天使の羽 | 瑞目叶夢の小説【台本】置き場

瑞目叶夢の小説【台本】置き場

エブリスタで掲載中の小説の中でもSpoonで声劇や朗読台本として使っていただいても問題ないものを置いています
小説として読むだけでも良いですし
使っていただいてもいいです、使っていただく場合は、聞きたいので教えていただけると助かります

セリフ4人

 

僕には人に翼が見える

空に飛ぶ事ができない翼、他の人には見れず触ることもできない翼


大学のキャンパスの中を見渡せば色とりどりの翼
 

 

その翼は基本は白なのだろうが人によって様々な色をしている

いつも怒る人は赤く

いつも悲しんでいる人は青く

絶望すれば黒い

欲望は内容によって汚れて基本は緑

お腹が空いていれば黄色く

楽しんでいる人は輝き

傷付けば少し羽根が抜けてボサッとなる


要はその翼は人の心を表している

まぁ明るい人はキレイな翼なのかと言えばそうでも無い、楽しんで光っているように見えてもどこかボサボサでいろんな感情が混じって少し汚いほどに見える

殆どの人がいろんな色が混ざって汚い、

例えば僕の目の前でゲーム機に罵詈雑言を小声で吐いている自己中な友人と名乗る人は学生時代イジメられたと言うので翼はボロボロで折れてしまいそうな程で怒りの赤や悲しみの青イジメっ子のが苦しめばいいのにと言う汚い欲望は沼のような色をだし、ゲームに勝ちたい欲望の緑まであって

ぐちゃぐちゃと混ざった翼はボロボロさも相まって見ていられないほどだ、

まぁ誰の翼を見ても似たようなものだが


そんな感じで汚い翼に辟易として人を避けていれば、この友人と名乗る男は君も僕と同類なんだろ?なんて言って近づいて来て、どこにでも僕の後に付いてくる、

そんな汚い翼を見ていたくない僕としては迷惑な話で、付いてくるなと言っても、「どうせ僕以外に付き合ってくれる人なんて居ないんだからそんなにそっけない事言うなよ」などと申すもので、だから僕は人と付き合いたくないのだと言えば「わかるぞ、人って醜いもんな、けど僕達は似た者同士だ僕は他の醜い奴らとは違う」とかふざけた事をほざく、醜い奴らと違う?あぁ違うね、こいつは他のどんなやつよりも汚い翼をしているからな、

もう何を言っても自己中に解釈し、「君の翼は汚い」と思わずこぼせば、

「翼?なに?翼が見えるとか?中2病は高校くらいで辞めたほうがいいぞ?社会人じゃ痛いだけだからな」

なんて的はずれなアドバイス、もう何を言っても無駄だろうと僕はできるだけ彼を見ないようにしながら好きなようについて来させている、唯一自由になるのは放課後、

彼はねずみ講にハマっているらしく、前に強引に連れて行かれそうになった時に強く怒ったら羽根を青くさせて謝って来てそれ以降は連れて行こうとはしないがねずみ講は辞めずに講演会に参加するのだと帰っていく


ただでさえ汚い翼の渦に巻かれて毎日辟易として居るのになぜあんな汚い翼を毎日見なければ行けないのか、自分の翼は見たことが無いが他の人より幾分かマシだとは思う、この目のおかげで攻撃的な人は避けてきて傷つく事とかも殆ど無いし、欲望といえばこの翼が見えなくなればいいのにと言うくらい無欲無感情で生活している、いや、最近はあいつのせいで怒ることも多いから赤味がかっているかも知れないが、そんな事を思いながら地面を見て歩く、できるだけ翼を見ないように人の足元だけを見て人を避ける、


それが僕の日常、と言ってもどうしても翼が目に入ることもある、もうボロボロで心が壊れそうな人や壊れている人は翼が折れて引きずっているからだ、青黒く汚れた引きづられる翼を見て思わず顔を上げてしまった。


その勢いで周りの翼も見える、うわっと思った次の瞬間僕は一つの翼に目を奪われるキラキラとした日差しを浴びたような黄色味を帯びた踏まれていない新雪のように白い、欠けていることも無いキレイな翼、まるで産まれたての赤ちゃんがこの世に産まれたことを喜んでいるように汚れのない綺麗な翼、そんな翼がある物か!あるはずが無い!きっと赤ちゃんの・・・・翼・・・・とか・・・

翼から目線をずらせば色素の薄い揺蕩う髪に肌でさえ汚れのない白、桃のような口は小さく愛らしく大きな黒曜石の目が目の前の男を見て悩んでいる


こんなに美しい人が居るのか・・・・とほおけていて、は!と気がつく、目の前にいる男は赤や緑の混じった少しボサボサとしている羽根、あれは大学のDVで女癖が悪いと有名な男だ僕はとっさに走って彼女の手を掴む


「へぇ~?」


なんとも間抜けな声を上げながら彼女は腕を引かれて僕に付いてくる


「おい!俺が先に目をつけたんだぞ!」


なんて叫ぶ男の言葉は無視して必死に走る、どこまで走ったのか、馴染みのある公園にいつの間にか駆け込んでいた。

上がった息を落ち着けるように両手を太ももに置いて体を支える

公園にはもう遅い時間というのもあって人は居ない。

あいつは彼女とは言っていなかった。ならナンパだったのだろうだが見た目がいい男だ、彼女も困ってはいたが迷惑な色は出て無くて楽しんでいた。もしかして余計なことをと怒ったかも知れないと彼女を見たが彼女は楽しそうに息を落ち着かせていて、その翼に一点の曇もないキラキラ輝く翼だ、


どういう事だ?まさか本当に困っていたのか?それにしては翼は綺麗だ、なぜ輝いたままなんだ?


「君はさっき迷惑だったんじゃないの?」


思わず口をついて出る

彼女は大きな目を僕に向けて首を傾げながら言う


「何を困るの?可愛いと褒めてもらえたわ、それに彼はイケメンだったし」


ならおかしい、それなら僕に怒りがあるはずだ良いところを邪魔したのだから


「じゃぁ何で僕に怒ってないの」


それに彼女は無邪気に答える


「あら、助けてくれたんでしょ?彼あんまり良い人には見えなかったものね、ありがとう、久しぶりに走って楽しかった!」


なんで?なんで彼女は汚れない?


「君へんだよ!なんでなんで全部楽しめるのさ!ナンパだってホントは迷惑だったんだろ!」


汚れてくれ!頼むから!


「迷惑?うーん、どうだろう、褒められるのは嬉しかったな、付き合うつもりは無かったけど」


なんで!なんで!


「じゃぁナンパ邪魔した僕が余計なことしたってことでしょ!」


僕がそういえばが彼女は楽しそうに笑う


「あら、そんなこと無いわ、どうやって断るか悩んでいたもの、とても助かったわ」


にこやかに笑う彼女、違う、なんでずっと輝いてるんだ!なんで色が変わらないんだ!


「君は誰にでも尻尾を振るんだね、もしかしてビッチ?」


僕がそう言えば彼女は笑顔を深める


「そんなに自由に見えてるなら嬉しいわ!」


ちがう!違う!違う!!違う!!!



「なんでビッチって言われて嬉しそうなのさ、頭おかしいの?」


「人と違うって事でしょ、嬉しいわ」


「褒めてない!!」


なんで!なんで彼女は汚れない!


僕は彼女を無理やり引っ張って唇を奪うそれでも彼女の目から微笑みは消えず、キラキラした翼が目に入るし、彼女は優しく舌を当ててくる


僕は彼女から離れる、今の僕の翼は真っ赤だろう


「なんで見ず知らずのやつからキスされて喜ぶんだよ!ビッチ!」


「あら?キスしたかったんでしょ?」


首をかしげて笑う彼女、我慢できなくて僕は持っていたカッターをカバンから取り出して服の前を切り裂けばブラジャーまで切れたらしく綺麗な汚れのない美しい肌が顕になる


「あらま!エッチー」


悪戯っ子のように笑う彼女の翼は汚れることなんてなくて美しく輝いている

朱い夕焼けの空を背に輝く翼は何よりも美しい


「なんで、君は汚れないんだ」


傷付く事も穢れることもない翼はあまりにも美しくて羨ましくて


「私を汚すのも美しくするのも私よ、私は全てを受け入れる、私はすべてを愛す、だから私は誰よりも美しいの」


二カッと笑う彼女の翼が羽ばたくように開く

あぁ彼女は飛んでいるんだ、彼女の心は誰よりも強く気高いから汚れない


「じぁ、私約束があるの、きっと怒られちゃうけどこれを見せたら大丈夫かな?」


前を隠すことなく破れた服をひらひらさせて笑いながら彼女はもと来た道を戻りながらスマホを手にとって「ごめーんちょっと暴漢に襲われてて遅くなっちゃったぁ!」

なんて街のアンケートにでも捕まったくらいのテンションで話すのでスピーカーにしていない筈のスマホから声が漏れ聞こえたような気がした。

「そんなに怒らいでよー」なんて的はずれな声を聞きながら

僕は逃げるようにまた走り出す


なんで汚れないんだ!

なんであんなに綺麗なんだ!

どうしても全部楽しめる!

なんで!なんで!!なんで!!!


走って走って町中に出る、いつもは汚くて鬱陶しく感じる翼に安堵するような混乱するような


あんなに綺麗な翼なんてあるはず無いのに

歩いていてふと、お店が閉まって真っ黒になった巨大な液晶に自分が映る

そこに写った自分の羽はボロボロで誰よりも汚かった・・・・・


あぁ、僕は・・・・・


なんて汚いんだ・・・・・