アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」
真冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。
奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。
偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……
ミステリの魅力が詰まった永遠の名作。
過去に文庫で所有していましたが、売ってしまい
しかしKindleで買い直しました。
「オリエント急行殺人事件(1974)」と
「ナイル殺人事件(1978)」は
小説より先に映画で観ましたが、
「すごく面白かった!」という記憶だけ残っており
内容は全く覚えていませんでした
ただ「オリエント急行殺人事件」のオープニング、
列車が発車するホームに、登場人物が次々と現れるシーンは
印象に残っています。
主役級の俳優達が勢ぞろいで(当時は知りませんでしたが)
華やかで、アカデミー賞授賞式のレッドカーペットのようでした
私のエルキュール・ポアロ(デヴィッド・スーシェ)のイメージはこの作品で確定してしまったので、
「ナイル殺人事件」のポアロ(ピーター・ユスティノフ)にびっくりしてしまいました
で、肝心の内容ですが
犯人もトリックも知っているのに、
何度読んでも面白いです。
雪で閉ざされたオリエント急行という舞台。
乗り合わせた乗客一人一人を取り調べるけれども、
その身元や発言が正しいかどうかは調べる術がなく
目の前の状況だけで推理するポアロ。
そしてそのラストも秀逸だと思います。
このラストの納め方、コナン君だったら納得する!?と思ったりしますが
(真実はいつもひとつ、ですからね)
冒頭にマシュー・プリチャード(アガサクリスティーの娘婿)の文が寄せられていますが、それが大変興味深かったです。
昔の汽車旅行というのは現代と違って、長時間であるが故に社交の場であったこと。
そして彼のアガサ・クリスティ評。
彼女の小説には、犯罪の犠牲者に対する配慮や、社会正義への願望、生命の尊重といった思想が根底に流れています。時代の雰囲気をとらえた娯楽小説と犯罪の邪悪さを描いたミステリ――この二つの融合こそが、クリスティー作品の人気の秘密といえるでしょう。
アガサ・クリスティー; 山本 やよい. オリエント急行の殺人 (クリスティー文庫) (p.7). 早川書房. Kindle 版.
私がクリスティーの作品が好きなのは、まさにその点ではないかと思うのです。
そしてポアロよりミス・マープルの方が好きなのは
その特徴が、さらに顕著に表れているからなのだと思います。
今回読むにあたって、より想像できるように
オリエント急行について調べてみました。
現代の寝台特急列車とは全く違う
ぜいたくな旅ですね。
箱根のラリック美術館に
オリエント急行が展示されているらしいので
いつか行ってみたいです