貴方が男というのなら | 瑞目叶夢の小説【台本】置き場

瑞目叶夢の小説【台本】置き場

エブリスタで掲載中の小説の中でもSpoonで声劇や朗読台本として使っていただいても問題ないものを置いています
小説として読むだけでも良いですし
使っていただいてもいいです、使っていただく場合は、聞きたいので教えていただけると助かります

セリフ4人

 

伯爵家の末娘、他の子と変わらぬ愛情で育てられていたが体は貧相でとても女とは見えない体型、どうにかしようと頑張って食べるも食が細く、あまり沢山は食べれない

姉達はあんなに豊満で豊かな身体をして男性に求められると言うのに、フリルや大きな飾りで誤魔化す胸元はペタンとして、小さなお尻を隠すようにパニエやドロワーズでふくらませる、胸のかさ増しさえ気が付かなければ一見腰の絞れた美しい体型にも見えない事はない、けれどどんなに髪を伸ばしても可愛いい少年にしか見えない中性的な男よりの顔で男が女装しているようにも見える、色黒で線が細いと言うのに身長に恵まれすぎた背は男と大差ない、背の低い男なら見下ろすほどであるので更に女装のようになる、

ドレスよりも騎士の鎧のほうが似合うんじゃないかと影で話しているのを聞いたことさえある。

背の高さを気にして少し猫背になれば姉達に背中を叩かれ姿勢を正し、けれどそれで周りから注目されるのかといえばそうでは無く【女装のアスメル】なんて通名で「男なら良かったのに」なんて声を聞く羽目になる、

舞踏会では姉達は男達に誘われてダンスホールに出向くというのにアスメラルダは自分の愛称についた2つ名を悲しみながらパティーホールの端で姉達を見る事しかできない、


どうせ私のような人は愛されはしない、どんなにダンスを練習しようと、どんなに姉達に褒められようと、そのダンスを披露するチャンスなど来やしない、ダンスホールで可憐に踊る姉達を見て、自分を重ねてあぁ私もあんなふうに踊りたいと切に願う、

とても素敵な殿方が私をどうかダンスに誘ってくれないだろうかと夢に見る

2曲目が終わり、姉達が踊っていた男と別れてアスメラルダのところに来る、楽しかったぁなんてはしゃぐ姉が羨ましいと見ていたら大公殿下がアスメラルダ達の前に来た。

姉が大公殿下に見初められたのかと思えばその手はアスメラルダの方に差し出される。


「レディーアスメラルダ、あなたと踊る栄光を私に下さいますか?」


なんてことだろう、美丈夫で地位もあり物腰が柔らかく人気者の大公殿下がよりにもよって【女装のアスメル】をダンスに誘ったのだ!


姉達はアスメラルダの腕をつついて「手を取るのよ」「アスメル手を取らなきゃ」と急かすアスメラルダは大公殿下の手にそっと手を載せる


「喜んで」


アスメラルダは手を引かれて夢のダンスホールに足を踏み入れる


華やかなダンスホールで踊る二人は、アスメラルダの貧相な身体など気にならない程美しい舞、夢のダンスホールで最高の殿方と踊ることのできる光栄、幸せなアスメラルダの笑顔は誰よりも美しくてそのダンスも相まって【女装のアスメル】なんて酷い言葉は浮かばない「アスメラルダはあんなに美しかったのか」と感嘆の息が落ちる


流麗なダンスを舞う大公殿下とアスメラルダ、今日のパティーの主役は二人だと言うように輝いて見える、楽団の演奏が祝福の讃歌のように奏でられている、夢のような時間いつか素敵な殿方がと思っていたがまさか大公殿下に手を差し出されるなんて、なんて幸せなのだろうと、幸福に浸っていれば音楽が終わり、夢の時間も終わった。

少し寂しい思いをしながら大公殿下に連れられて姉達のもとに戻る、

大公殿下は最後に引いていた手に口付けを落としくれる


「後日お宅に伺わせて頂いても」


ドキリと胸が脈打つ、それを意味するのはもしかして婚約の話を両親とすると言う事だろうが、大公殿下の訪問なんて伯爵家が嫌でも断れはしない、いや、嫌なことがあろうかそんな光栄なことがあって良いものか


「喜んでお待ちいたしますわ」


嬉しさと緊張で囁くような声になってしまったが大公殿下にはその声が届いていて「ではまた会いましょう」と去っていく

姉達はそれを見ていてとても喜んでアスメラルダを祝福してくれる。こんなに嬉しいことがあって良いのだろうか、これは神の祝福かそれとも遊びの罠か、まさか夢ではあるまいかと手の甲をつねって痛みを感じ、夢現の話ではない喜びを感じるのだった。


翌日、本当に大公殿下がアスメラルダの家に来た。

大事な話があるからと両親と大公殿下が話す間アスメラルダと姉は庭の東屋で楽しく話す「良かったわねアスメラルダ」「貴方に先を来されるなんてねぇ」と姉達に祝福されて幸せを感じる、1番目の姉には幼い頃からの婚約者がいる親戚の子爵家の次男、女しか居ないこの家の相続権を持つ親戚、将来は二人でアスメラルダの家を継ぐのだ、2番目の姉はまだ運命の相手やらを探しているらしい、美人だから寄り付く男はいるが見た目しか見てない馬鹿ばかりと少し口の悪さがたまに傷、そんな二人に祝福される。


「良い人がアスメルを気に入ってくれて良かった!」


とずっとアスメラルダの相手を心配していた、そんな二人を安心させることが出来てアスメラルダは喜んだ、あぁこんなに幸せになれるなんて!


喜んでいると使用人が来て両親が呼んでいるとのこと、姉達に祝福されながらアスメラルダは両親と大公殿下のもとに行く、


部屋に入れば両親が笑顔で迎え入れてくれる、そして大公殿下の前に行く、そして大公殿下がアスメラルダの前で跪く


「レディーアスメラルダ私の妻になって頂けませんか?」


優しい笑顔の大公殿下


あぁ私はこの時のために産まれてきたのだ


「はい、不束者ですがよろしくお願いします」


こうしてアスメラルダは、大公殿下と婚約した。

そしてそんなに日も経たず盛大な結婚式をしてアスメラルダは大公夫人となった。

大公夫人となってアスメラルダは夫と共によく動いた。頭の良かったアスメラルダ、政治家との話もとても盛り上がり、舞踏会ではその素晴らしいダンスで人気になった。

【女装のアスメル】は何処へやら大公夫人アスメラルダは素晴らしい淑女となった。

でもその心に澱みが起きる事件が起きた。

ある日会食会から体調が悪いと出ていった大公殿下の代わりにその会食を上手く回して政治家や傘下の貴族達を楽しませて帰した後、心配で大公殿下の部屋に向かうと、ほぼ裸の男が使用人の服を抱えて走って出てきた。

逃げる様に去っていく男は最近入った若い青年、アスメラルダを少し恐るように見ながら逃げていった青年が出てきた部屋は大公殿下の部屋、たまに服の淫れた男が出てくる事はあった。あまりの考えたくなかった。信じたくなかった。まさか大公殿下は・・・・


アスメラルダは、そっと大公殿下の部屋に入る


「あーアスメル、もう会食は終わった?」


優しい優しい大公殿下、愛しい人の服は乱れていてそれが何があったかを現している、泣きたい気持ちを我慢しながら大公殿下に問いかける


「お加減はよろしいのですか?」


アスメラルダがそう聞けば大公殿下は「近くに」とアスメラルダを呼ぶ

アスメラルダは乱れた服装でベットの端に座る大公殿下の方に行く、ベットも整える暇など無かったのだからひどい有様だ、大公殿下は、アスメラルダの手を取って優しく撫でてキスをする


「おいで」


呼ばれてアスメラルダは大公殿下に身体を預け、さっきまであの使用人が寝ていたであろうベットに横たわるのだった。


もうバレてしまえば隠す気もないのか、大公殿下は、使用人の見目美しい男を愛でる事が度々増えた。

それでわかった、大公殿下はアスメラルダが男のようだから結婚したのだ。

男では世継ぎを残せないし大々的に公表できない、だからってこんな扱いあって良いのだろうか、アスメラルダは大公殿下だけを愛しているのに大公殿下には愛する者が沢山いるようだ。


夜の用事がないわけではないだがそれも男児を産むための行為、愛ではない


アスメラルダは愛してもらえない悲しみを外に求めた。理想的な夫人になる事で国中の人がアスメラルダを愛してくれる、ファッションを真似して親愛の気持ちで接してくれるし社交界でアスメラルダを嫌いな人は居ないほどだ!けれど大公殿下だけがアスメラルダを愛していない、アスメラルダの愛する人、どんなに周りに愛されても物足りなさを感じてしまうアスメラルダはある夜、シューミーズ姿の自分を鏡で見る、どんなに着飾っても線が細く男のように凹凸の無い身体、浅黒い肌が中性的な顔に男らしさを出させる、長い髪だけがアスメラルダを女だと言っている。


そこでアスメラルダは気が付いた。


あぁ、男になれば良いのか、


そしてアスメラルダは、メイドに告げた。


「ねぇ、髪切ってくれる?」


そして翌日、朝食の席、

なかなか来ないアスメラルダを大公殿下は心配する


「アスメルはどうしたんだい?具合でも悪いのか?」


「それが・・・」


執事は目線をそらし困った顔をする


どうしたのかと思っていれば、食堂の扉が開いてアスメラルダが出てきた。

だがその姿は、短く切られふわふわの髪、スカートではないが女性らしさを忘れない華やかな装飾のパンツ姿、それは大公殿下の理想の青年のような姿


大公殿下は席から立ち、アスメラルダの方に行く


「アスメル、その姿は・・・」


「普段はこの様な格好をしようと思いますの、ドレスよりも自分に似合ってて私も笑ってしまいましたわ、公式な場ではカツラでも被れば良いでしょうし問題ありませんわ、どうですあなた、私はキレイですか?」


驚いた顔をしていた大公殿下だがアスメラルダの短い髪を撫でて甘えるようにすりつく彼女に今まで感じたことの無いほどの愛しさがこみ上げる


「あぁ、君はこの世で一番美しい青年だ」


甘い声にアスメラルダも微笑むのだった。