さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 竹本咲寿太夫





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令和9年初春公演

国立文楽劇場


公演日程

初日:1月3日(日)

千穐楽:1月24日(日)

休演日:14日(木)


上演演目


第1部(午前11時開演)


万才・鷺娘

芦屋道満大内鑑

保名物狂の段

葛の葉子別れの段




第2部(午後2時30分開演)


伊賀越道中双六

円覚寺の段

沼津の段

伏見北国屋の段

伊賀上野敵討の段




第3部(午後6時45分開演)


夕霧太夫三五〇回忌

曲輪文章

吉田屋の段




入場料金

第1部・第2部 6,700円

第3部 5,500円





令和9年初春公演(国立文楽劇場)の演目が決定いたしましたので、お知らせいたします。


今回の初春公演も、新年を彩る華やかで多彩な演目が揃っております。


特に第1部で上演される『芦屋道満大内鑑』の「葛の葉子別れの段」は、今夏の夏休み公演で『雪狐々姿湖』をご覧になった皆様にこそ、ぜひご覧いただきたい古典の狐の物語です。


『芦屋道満大内鑑』「葛の葉子別れの段」は、人間の男性と結ばれた白狐が、正体を隠しきれなくなり我が子を置いて去っていく切ない名作です。




最大のハイライトは、我が子を抱いたまま筆をくわえたり左手を使ったりして障子に和歌を書き残す場面。

人間ではない正体が現れる瞬間、そして親子の情愛が凝縮されたドラマチックな展開は必見です。


夏の公演で狐の物語に魅せられた方にも、ぜひ味わっていただきたい古典の名作です。

名作に息づく狐の描写や親子の情愛を、たっぷりとご堪能いただけます。




『伊賀越道中双六』は、仇討ちの道中を描いた重厚な義太夫狂言です。


今回の見どころは、なんといっても劇的な展開を見せる「沼津の段」です。

旅の途中で偶然出会った二人が実は生き別れの親子で、しかし敵味方に分かれる別れや、緊迫した人間ドラマが大きな魅力となっています。

重厚な義太夫の語りと巧みな人形の演技が織りなす、文楽ならではの濃密な人間模様がご堪能いただけます。



また、第3部では「夕霧太夫三五〇回忌 曲輪璋(吉田屋の段)」が上演されます。

「曲輪文章(吉田屋の段)」は、歌舞伎の『廓文章』としても大変有名な傑作です。


大坂新町の揚屋「吉田屋」を舞台に、放蕩の末に勘当された伊左衛門と、恋人の遊女・夕霧が織りなす上方情緒あふれる艶やかな恋模様が描かれます。

身なりは貧相になりながらも恋人を想う伊左衛門の切なさと、嫉妬からつい冷たく当たってしまう夕霧の心理描写が魅力の名場面です。

夕霧太夫の350回忌という特別な節目に、歌舞伎でもお馴染みの名作を人形浄瑠璃ならではの味わいでご堪能いただけます。


ちなみに、作中にゆかりのある夕霧太夫のお墓は、国立文楽劇場から歩いて10分とかからない場所にございます。


劇場にお越しの際は、ぜひ周辺の史跡などもあわせて巡ってみてはいかがでしょうか。


公演日程は、1月3日(日)初日、1月24日(日)千穐楽(休演日:14日)となっております。


新年のはじまりに、劇場で皆様にお会いできますことを、心よりお待ちいたしております。








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国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽公演に主に出演。
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チャップリン本人から「みんなによろしく、愛してるって言って」と、直接メッセージを託された日本人をご存知でしょうか。


……そう、黒柳徹子さんです。




現在上演中の文楽公演、チャップリン原作の『まちの灯』の舞台裏で、僕たち出演者一同の心が震える出来事がありました。


なんと、その黒柳徹子さんから、劇場にとても美しいお花が届いたのです。







 ニューヨークで起きた、語り継がれる奇跡


かつて黒柳徹子さんは、ニューヨークにてチャップリンご本人とお会いになる機会があったそうです。


お着物姿で挨拶に訪れた黒柳徹子さんが「日本人の女優です」とお伝えになったその瞬間。


チャップリンは「JAPAN……」と呟き、目の周りも鼻の頭も真っ赤にして、涙を浮かべられたといいます。

「日本のみんなによろしく言ってね。愛していると伝えてね」


そう言葉を託されたというエピソード。

当時カメラマンの方々には撮影の許可が下りず、動画などは残っていない、まさに伝説のようなお話です。


チャップリンは日本が好きで、当時の使用人は日本人が揃っていたというエピソードは有名なお話。

ご本人は来日された際、文楽と歌舞伎の両方をご観劇されています。


どれほど日本の文化や、着物をはじめとする日本の美を深く愛していたかが伝わってきて、胸に強く残りました。











 時代を超えて楽屋に届いたお花


そして今、僕たちはまさにそのチャップリンの名作『街の灯』を原作に、日本の伝統芸能である文楽として舞台上で「まちの灯」として新作上演しています。





そんな中、楽屋に飾られた黒柳徹子さんからのお花を目にしたとき、一瞬、本当に息が止まりそうになりました。

言葉にならない感動と、身体の奥から湧き上がるような震えが止まりませんでした。


「チャップリンさん、あなたが愛した日本で、今度は伝統芸能の文楽になって、あなたの作品が生き続けていますよ」





黒柳徹子さんが届けてくださったお花は、まるで時空を超えて、チャップリン本人の想いを僕たちに届けてくれているかのような、温かく深いメッセージに思えてなりませんでした。






 歴史のバトンを受け取って舞台へ


チャップリンが愛した日本のお着物、そして日本の伝統。


それが今、太夫の語り、三味線の音、そして人形遣いの技によって『まちの灯』という物語になり、現代の劇場で息づいています。




偉大な歴史の繋がりと、黒柳徹子さんのあたたかなお心遣い。

その両方を全身で受け止め、楽屋で僕自身もチャップリンのように目と鼻の頭を真っ赤にしながら感動に浸っていました。


この感動と、受け取った大きなエネルギーをそのまま声に乗せて。 


一人で全役を語り分けるこの舞台に、今日も魂を込めて臨みたいと思います。




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時系列順外題尽くし








紀元前




天竺 ・九尾の狐が華陽夫人に化けて天竺を支配しようとするが失敗


 ・九尾の狐が妲己に化けて中国を支配しようとするがまたも失敗


 - 玉藻前曦袂





飛鳥時代
592〜710



 645年 ・大化の改新

蘇我入鹿が滅ぼされる





奈良時代
710〜794




 751年 ・良弁、東大寺の初代別当となる
    773年 ・良弁、僧正に任命される

 




平安時代
794〜1185(1180・1183・1190)




 781年→806年 ・桓武天皇(50代天皇)在位

桓武天皇が干ばつの折に初音の鼓を作らせ、雨乞いに用いる

- 義経千本桜
大序 仙洞御所の段 初音の鼓の謂れ



 901年 ・菅原道真太宰府へ左遷

- 菅原伝授手習鑑



 921年 ・安倍晴明誕生

- 蘆屋道満大内鑑



 986年〜1011年 ・一条天皇在位


三条宗近により、一条天皇の宝剣「小狐丸」が鍛えられる


 〜1025年 ・渡辺綱

- 増補大江山


 1062年7月 ・前九年の役

環の宮御殿の段(敷妙使者・矢の根・袖萩祭文)
源「八幡太郎」義家と安倍貞任・宗任兄弟との睨み合い


 1107年〜 ・鳥羽天皇在位

- 玉藻前曦袂
九尾の狐が玉藻前に化けるが、陰陽師安倍康成に見破られ、殺生石にされてしまう



 1160年1月19日 ・平治の乱

- 鬼一法眼三略巻
菊畑の段
牛若丸(源義経)、父義朝の死去にともない、鞍馬寺へ

五条橋の段
牛若丸と弁慶の出会い

 1178年

- 平家女護島
鬼界が島の段
俊寛僧都、食を断ち、自害


 1179年 ・平清盛により後白河法皇の院政が廃止される


 1180年 ・源平の戦い(治承・寿永の乱)開戦

安徳天皇(母は清盛の娘、徳子)の即位

後白河法皇の第三皇子の以仁王(もちひとおう)が源氏の協力を受けて平家・安徳天皇の失墜を企て、挙兵

 5月 以仁王、戦死

 8月 源頼朝、挙兵

戦乱が拡大

 1181年3月20日(治承5年閏2月4日) ・平清盛病死

 1183年 ・後白河法皇は後鳥羽天皇を即位させる

安徳天皇と二人の天皇が存在する状態となる

 ・加賀国、篠原の戦い

維盛軍と木曽義仲の戦
維盛軍の敗北

- 源平布引滝

斎藤実盛は手塚光盛に討ち取られる。
その際、老齢だったが若々しく戦う意思で白髪を黒く染めていた。



 1184年3月20日 ・一ノ谷の戦い



 1184年 ・木曽義仲討ち死

- ひらかな盛衰記


 1185年 
・屋島の戦い
・壇ノ浦の戦い
義経、平家に勝利

平家、滅亡。

- 壇ノ浦兜軍記
阿古屋琴責の段


- 出世景清
行方知れずになった藤原(悪七兵衛)景清。


- 娘景清八嶋日記







- 義経千本桜
 ・義経、頼朝の手により失脚。
 ・義経、九州で体勢を立て直す計画をたてるが、暴風のため難破。

 ・九州を諦め、吉野へと身を隠す。
 ・再び京都で身を潜める






 〜1186年ごろ ・郷御前、義経の子を宿す

- 御所桜堀川夜討
弁慶上使の段

 1187年 ・義経、奥州へ向かう。
- 勧進帳

 1189年6月5日 ・義経死去(享年31)








鎌倉時代
1185(1180・1183・1190)〜1333(1336)



 1203年 ・延暦寺堂衆追い討ち

- 近江源氏先陣館

- 鎌倉三代記
ただし作品背景、史実のモデルは江戸時代「大坂の陣」





室町時代
1336〜1573



 1557〜1564年 川中島の戦い

- 信州川中島合戦


   1564〜1575年あたり
- 本朝廿四孝
史実との年代の差異あり

 1582年 本能寺の変
     山崎の戦い
- 絵本太功記

 1586年 毛谷村六助の仇討ち

- 彦山権現誓助剣


江戸時代
1600〜1868



   1614〜1615年 大坂の陣

(鎌倉三代記)



 1633年 阿波藩蜂須賀家のお家騒動

- 傾城阿波の鳴門



 1634年 伊賀越の仇討ち

- 伊賀越道中双六



 1640年後半〜1660年代ころ 鄭成功の活躍

- 国性爺合戦



 1660年〜1671年 伊達騒動

-伽羅先代萩



 1683年 江戸で放火事件

伊達娘恋緋鹿子



 1703年 赤穂浪士討ち入り

仮名手本忠臣蔵

-増補忠臣蔵



   1703年 大阪露天神の森にて心中事件

- 曽根崎心中




 1709年頃(詳細不明)  大坂で飛脚屋が為替横領

冥途の飛脚

- 傾城恋飛脚



 1717年   大坂高麗橋で妻敵討ち

- 鑓の権三重帷子



   1720年 大坂大長寺で心中事件

心中天網島


 1721年 大坂で殺人事件

- 女殺油地獄




 1722年 大坂の生玉馬場先で夫婦が心中

心中宵庚申



 1723年   奥州白石で仇討ち事件


 1725年 近松門左衛門死去


   1748年〜1749年 加賀騒動

加賀見山旧錦絵



   1776年 京都桂川で心中事件

- 桂川連理柵



 1780年 慶安太平記

- 碁太平記白石噺











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こんにちは、咲寿太夫です。


今回は人形浄瑠璃文楽の舞台裏から、夏の時期ならではの特殊な演出についてお話しいたします。


夏の公演に足を運ばれたことがある方は、舞台が「真っ白」に染まる光景に驚かれた経験があるかもしれません。


そう、夏の公演は衣装の着付が黒から白へ変わるのです。










 なぜ夏だけ「白」を着るの?


普段、私たちは舞台で黒い着付の上から肩衣と袴を着用しています。


黒い着付というのはいわゆる正装で、他の色の着物と肩衣袴を合わせることは滅多にありません。




この7・8月に上演される夏の公演は毎年例外で、白い着付に肩衣袴を着用します。


私が着ている白着付の素材は麻です。


また、太夫・三味線は袴も麻を着用する方が多いですね。




真っ白の着物というと、本来は野辺の送りに見られるように(寺子屋の段のいろは送りなど)、葬儀に関するものなので、どうして白を着ているの?と思われる方もいらっしゃると思います。



実はこれ、視覚から「涼」を感じ取っていただくための先人たちの粋な計らいなんですね。



現代のように空調設備が整っていなかった時代、お客様に少しでも涼しい気持ちで芝居を楽しんでいただくため、白い着付を着用したと言われています。



現代ではそこから派生して、夏公演以外でも夏をテーマにした演目(夏祭浪花鑑など)を上演する際に白着付を着用することがあります。





現代の劇場は空調がしっかりと完備されておりますが、目から「涼」をとるという日本人の繊細な感覚は、今も夏の文楽の舞台に息づいています。



ぜひ今年の夏休み公演では、お芝居の物語はもちろん、私たち太夫や三味線弾きの「白い装い」にもご注目いただき、文楽ならではの夏の風情を感じていただければ幸いです。









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