『明日が来るなら』 : Mistery Circle Vol.38投稿作品 | + AcetiC AciD +

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  創始の仮定+思想の過程=化学変化<生来課程

先日の22日、こちらの記事で紹介していた、「Mistery Circle(旧:Mystery Circle)」という創作小説ブログさんにて、(通算)第38回目の投稿作品が公開されましたー。

 不肖、私も参加しております。。。ここのブログでも、ごくたまに詩は載せていますが、小説は久しぶり過ぎて、若干書き方を忘れる始末。。。3年ぶりです、勘弁してください(汗

過去の作品は、このブログの『テキスト軌跡』というカテゴリ(モバイルの場合はテーマ)にブチこんであるので、ご興味のある方はどうぞ。。。

 もともと昔、イラストのサイトを開設するまで、テキスト(詩がメイン)のサイトを持っておりまして、そこ繋がりで知り合った管理人さんに、勧誘いただいて始めたのが最初なのですが、小説としては、ここに未公開のものを含めると今回で私は17作目に当たります。…その割に向上は微々たるものですが(グハ

 さて、こちらのMystery Circleさん、小説を書くに当たって面白いルールを採用されています。以前も記事に書いたことがあるんですが、お久しぶりなので再度。


《ルール》
・小説は、指定された「起の文」から始まり、「結の文」で終わる。
・「起」と「結」の文は、出題者が自身で選んだ本から抜粋する各一文。
・出題者は、前回参加した作家さんの中から選出。
・参加者は、その二文に沿って執筆する。
・おまけ:出題元の本のタイトル当てw

ex.

お題 「おはよう」

 Aさん

お題 「こんにちは」

 Bさん

お題 「こんばんは」

 Cさん


↑上記の場合、Aさんの小説は、「おはよう」で始まり、「こんにちは」で終わらなければならないわけで、Bさんは「こんにちは」で始まり「こんばんは」で終わる。Cさんは「こんばんは」で始まり…って具合になるわけです。
参加者がこの3人だった場合は、Cさんの「結の文」は、最初に戻って「おはよう」になります。

要は、小説でしりとりをするような^^
なので、参加者数が多ければ多いほど、壮大な小説のサークルができあがるということですねw

毎回思います…よく考えたもんだ…と。ご興味のある方は、是非是非、リンクからチラ見しに行ってみてくださいね^^
職業作家でなくとも(プロの方もいますが)、かなり高レベルな作品ばかりです。ジャンルも様々ですし、


復活、本当におめでとうございます。なかなか無い場なので、皆さんが再結集できたこと、遅参者としては第三者的にも、かなり喜ばしく思っております^^


さてさて、そんな復活第一弾。

私のお題は、以下です!

◆起の文 : 一面の窓から差す陽光がまぶしくて、現実に返ってきた気がした。夢じゃないよな、と一人頬をつねった。

◆結の文 : なんて思い切りのよい人間なのか。ふつうは躊躇するものだろう。


これが、今回の私への出題でした!!もう、何かねぇ。大変でした!!笑


もし、お好きな方がいらっしゃいましたら、上記の二文で、是非にちょっとしたストーリーを作ってみてくださいw
このルール形式の面白いところだと思うのですが、他作家様のお題を見て、「私だったらこんなストーリーにする」とか思っても、絶対同じものは出てこないし、むしろ絶対に思いつかない作品で帰ってくるのが凄いところだったり。。。。


と、そんな感じで、行ってみたいと思います。
原稿用紙にすると15枚弱?
小説としては大して長くないですが、ブログとなると長いです、お時間のある時にでもどうぞ^^
感想はじめ、アドバイス・苦情・言いがかり(え)など、ご意見お聞かせ願えると、大変勉強になりますので、そちらもよろしかったら…!!



以下、Mistery Circle Vol.38より、自作品のみ抜粋
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《 明日が来るなら 》

著者:朔


0.

一面の窓から差す陽光が眩しくて、現実に返ってきた気がした。夢じゃないよな、と一人頬をつねった。

職場の大きな事務所の一角、ふと気が付くと自分のデスクにいた。数少ない男性事務員としては、極力、女性陣のランチに付き合わされないようにと、昼休みには屋上へと抜け出しているのだが、いつの間にか、きちんと自分の椅子に座っていたようだ。外は真昼の明るさだ。ぼんやりしている頭をどうにか動かそうと、その光を目に入れる。

「ちょっと木村君、さっきの企画書、早く始めたほうがいいんじゃない?」

と、ふいに声をかけられ振り返る。一瞬、目が眩んでその声の主が黒く焼けたように見え、気分が悪くなる。「わかってるよ」と、今回は幾分か腹立たしく思いながらぶっきらぼうに答えてみる。
「もう…人が心配して言ってるっていうのに」
隣のデスクの女…アスカがため息をついた。俺が唯一、社内で言葉を交わす女性社員だ。朝、上司に指示された企画書のことを言っているのだろう。普段なら、ただ黙って見ているだけだというのに、おかしな事もあるものだ。
よくヘマをやらかす俺のことを、内心、気にかけているのはわかる。だが、多少節介が過ぎる。女性に窘められるほど嫌なものは、男には無いというのに。特にそれが、同期とあっては。
チラっとカレンダーを見る。期限の7月20日まで、あと2日。確かに、仕事が遅いと定評の俺には、無理難題かもしれなかった。対照的に、思い切りの良さと相まって、仕事のできる女で通っているアスカからすれば、同期の好だろう。だがしかし。

「お前こそ、人の心配してる暇あるのかよ」
ボソリと嫌味を言ってやった。お前こそ、訳の分からないことで悩んでばかりのくせに。意地が悪いとは思ったが、つい口をついて出てしまった。だが言ってしまってから、急に冷静さが纏わりついてきて、ゆっくりアスカの顔を見る。

 彼女は驚いた顔をしていた。
『どうして知ってるの?』



01.

 「ねぇ、屋上行くなら私も行っていい?」
昼休みの始まる直前、アスカがそう言った。他の女性社員に付きまとわれるならともかく、アスカならば居ても居なくても同じだろうと、一瞬思ったのは確かだ。毎日隣で顔を合わせているし、かと言って特別何かがある訳でもなかった。
「好きにすれば?」
と、朝のうちにコンビニで買い込んだパンとドリンクとを手に取って、さっさと歩きだす。
「ちょっと、待ってよ!!」
と、アスカ。待つ必要なんか無い。無言でエレベーターを降り、非常階段を昇る。屋上に行こうとしているのは俺だ。

 ドアの向こうの外は快晴だった。ベンチも無い屋上の先に、広がるビル群の窓が反射して眩しかった。事務所の中の空気を忘れる程の、広い空間と空気感。都会独特の汚れた重たい空気ではあっても、ここだけが入社当初からの俺の憩いの場だった。もともと社員が集う為に造られた屋上ではないため、ベンチどころか、フェンスの類も無い。どっかりと、コンクリートに腰を下ろし、パンの袋を破る。
「え、こんな所に座るの?」
追いついてきたアスカ。答えない俺。しばらく立ち尽くしていたアスカだったが、仕方なさそうに隣に腰を下ろした。長い髪が、視界の隅で揺れる。
「今日は自分でお弁当作ってきたんだよね」
「……」
「最近、女子のランチに付き合うの、面倒になっちゃってさ」
「……」
「毎日同じことの繰り返しばっかりなんだもん」
「……」
「どこの課の誰がどうとかさ」
「……」
「誰と誰が付き合ってるとかさ」
「……」
「だからお弁当作って逃げちゃおうと思って」
「……」
「そしたら木村君がいつも屋上で食べてる事思い出してさ」
「……」
「便乗しちゃったってわけ!」
「……」
「……」
風が二人の間を抜けていった。二つ目のパンに手を伸ばそうとした時、アスカが少し声を荒げて言った。
「何か言ってよ!!」

 俺は手を止めて、アスカを見た。涙の溜まる大きな目を赤くして、アスカは俺を見ていた。伸ばしかけた手を、引き戻して俺は視線を落とす。
「そんな事、言う為についてきた訳じゃないんだろ?」
続けて、俺は言った。
「本当は、何が言いたいんだ?」

アスカは無言で、俯いたまま弁当を食べていた。


02.

  「ねぇ、屋上行くなら私も行っていい?」
昼休みの始まる直前、アスカがそう言った。またか、と俺は思う。何度目だろうか。あれから何度もこの言葉を聞いている。
「勝手にしろ」
またも俺は無言で歩きだす。いつも通りに、事務所のあるフロアからエレベーターに乗り、最上階で降りる。非常階段を昇る。アスカの靴音が追いかけてくる。

 「今日はお弁当なんだ」
アスカが言った。そう、と相槌を打つ。
「たまに作るといいよね、こういうのも」
いつもの場所に二人で腰を下ろし、今回も快晴の空の元、すでに昼食は始まっていた。
「今日『も』、じゃないのか?」と、俺。
「やだ、いつもやってたら寝不足になっちゃうじゃない」と、笑うアスカ。
「そうだな」
「それにしても本当、毎日同じことばっかり」
「あぁ」
「もう、女って何で皆ああなのかしら」
「さあ」
「一言一句違えずに、同じ話ばっかりしてるのよ」
「ふうん」
「どうして皆も同じ話題で笑えるのか不思議だわ」

お前も同じだろう…と、言いかけて飲み込む変わりに、別の言葉を投げかける。
「で、お前は何を、俺に言いたいんだよ?」

 風に吹かれる長い髪を、耳にかけながらアスカは言った。
「なんだろうね?」

その視線は、空の向こうを見ていた。俺は、気が付きはじめていた。


03.

 「ねぇ、屋上行くなら私も行っていい?」
昼休みの始まる直前、アスカがそう言った。もう、この言葉は聞き飽きてきた。いつもは空返事の俺も、流石に釘を刺す。
「他に言い方、無いわけ?」
「え、じゃぁ何て言えばいいわけ?」
きょとんとした顔のアスカ。あまりに他意が無さ過ぎて、その表情に返す言葉もなくなる。
「……」
「……」
しばらく見つめ合っていたが、意味の無いやり取りだと思い直し、目線を外して屋上への道程をたどりはじめた。
「何なのよ、もう」
後ろから、アスカのぶつぶつ言う声が聞こえてきていたが、お構い無しに屋上へのドアを開け放つ。お決まりの場所へ腰を下ろし、まだぶつぶつ言い続けているアスカに、座るよう促し、自分はパンの袋を破く為に手を伸ばした。

「今日は弁当か?」
珍しく俺が、会話の口火を切ってやった。
「そうなの!!いいでしょ」
「いや、別によくはないけど」
「ランチ付き合ってばっかよりは、いいじゃない」
「まあな」
口の中でパンをもごもごさせながら答える。アスカも、口に卵焼きを放り込みながら言う。
「どうしてこう、毎日は同じことの繰り返しなのかしら?」
「さぁ、何でだろうな」
「みんな同じ事ばかり言うのよ?」
「へぇ、そうなんだ」
「あのお局様なんか、何百回同じ話してるのか分かったもんじゃないし」
「あぁ、あの人ね…」
「受付の子なんて、その話、まともに聞いてるのか聞いてないのか、
 いつも同じところで笑うのよ?」
「聞いてないんじゃねぇの?」
「いつも初めて聞きましたって感じなの!」
「ふぅん、変な女だな」
「でしょ?」
同意を求めるアスカに、俺は、前回飲み込んだ言葉を放った。

「まぁ、俺に言わせればお前も同じだけどな」

「……」

アスカが黙り込んだ。

「言いたいことがあるなら、言えよ」

「……」

風がアスカの髪を巻き上げた。口元が、寂しそうに笑っていた。


04.

「ねぇ、屋上行くなら私も行っていい?」
昼休みの始まる直前、アスカがそう言った。ため息が出る。何とかならないものなのか。
「いいよ」と、力無く答える俺。「やった」と、はしゃぐアスカ。隣に並んで、歩き出す。

 快晴。一体、どれだけこの空は続くのか。

「今日は?」
面倒くさくなってきた俺が、先に聞いてやる。
「お弁当だよ!」そう言いながら、アスカは楽しそうに弁当を広げだした。いたずらっぽく「少しあげようか?」などと言っている。
「いらねえよ」と、俺はいつものパンを手に取る。
「そう言わずに食べたらいいじゃない!パンとトレードしてもいいよ!?」
アスカがずいずいと、俺の前に弁当を差し出す。
「ふざけんな、彼女でもない女の手料理なんか、食わねぇよ」
今にもフォークに刺した卵焼きを、口に突っ込んできそうなアスカを防ぐため、俺は封を切ったパンを口に詰め込んだ。

 しばらく、これもまた無意味な弁当とパンの戦を交わしたが、諦めたのか、アスカは弁当をぱくつき出した。

「今日もさ、女子達は同じ話ばっかりだった」
「へぇ、またか」
「うん、よく飽きないよね」
「まぁ、そうだなぁ」
「もういいって、言ってやりたくなるんだけどね」
「どうせ言えないんだろ」
「何よ、私は思い切るときは思い切る女ですからね!」
「はいはい、それは我が社の誰もが知ってますよ」
「よく言うわよ、私のことなんか知りもしないくせに」
そこでアスカは、ぷいと横を向いた。その横顔に、俺は言った。
「知ってほしいなら、言えばいいだろ」

アスカの肩が、ピクっと動いたように見えた。

「毎回同じなんだろ?じゃあ、変えればいい」

「……」

「どうすれば変わるんだ?」

「……」

「俺はどうすればいい?」

「……」

アスカの髪が、風になびいて眩しい。初めてアスカを、綺麗だと思った。そして、俺はそれに気が付いてしまった。


05.

「屋上、行くか?」
昼休みの始まる直前、俺はアスカにそう言った。目を丸くして、アスカが俺を見る。
「何で知ってるの?」
弁当が入っているであろうミニバッグを抱え、今正に、俺に声をかけようとしていた瞬間だった。アスカが俺に声をかける時間は、決まっている。今回は先回りをしてやった訳だ。

「行くんだろ?」と、俺。
「う、うん…!」と、アスカ。

肩を並べて歩きだす。見慣れたはずの、屋上までの廊下や階段。腹を括った俺には、それらが全く違うものに見えた。ドアノブに手をかける。分かっている。今回も晴れだ。

 慣れた足取りで定位置へと腰を下ろすアスカ。俺も続いて腰を下ろす。そのまま、パンの袋をアスカに渡す。
「何?」
怪訝そうなアスカに、俺は言う。
「卵焼き」
「え?」
「卵焼きくれよ、パンやるから」
「え、あ、うん」
アスカが動揺していた。「卵焼きあるって、言ったっけ?」などと独り言を言いながら、そそくさとバッグを開ける。

「いつもあるから、知ってる」
ポツリと、俺は言った。
「え?」
弁当の蓋にかけていたアスカの手が止まった。

「毎回、入ってるの見てるから、知ってるよ」
「……」
アスカの指が、小刻みに震えている。

「なぁ」
俺はそれを見ないふりをして、続けた。
「今日もいつもと同じだったか?」

「……」
黙りこくったままのアスカをも、見ないふりをして、更に続けた。

「アスカ、俺の19日は、いつ来るんだ?」




00.

『ちょっと木村君、さっきの企画書、早く始めたほうがいいんじゃない?』

 何度、私はこの言葉を木村君に向けて発したのだろう。彼が嫌がるだろうと分かってはいたが、こうでもしないと、私の日々の繰り返しが終わらない気がしていた。
毎日同じ会話を繰り返す女性陣と、当たり障りなく過ごす同じ時間、延々と繰り返す18日。抜け出す為には、『違う何か』が必要だ。そう思った。

それなのに。

何となく、気が付いてるんじゃないかって思ってた。同じ時間を繰り返してるはずなのに、貴方は同じじゃなかったもの。





FINAL.

 アスカは、弁当に手を掛けたままだった。

「お前、ずっと18日を繰り返してたんだろ?」

「だから、俺に声、かけたんだろ?」

「ずっと、俺だけが繰り返してるんだと思ってた」

「だけど、それはお前だったんだな」

「本当はこれが言いたかったんだろ?」


アスカは、俺の言葉に一言も答えなかった。
風が、止んでいた。

 どれくらいの時間が過ぎただろうか、急に、アスカが立ち上がった。転がる弁当を気にも留めず、肩を震わせながら絞り出した声は小さかった。

「私、どうして『繰り返し』てしまうのかしら…」

俺は座ったまま、アスカを見上げた。逆光で、その表情はよく見えないが、泣いているようにも、怒っているようにも見えた。
「わかんねぇけど、少なくとも、俺の『繰り返し』は、お前からの伝染だな」
「…そうだね、きっと。私が一人で変えなきゃいけなかったんだね」
アスカはもう、震えてはいなかった。

「俺は、どうすればいい?」

「木村君は、そのままでいいんだよ。私のせいなんだから」

「けどなぁ、俺は俺なりにだな…」そう、言いかけた時だった。

「いいから!!」突然に、大声でアスカが叫んだ。
「また明日、19日にね!」
同時に、見上げていたその影がスッと消え、太陽の光が一気に目に入ってきた。またも、眩しさで目が眩む。視界を失った俺の耳に、ドアとは反対の方へ駆けていくアスカの足音が聞こえてきた。
「アスカ!」

目をかばいながら、足音の方向へ何とか目を凝らすと、それはアスカが跳ねる瞬間だった。

「アスカ!!」
俺はもう一度、叫んだ。

屋上の端へと駆け寄ったが、遅かった。俺の手は、アスカの髪を掠めて宙空を掴んだ。訳も分からぬまま、落下していったであろう体を目で追ったが、彼女は、影も形もなく、霧のように消えていた。


こんな時まで、なんて思い切りのよい人間なのか。ふつうは躊躇するものだろう。微かに、彼女の髪の感触が指先に残っていた。ドアの向こうから、『昼休みの終わり』を告げるベルの音が聞こえる。俺は、そのまま事務所へと歩き出した。



「また明日、19日にな」



彼女にも明日は来るだろうか。



明日も彼女に逢えるだろうか。



こんなに明日が待ち遠しいなんて、知らなかったよ、アスカ。



《 明日が来るなら 了 》



【 あとがき 】
あー最後ですね、ミソです、ミソ!!orz
本当、すみません。ギリギリまで来ても、どうしてもラストが纏まらず、こんな形になってしまいましたが…久しぶりだったもので若干おかしな文体&話になっていることと思いますが、えぇ、気がついてます。
是非、ご割愛ください!!!(え

【 その他私信 】
よしなに!!!
遅くなってすみませんでした!!!!

【 お題当てクイズ回答 】
わかりません!!!T T

『+ AcetiC AciD +』 櫻朔夜