に挑む。
1「行先のない廊下」
2「闇をはぐくむ家」
3「林の中の水車小屋」
4「ネズミ捕りの家」
5「そこにあった事故物件」
6「再生の館」
7「おじさんの家」
8「部屋をつなぐ糸電話」
9「殺人現場へ向かう足音」
10「逃げられないアパート」
11「一度だけ現れた部屋」
後編「栗原の推理」
すべての謎が一つにつながったとき、きっとあなたは戦慄する!

 

 

 

前記事で感想を書きましたが、

読んでいる間に出た疑問点や

ラストの考察を書きたいと思います。

 

かなりネタバレとなりますので

これから読もうと思っている方は

読まないで下さいね上差し

 

(かなり長くなってしまったので

お時間のある方、お付き合いくださいm(__)m)

 

 

水車小屋に関する疑問点

私がこの話を読んで、一番疑問点が多く

納得できないのが「林の中の水車小屋」に関してです。

 

この水車小屋は、11の間取りの中で

一番ホラー味が強くて面白いですが、

つっこみどころが多いです。

1.水車小屋の仕掛けを、水無宇季の叔父夫婦は知っていたのか

水車小屋が「絹が身を隠すための小屋」という解釈は、外の祠からも賛成できます。

しかし、その仕掛けはなぜ外からしか動かせないんでしょうね。

そのせいで、絹は中に閉じ込められて死んでしまったわけですし。

 

栗原は水無宇季の叔父たちが、子供を奪い絹を閉じ込めて餓死させたと推測していますが、

そうなると叔父夫婦は、その水車小屋の仕掛けを知っていたことになります。

しかし、水無宇季は

「叔父様たちが所有しているものではないでしょうが、家から近い場所にありましたので、何かしら、ご存じのはずだと思ったのです。」

と書いています。

所有していないのに、なぜその仕掛けを知っていたのでしょうか。

 

私は、絹の手を切って赤子を奪い、水車小屋に閉じ込めて餓死させたのは清親の妻ではないかと推理します。

相手が清親の妻だからこそ、絹は赤ちゃんを奪われないよう強く手を握ったのではないでしょうか。

絹を閉じ込めた後、さすがに赤ちゃんは殺せずそこに捨てて行ったのか?

それとも、叔父夫婦に託していったか。。。

2.遺体は本当に発見されたのか?

本文では「遺体が発見され、梓馬清親は追い詰められて自殺したのでは?」と推理していますが、

地元新聞には「女性の遺体発見」といった記事は無く、地元の人も「聞いたことがない」と言っていました。

よって「女性の遺体」は、実際には発見されていないと思います。

実際に遺体を見たかもしれない宇季も、警察には届けていないのでしょう。

3.事故物件マップに書き込んだのは誰か

上記2を踏まえると、
 
事故物件マップに、この元水車小屋の情報を書き込んだのは誰か?
 
ということになります。
私は、水無宇季の関係者だと推察します。
この情報は日付だけでなく「番地」まで正確に書かれています。
『明眸逗留日記』を読んだだけの人ではそこまでわからないと思います。
 
水無宇季が軽々しく周りに話すとも思えません。
その話を伝えた相手は「ヤエコ」だと推理します。
 
ヤエコの養父母は水無宇季の叔父叔母のため、
ヤエコと宇季は当然交流があったと思われます。
ヤエコは宇季からその話を聞き、
実母を見殺しにした養父母を恨んだのではないか?
と思います。
 
しかしヤエコは2001年に亡くなっています。
こういった事故物件マップのサイトが世に出たのは、
もっと後だと思われます。
(調べたところ、「大島てる」が2005年だそうです)
 
そのため、事故物件マップに書き込んだのは
ミツコ
ではないかと、私は推測します。

5.水車小屋を増築したのは誰か

栗原は、水車小屋を増築したのはヤエコであり、

かつて、母親が自分を抱いていた場所を要塞のように取り囲み、最後くらいは、誰にも見られず真っ暗闇の中で眠りにつきたかった

という「自殺するための家」を作っていたと推測しています。

 

しかし、その解釈はいまひとつ釈然としません。

そこで私は想像する、ちょっと気味が悪い結論は

 

「この家の下には、絹の死体が眠っている」

 

ということです。

 

絹の死体は発見されていません。

 

この増築は、当然ヒクラハウスが行っていたと思います。

絹の遺体を隠すことも可能だったかもしれません。

そして「再生のつどい」が解散後、元水車小屋に二階が増築されました。

ヤエコは余生を、母親の墓の上で過ごすつもりだったのかもしれません。

しかしそれさえも、許してもらえなかったのでした。

ヤエコの死は事故なのか

物語のラストで、筆者はミツコから話を聞きました。
その告白では、結果的にミツコは保身のため義足を隠し
そのためにヤエコが亡くなったということでした。
 
しかし、そのラストには
違和感を感じました。
 

ヤエコは自ら階段を落ちたのか

ヤエコは亡くなりましたが、それはたまたま打ち所が悪かったせいです。
階段から落ちても、死ぬとは限りません。
しかもヤエコが「わざと」階段から落ちた場合、
防衛本能が働いて、真っ逆さまというわけにはいかないと思うのです。
 
それに、ミツコの母親が、ヤエコを亡き者にしようと思った場合
「義足を隠す」というのは、あまりにも消極的な方法です。
ミツコのビーフシチューに毒物らしきものを入れさせた人なのですから。

トイレの扉が開く方向

もしヤエコが、ミツコが義足を隠したことを知らず、本当にトイレに行こうとしていたとします。
その時、右側の壁づたいに歩いた後トイレの扉をあけようとした場合、どのように進むでしょう。
 
通常の人ならばこうですが
 
ヤエコの場合は、このように進むのではないか?と思うのです。
扉がドアノブが右にあり、左に引く形であること、
中にいる詩織さんが扉が開く可能性があること、
を考えると、ドアの左手にいるのが自然だと思うのです。

誰かが突き落とした可能性

ミツコの父親は、義足を隠す日時を「来週の土曜日の朝」と指定しています。
事故に見せかけたいのならば、時間はまだしも
日にちを指定する必要があったでしょうか?
 
それをわざわざ指定したというのは、
確実に突き落とすためではないでしょうか。
 
詩織は「音がした後すぐ廊下に出たが、誰もいなかった」
と言っていますが、トイレの中で落ちていく音まで聞いていたのですから
それほど「すぐ」ではないと思われます。
 
ミツコとヤエコの住んでいた屋敷の間取り図を見ると
非常に不思議な感じがします。
 
この家を詩織さんは「事故に遭いやすい家=ねずみ獲りの家」と表現しています。
確かに、踊り場もないまっすぐな階段は危険です。
しかし2箇所に階段が必要でしょうか?
ヤエコ(お祖母さん)の部屋の出入り口、トイレの位置を考えると
「ヤエコを落とすための階段」は一か所で十分だと思うのです。
 
もう一方の階段は、もしかしたら、
誰かがヤエコやミツコに見られないように出入りするためでは?
と思いました。
 
その階段からは、奥の部屋へヤエコにもミツコにも見られずに行くことができます。
しかも、奥の部屋はヤエコとミツコの部屋の両方に接しています。
つまり何らかの方法で、二人を見張ることができるのです。
(実際、ミツコは父親との会話を、
接している部屋のヤエコが聞いていたのでは、
と考えています)

ミツコは義足を隠したのか否か

私は、ミツコは義足を「隠していない」と思います。
詩織は警察から事情を聞かれたと言っていました。
ヤエコは階段を落ちた時、いつもは装着している義足を装着していませんでした。
これは当然警察も調べたと思います。
しかし問題にならなかったということは、義足はヤエコの部屋にあったのでしょう。
ミツコは「久しぶりに家に帰った時」に本棚に義足を発見しました。
 
誰かが、そこに置いたのだと思います。
 
誰か。
 
それはミツコの母親に違いありません。
 
ミツコの母親は、ミツコに「お祖母ちゃんを殺した」という罪悪感を植え付けたのです。
そしてミツコは事故物件マップに☆を付けることで、せめてもの告発をしたのです。
 
 
 
以上が、私の考察です。
 
 
これでも辻褄が合わないところはあるのですがあせる
とりあえず自分の中では納得できました。
 

今の時代にまだたくさんの

「ヒクラハウス」=「闇をはぐくむ家」が残っているのが怖いです。

これらがまた事故物件を生み出しそうです。

 

 
 
最後に、私が作成した年表を乗せておきます。
時系列で並べたため、少々見づらくなっているかもしれませんが
考察のお役に立てば幸いです。