文楽祭
文楽のファン感謝祭「文楽祭」。
歌舞伎なら俳優祭、宝塚なら大運動会。
メモリアルな時に開催するため、平均して10年に1度程度の開催頻度になっています。
前回は竹本義太夫300回忌。
この時は大阪と東京の両方で公演をしました。
今回は特に言及していませんが、実は近松門左衛門の300回忌なんですよね。
今回のファン感謝祭が行われた「メモリアル」は何かというと、千秋楽レポでもお届けした国立劇場最後の文楽ということです。
なので、今回は国立劇場で上演する事が企画の意味合いですので、東京のみでの上演です。
今回、チケットの前売りは、チケットぴあのみ。
これはなんと劇場の友の会や所謂演者個々の後援会のような人たちも事前チケットは取り扱わず、全席一律にチケットぴあのみ、という挑戦的な試みでした。
その結果はというと、なんと販売開始3分で完売。
うそ、文楽公演やよね。
と絶句。
歓喜に沸き立ったのは想像に難く無いでしょう。
文楽祭の演目は
重鎮だらけの「車曳きの段」
重鎮たちと山川静夫さんの座談会
全ての演者が太夫・三味線・人形総入れ替えの「天地会」寺子屋の段
この文楽祭が記者発表された後から配役の話し合いが始まったので、それぞれが天地会の稽古を始めたのはおおよそ2ヶ月前くらい。
太夫が人形を遣ったり、三味線弾きが語ったり、人形遣いが三味線を弾いたり。
10年前の天地会は爆笑の渦でしたよね。今年はどうなることか。。
このファン感謝祭は普段の文楽公演とは違って、演者主催の公演。
なので、配役なども演者が話し合って決まりました。
天地会では各々が勤めたいものを申告しました。
前回はツメ人形を持たせてもらったので、今年は三味線を弾いてみようと思ったものの、研修生出身ではないので今まで三味線は触ったことがありません。
*研修生は半年近く三業全ての研修があります
なので、「三味線を弾きます」と申告する前に、燕二郎くんに三味線を教わることにしました。
それが、6月のこと。
まずは撥の持ち方を教わりました。
▲燕二郎くんの撥を借りていました
小指を挟み込むようにして待つのですが、文楽の三味線の撥は、他の三味線の撥と違って分厚くて重い!ということで、そもそも持つだけで苦行。
三味線弾きさんの小指には撥ダコといって撥の角が食い込む部分にタコができています。
そういえば過去雑誌の1ページマンガとエッセイの連載でそんな豆知識を書いたりしたけれど、自分の小指にタコを作る日が来ることになるとは。
ちなみにこの時点ではまだ三味線の音が出るようになるのかまったくの未知数だったので、ぼくの配役はツメ人形の手習い子でした。
そう!そもそも音が!音が出ないのです!
糸目掛けて撥を下すのですが、ぴよよん、と小鳥が小馬鹿にしたように囀るような音しか鳴りません!
三味線を弾くにあたって、ウォーミングアップといおうか、トレーニングといおうか、腕がためという基礎トレがあります。
三味線の糸の部分に手拭いをかけて、ひたすら撥を振り下ろして規則的に糸に当てます。
まずは、狙って糸に当てられるようになるところから始めました。
ちなみに、腕がためはどれほど上のキャリアの方であろうと、楽屋入りをされたら皆30分近くは行ってらっしゃいます。
手拭いをかけて弾こうとしても、手拭い越しに音が出ません。
三味線弾きさんたちはこの状態で糸が震えて手拭い越しに音が響きます。
まずはこの腕がためでぱちぱちと糸が響くようになることを目指しました。
同時に、燕二郎くんから「絵本太功記」尼ヶ崎の段の終盤で光秀が木を登る時に弾く有名なメリヤスを教えてもらい、腕がためで撥をおろす右手の感覚と糸を押さえる左手の感覚を養う練習をはじめました。
▶︎3ヶ月で弾けるようになるのか!?さらにやってきたピンチとは!!その②に続きます。
とよたけ・さきじゅだゆう:人形浄瑠璃文楽
太夫
国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
公演に主に出演。
その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
オリジナルLINEスタンプ販売中
豊竹咲寿太夫
オフィシャルサイト
club.cotobuki
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