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■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【外ヶ濱 活性吟醸濁り酒 FLOWER SNOW

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 西田酒造店(青森県,青森市,大字油川大浜)
特定名称ほか 吟醸酒 活性にごり
原料米 青森県産「華吹雪」(精米歩合 60%?)
酸度 非公開 アミノ酸度 非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY

「田酒」の蔵の【冬季番外品】

212日の日曜日,東京湾にかかる「東京ゲートブリッジ」が開通し、TVのニュースではブリッジの上から富士山や「東京スカイツリー」が見られることや、徒歩で橋を渡れることなどが紹介されていました。

そんな東京の新名所が誕生した日の夜に選んだ一本は、
【外ヶ濱 活性吟醸濁り酒 FLOWER SNOWです。

 これは、「田酒」で知られる青森の西田酒造店が、「和製シャンパン」をイメージして醸した吟醸タイプの「活性にごり酒」で、いわばこの蔵元の「番外品」とも言える超限定生産のお酒です。
 また、このお酒に付けられている「外ヶ濱」という名前は、西田酒造店の所在地である「青森市の油川大浜」を含めた陸奥湾沿岸地域の旧地名に由来しています。
 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  キャップの部分には、「吹き出し注意」ではなく「吹き出しご免」と書かれたシールが貼られていて、開栓時に吹き出すことが予告されていたので、念のため冷凍庫で40分間冷やしてから慎重に開栓したのですが、キャップを僅かに捻ったとたん瓶の底に積もっていた「滓」が凶暴に暴れ出し、その後キャップの開け閉めを何度も繰り返しながら15分ほどかけてようやく開栓したのですが、最終的には中身のお酒を1/6くらい吹きこぼしてしまいました。


香りは、「チューリップ」を想わせる花の香りや、「シュークリーム」のような洋菓子の香りがあり、「華やかで甘く、ミルキーな香り」が感じられます。

口当りはインパクトがあり、優しく癒されるような甘味とコクのある旨味がバランス良く口に広がり、そこに炭酸ガスの刺激を伴った爽やかな酸と、軽快な苦味が適度なアクセントを与えてゆきます。

後口の発泡感は思ったよりも弱かったのですが、味の余韻は比較的長く、「スッキリとした飲み口で、滓の甘味とお米の旨味が調和した程好くコクのある味わい」のお酒でした。

  このお酒は、冒頭でも述べたように「和製シャンパン」をイメージして醸されたお酒なので、ソムリエの世界において「シャンパーニュ」と相性が良いとされる料理を試してみることとしました。 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【シャウルス】です。
 「シャウルス」は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる白カビタイプのチーズで、同じ産地の「シャンパーニュ」と組み合わせるのが現地では定番となっていますが、今回はやや熟成が進んだ状態のものをチーズショップで購入してきました。

強めのミルキーな芳香で、皮に近いクリーム色の外側の部分は、室温で溶け出してくる程柔らかく塩分も強めなのですが、それに対して内側の真っ白な部分は、まだモソモソと固まっていて塩分も控えめで、ミルクの凝縮した味わいと共にほのかな酸味も感じられます。

「外ヶ濱」と合わせてみると、このお酒のミルキーなフレーバーとシャウルスの濃厚なミルクの味わいがドンピシャに同調し、そしてこのチーズのもう一つの特徴である軽い酸味が、「外ヶ濱」の優しい甘味をより上品な甘味へと変化させてゆきます。

口の中で、お酒とチーズの両方がどんどん美味しくなってゆくように感じられる、とても素敵な「マリアージュ」でした。

続いては【キャビアもどき(ランプフィッシュの卵)】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「キャビア(チョウザメの卵の塩漬け)」と「シャンパーニュ」の組み合せは、ソムリエの間では最高のマリアージュの一つとされていますが、さすがに本物のキャビアは高価過ぎて手が出せなかったので、今回は贋物の「キャビアもどき」で我慢することとしました。
 これは、「ランプフィッシュ」というグロテスクな容貌の魚の卵を、イカ墨etc.を使って黒く着色してキャビアに似せたもので、スプーンですくって食べてみると「まぐろの酒盗」並みの塩辛さがあります。

「外ヶ濱」と合わせてみると、このお酒のミルキーさを伴った優しい甘味が、「キャビアもどき」の塩辛さを程好くマイルドにしてくれるのですが、余韻に微かながら魚卵特有の血生臭いフレーバーが感じられます。

相性としては決して悪くはないのですが、やはり「贋物」は「本物」にはかなわないということなのか、やや物足りない印象が残ってしまう組み合せでした。

 ちなみに、蔵元のホームページをチェックしてみたのですが、このお酒のFLOWER SNOWという英語のサブネームについては、特に何も説明が載っていませんでした。

私の勝手な解釈なのですが、このお酒の原料米である青森県産「華吹雪」の、「華=FLOWER「吹雪=SNOWからイメージして名付けられているのではないでしょうか?

どなたか正解を知っている方がいたら教えて下さい。

【山間(やんま) 仕込み5号 無濾過生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区,横川)
特定名称ほか 特別純米 無濾過生原酒 中搾り直汲み
原料米 新潟県産「高嶺錦」(精米歩合 60%?)
酸度 非公開 アミノ酸度非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY
「エスプレッソ」日本酒!【山間】

2月に入ってからも「最強寒波」の勢いは全く衰えを見せず、3日の「節分の日」には沖縄を除く全国46都道府県の全てで気温が氷点下を記録し、各地で観測史上の最低気温を更新するという異常な寒さとなりました。

 そんな寒さの中、先週の「而今」に引き続き今週末も待ちに待っていた一本が届きました,それがコレ、

【山間(やんま) 仕込み5号 無濾過生原酒】です。

 これは、新潟第一酒造の熱き造り手「武田良則」杜氏が醸した、今期の仕込み5の「特別純米」スペックの無濾過生原酒で、モロミを搾る際に酒質が最も安定している「中搾り」の部分を選び、しかも柄杓で一本一本丁寧に瓶詰めした「直汲み」の限定酒です。

 香りのトーンは強めで、「天津甘栗」のような甘い焼き菓子の香りや、「加糖タイプの缶コーヒー」を想わせる甘い焙煎香があり、「ほのかに香ばしさを伴った甘い香り」が感じられます。

口当たりは強めで、艶やかな甘味と舌にジワリと浸み込むような旨味,そしてコクのある苦味や絶妙な渋味が口の中で次々と展開してゆきます。

後口はしっかりとしていて僅かな発泡感があり、余韻には個性的な甘苦味と心地良い渋味が長く続きます。

コクやボリューム感も充分にあり、「甘味と苦味と渋味が複雑かつ魅惑的に絡まり合った、【エスプレッソ日本酒】と表現したくなるような味わい」の「ヤバうま酒」でした。

 この魅惑的な甘苦味のお酒には、料理は何も必要ないと思われましたが、昨シーズンに「山間シリーズ」を呑んだ時の経験から、「濃厚な旨味」ということをキーワードにこんな料理を2品選んでみました。
 まず1品目は
【ボーフォール・アルパージュ】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「ボーフォール」は、アルプスの山々が連なるフランス東部のサヴォア地方「山のチーズ」で、その中でも標高1500m以上の高地で放牧された牛のミルクを原料とし、夏の間だけ山小屋(シャレ)で造られるものに限り、「アルパージュ」という名前が付けられていて、その希少性から通常のものより高値で取引されています。

「クルミ」を想わせる強めのナッティな芳香があり、まさに「旨味の固まり」といった感じの濃厚な旨味とミルクの甘味があり、その一方で塩味はハードタイプチーズとしては比較的控えめです。
 「山間」と合わせてみると、このお酒の素敵に甘苦くて渋い味わいと「ボーフォール」の凝縮感のある旨味とが、予想を遥かに上回る複雑かつ完璧なマリアージュを見せてくれます。

あっという間に一升瓶が空になってしまいそうなペースでお酒が進んでしまう、「危険なほど」相性の良い組合せでした。

 続いて2品目は
【アカモク(ギバサ)のとろろ】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ 「アカモク」は、「メカブ」や「昆布」etc.と同じホンダワラ科の海草で、ミネラルや食物繊維,ポリフェノールetc.を豊富に含むことから、近年は健康食品として注目が集まっていますが、私の故郷の秋田では「ギバサ」という名前で呼ばれていて、昔からご飯のおかずや味噌汁の具として日常的に食卓にのぼっていました。

今回は湯通ししてから細かく刻んだものに、少しだけ醤油をたらして食べてみましたが、「山芋のとろろ」のような粘りとシャキシャキとした歯応えがあり、独特の磯の香りが口の中にフワリと広がった後で、舌の上にしっかりとした旨味が長く残ります。

そのタイミングで「山間」を合わせてみると、このお酒の魅惑的な味わいが全く影響を受けることなくそのまま持続してゆき、そして余韻にのみ「アカモク」の旨味が戻ってきます。

やや「アカモク」の味が消されてしまっているような感もありますが、「山間」の個性的な味わいを邪魔しないという点からすると、相性的には○と言っても良いでしょう。

 ちなみに、今回は一升瓶サイズで購入したので、約1週間にわたってこの「山間 仕込み5号 無濾過生原酒」を愉しんだのですが、開栓してから3日以上日数が経って、後口の発泡感がある程度落ち着いた状態のものを、あまり冷やし過ぎずに1215℃位の温度で呑むのが、このお酒の個性である「甘苦くて渋い大人の味わい」を、最も引き出してくれる呑み方のように感じられました。

それにしてもこの「エスプレッソ日本酒」,本当にクセになってしまう危険な味わいですね…。

【而今 純米吟醸八反錦 無濾過生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…

蔵元 木屋正酒造(三重県,名張市,本町)

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒

原料米 広島県産「八反錦」(精米歩合 55%)

酸度 1.8 アミノ酸度 1.4 酵母 自社9号酵母

日本酒度 ±0 アルコール度 16.5

酒造年度 H23BY

パイナップル日本酒?!【而今】

1月の終わりの日本列島は、「最強の寒波」に襲われて日本海側を中心として各地で記録的な積雪となり、東京でも連日最低気温が氷点下となる厳しい寒さとなりました。

そんな真冬の寒さの中、愉しみに待っていた一本が届きました,そのお酒がコレ、

【而今 純米吟醸 八反錦 無濾過生原酒】です。

 これは三重の木屋正酒造から、今シーズンの「而今シリーズ」の第3としてリリースされた、広島県産の「八反錦」を使った純米吟醸の無濾過生原酒で、本来ならば「千本錦」の無濾過生原酒が先に出荷される予定だったところを、蔵元の大西杜氏の判断から急遽この「八反錦」に差し替えられて出荷されたものです。

 
香りのトーンは強めで、「沖縄産のピーチパイン」を想わせる南国の果実の香りや、「サルビアの蜜」のような花の蜜の香りがあり、「甘く華やかで、やや高貴な印象の果実香」が感じられます。

口に含むと、まずはトロピカルフルーツのような甘味にいきなりノックアウトされてしまいますが、その濃密な甘味を鮮やかな酸と絶妙な苦味が、口の中で嫌味の無いキレイな甘味へと変化させてゆきます。

後口にも芳醇な甘味がしっかりと感じられ、そして程好い酸と僅かな苦味の余韻を伴いながら最後はスーと引いてゆきます。

コクやボリューム感も適度にあり、「ジューシーな飲み口で、まるでパイナップル果汁入りの日本酒を飲んでいるような、素敵なスウィートな味わい」のお酒でした。

 
「フルーティーの極み」のようなお酒なので、料理が無くてもお酒単体でグビグビと呑めてしまいますが、昨シーズンにこの「而今 八反錦」を呑んだ時の経験から、こんな料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【天然石鯛のお造り】です。
 
「石鯛」は鯛の中でもやや高級魚として知られていて、一般的には夏場が旬とされていますが、冬場の石鯛も程好く脂が乗っていて「お刺身」で食べるのには向いています。
 
程好い歯応えがあって、噛み締めていると口の中でネットリと溶けてゆき、そして鯛独特の旨味が滲み出してきます。
 
そのタイミングで「而今 八反錦」と合わせてみると、このお酒のジューシーな甘味を石鯛のしっかりとした旨味がうまくコントロールし、「而今」の甘味も鯛の旨味もどちらも消されることなくちゃんと持続してゆきます。
 
昨シーズンに「而今 八反錦」を呑んだ時も、「かつおの刺身」と良いマッチングを見せてくれていたのですが、このお酒が「しっかりとした旨味のある魚介類の刺身」と相性が良いということを、今回も再び確認することができました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【フルム・ダンベール】です。
 
昨シーズンは、「而今 八反錦」と「ロックフォール」との相性を愉しんだのですが、今シーズンは同じフランス産のブルーチーズでありながら、ややタイプの異なる「フルム・ダンベール」を試してみました。
 
外観的には青カビがびっしりと入っていますが、食べてみると青カビの刺激はそれ程強くなく、「ロックフォール」に比べるとかなりマイルドですが、その一方で塩味だけはしっかりと感じられます。
 
合わせてみると、このチーズの持つ程好い青カビの刺激や強めの塩味と、「而今 八反錦」の個性であるやや濃密な甘味とが良い意味でお互いを打ち消し合い、そして余韻には両者の旨味だけが残ります。
 
さすがに「ロックフォール」と合わせた時ほどのインパクトはありませんでしたが、やはりこのお酒とブルーチーズとは全般的に相性が良いようです。

 
さて、今シーズンも期待通り「果実感全開!」といった印象で、お米の果実酒?!のような完成度の高い味わいの「而今」シリーズなのですが、その半面昨シーズンにも増して入手が困難な状況となっています。
 
これから春先にかけて「千本錦」と「山田錦」の無濾過生原酒が出荷され、そして秋口にはそれぞれのお米を使った「火入れ」タイプが順番に出荷されますが、今後も「秘密のルート?」を使って何とかしてゲットしながら、今シーズンもこの素敵なお酒を順次味わってゆきたいと思っております。

【鶴齢 純米酒雪男】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…

蔵元 青木酒造(新潟県,南魚沼市,塩沢)

特定名称ほか 純米酒 火入れ

原料米 「美山錦」(精米歩合 60%)

酸度 1.2 アミノ酸度 ? 酵母 ?

日本酒度 12 アルコール度 15-16

酒造年度 H22BY

山岳救助に貢献する【雪男の酒】

去年の12月から今年の119日にかけて、東京では何と35日間連続で「乾燥注意報」が出される「カラカラ天気」の日々が続いていましたが、20日の金曜日には一転して今年の東京の初雪となり、厳しい冷え込みの週末となりました。

 そんな寒い「雪の夜」に選んだ一本がコレ,その名も、

【鶴齢 純米酒 雪男】です。


これは新潟の青木酒造が、酒造好適米の「美山錦」を使って「日本酒度+12」の大辛口に仕上げた純米酒で、ラベルに描かれている「毛むくじゃらの異獣」の絵は、江戸時代の新潟の文人「鈴木牧之」の著書「北越雪譜」に登場する「山の精霊(=雪男?)」がモデルになっています。

  

香りのトーンは控えめで、「わらびの水煮」のような山菜類の香りや、「ローズマリーのハーブティー」を想わせる香草系の香りがあり、「穏やかかつ控えめで、やや爽やかさも感じさせる香り」といった印象です。

口当たりは軽快で、控えめでスッキリとした甘味と軽やかな酸,そして透明感のある旨味が、味わい全体に淡麗でドライな印象を与えています。

含み香は控えめで後口のキレがあり、舌の上には辛口の余韻が残ります。

コクやボリューム感も控えめで、「やや平坦に感じられるほど淡麗な飲み口で、キリリとした大辛口の味わい」のお酒でした。

合わせる料理は、このお酒の持つややフラットな印象から、「シンプル,薄味」ということを意識して選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目は
【小松菜のお浸し】です。

「小松菜」は冬が旬の野菜ですが、今回は地元の食品スーパーの「京野菜」売り場から、「丹後産の小松菜」を購入して「お浸し」にしてみました。

シャキシャキとした歯応えで、「ほうれん草」に比べるとアクが少なくて茎の部分には瑞々しさがあり、そのまま噛み締めているとほのかな甘味も感じられてきます。

「鶴齢 雪男」と合わせてみると、小松菜のお浸しのクセの無いシンプルな味わいに対して、この淡麗でスッキリとした味わいのお酒が、特に絡み合うことなくそのまま「スルー」してゆきます。

この関係を相性が良いと言うかどうかは微妙なところで、「雪男」の個性である大辛口の味わいの邪魔をしてはいないのですが、その反面やや面白みには欠けるように思われる組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は
【出し巻き玉子】です。
 
今回はデパ地下の和惣菜売り場で購入してきたのですが、フワフワの玉子焼きに薄口の出し汁の味が効いていて、程好い旨味が感じられる上品な味わいの「出し巻き玉子」です。

お酒と合わせてみると、「出し巻き玉子」のやや薄口の旨味が大辛口の「雪男」に絡むことによって、このお酒のドライでフラットな味わいがややコクのある味わいへと変化してゆきます。

こちらは、料理がお酒の味わいの幅を広げてくれているような印象で、なかなか相性の良い組合せでした。

 話は変わりますが、冒頭で述べた「北越雪譜」の本の中では、「雪男」は一般的に想像されているような「謎の怪物」としてではなく、山の中で旅人を助ける優しい「山の精霊」として描かれており、そんな「人助けをする雪男」のエピソードにちなんで、青木酒造ではこのお酒の売上金の一部を南魚沼郡の山岳救助活動に寄付しているそうです。

「雪男の酒」を呑むことで山岳救助に貢献できるなんて、雪国にある新潟県の蔵元ならではのなかなかユニークな取り組みですね。

【楯野川 純米大吟醸 暖流 燗あがり】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…

蔵元 楯の川酒造(山形県,酒田市,山楯)

特定名称ほか 純米大吟醸酒 火入れ

原料米 兵庫県産「山田錦」(精米歩合 50%)

酸度 2.1 アミノ酸度 ? 酵母 KT901号酵母

日本酒度 +3 アルコール度 15-16

酒造年度 H22BY

「燗あがり」のお手本【暖流】

1月第2週に入ってから日本列島に強い寒気が流れ込み、その影響で週の半ばの木曜日には各地でこの冬一番の冷え込みとなり、「日本一寒い街」として知られている北海道の陸別町では、最低気温が何とマイナス29.1を記録しました。

こんな寒い夜にはやはり「お燗酒」ということで、今宵選んだ一本は、 

【楯野川 純米大吟醸 暖流 燗あがり】です。

これは山形の楯の川酒造が、兵庫県産の「山田錦」を贅沢に半分まで磨き、「お燗酒で美味しい」ことを目指して醸した純米大吟醸酒で、NPO法人「スローフードジャパン」と「酒文化研究所」によって昨年行なわれた、「燗酒コンテスト2011において「金賞」を受賞しているお酒です。

 

香りのトーンはやや強く、「大福」のような餡の入ったお餅の香りや、「砂糖入りのホットミルク」を想わせる甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりと甘く、柔和で丸い香り」が感じられます。

まずは「冷や」で飲んでみましたが、輪郭のくっきりとした酸がやや舌に引っかかるような印象で、それを優しい甘味とふっくらとした旨味がある程度フォローしてくれますが、全体のバランスとしてはやはり酸の強さが目立ち過ぎるという印象を受けます。

そこで湯煎で温めて熱めの「上燗」にして飲んでみると、酸の強さは変わらないまま角が取れて丸くなり、その一方で甘味のボリュームと旨味の膨らみが増すことによって、味わい全体の一体感がぐっとアップします。

「お燗」にすることで味わいが変化する様子が非常によく判る、まるで「燗あがり」のお手本のようなお酒で、「充実感のある飲み口で、五臓六腑にしみわたるような味わい」の旨酒でした。

熱めの「お燗」にしたこのお酒は、様々な料理とオールマイティーに相性が良い思われたので、今回はあまり深く考えずにこんな料理と合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【わかさぎの南蛮漬け】です。

「わかさぎ」は今が漁期で、これは衣揚げにした「わかさぎ」を、玉ねぎ,人参,パプリカetc.の香味野菜と一緒に「南蛮酢」に漬け込んだものですが、だし汁によって穀物酢の刺激的な酸が和らげられていて、割とまろやかな味わいの「南蛮漬け」に仕上げられています。

お燗にした「楯野川 暖流」と合わせてみると、このお酒のふっくらとした味わいが料理を優しく包み込み、そして「南蛮酢」から苦味を引き出すこともありません。

また香味野菜の持つ甘味やだし汁の旨味ともうまく絡まり合い、「燗あがりする酒」は食中酒として万能であるということが、改めてよく判るような組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【蛸のやわらか煮】です。

これは、「生蛸の足」を醤油,砂糖,酒でじっくりと煮たもので、とても柔らかく炊かれた蛸に煮汁が良く浸み込んでいて、いかにも「酒のアテ」といった感じの甘辛味の惣菜です。

さっそくお酒と合わせてみると、お燗にして甘味と旨味の厚みが増した「暖流」と、「蛸のやわらか煮」の甘辛味が丁度良い濃さのレベルで融合し、そして余韻にはこのお酒のしっかりした酸が残ります。

こちらは、お酒と料理が「がっぷり四つ」に組んで口の中で力相撲をしているような印象で、お酒がグイグイと進んでしまう組合せでした。

さて、今回この「楯野川 暖流」の燗酒を呑んで思ったことは、いわゆる「燗あがりするお酒」の条件の一つとして、酒質設計の段階で通常より酸が強くなるように仕込む,ということが挙げられるということです。

その為、「冷や」で呑むと酸の強さが目立ってバランスが悪く感じられるのですが、「お燗」にすることによって甘味と旨味のレベルが増幅して酸の強さに追い付き、それによって全体の味のバランスが取れてまとまりが感じられると共にボリューム感もアップし、より「旨い!」と感じられるお酒に変化するのではないでしょうか。

まるで「お燗酒のサイエンス」のような話になってしまいましたが、皆さんはどう思われますか?

【房島屋 純米吟醸 無濾過生 五百万石】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…

蔵元 所酒造(岐阜県,揖斐郡,揖斐川町三輪)

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒 

原料米 福井県産「五百万石」(精米歩合 50%)

酸度 2.0 アミノ酸度 ? 酵母 ?

日本酒度 +5 アルコール度 17-18

酒造年度 H23BY

「寒ぶり」と愉しむ【冬の食中酒】

本年最初の3連休となった9日の「成人の日」も終わり、世の中全体がようやく正月気分から抜け出し通常の生活がスタートしました。

さて正月休み期間中に、WEBサイト上のSAKE SHOPの入荷情報をチェックしていて、呑んでみたくなって取り寄せたお酒がコレ、

【房島屋(ぼうじまや)純米吟醸 無濾過生 五百万石】です。

これは岐阜の所(ところ)酒造が、福井県産の酒造好適米「五百万石」50%まで磨いて醸した純米吟醸の無濾過生原酒で、仕込み水には軟水である地元の揖斐川の伏流水が使われています。

 

香りのトーンは中程度で、100%りんごジュース」を想わせるフレッシュな果汁の香りや、「熟したマスクメロン」のようなフルーツの香りがあり、「みずみずしさを伴った甘く華やかな香り」が感じられます。

口に含むと、まず最初に舌先に艶のある甘味を感じ、続いてシャープな酸と滑らかなお米の旨味が口に広がってゆきます。

中盤~後半にかけては心地よい苦味が現れて味わい全体にメリハリを与え、そして余韻は微炭酸の刺激と共にスッキリとキレてゆきます。

ボリューム感やボディもしっかりとあり、「ジューシーな甘味とキレイな酸,そして膨らみのある旨味を、絶妙な苦味が程好く引き締めている、四味のバランスが見事に計算された味わい」のお酒でした。



今回は、冬を代表する味覚の一つ「寒ブリ」と合わせて愉しんでみることにしました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【寒ブリのお刺身】からです。

「ブリ」は春から夏にかけて北海道まで北上し、そして秋口から南下を始めて冬場には能登半島沖に到達しますが、この時期に「冬の日本海で獲れる大型のブリ」のことを一般的に「寒ブリ」と呼んでいます。 

身が締まっていて歯ごたえがあり、程好く脂が乗っていて舌に浸み込むような旨味があって実に美味です。

「房島屋」と合わせてみると、まずは微炭酸の刺激とシャープな酸が寒ブリの脂を口の中でキレイに流し、そしてこのお酒の特徴である心地よい苦味が、寒ブリの旨味をさらに引き立ててくれます。

お酒と料理がお互いの相乗効果によって、両方ともより美味しくなってゆくように感じられる、そんな相性の良い組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【ぶり大根】です。

「ぶり大根」は冬の定番の和惣菜の一つで、飴色になる位までしっかりと煮付けたものもありますが、今回はそれ程濃くない味に仕上げたものを、デパ地下の惣菜売り場で購入してきました。

箸がスッと通る位に柔らかく炊かれた大根に、脂の乗った「寒ぶり」の旨味がしっかりと浸み込んでいて、味付け全体は少し甘めになっています。

合わせてみると、「房島屋」の芳醇な甘味が「ぶり大根」の甘味と重なり、そのまま味が甘くダレてしまいそうになりますが、それをこのお酒の程好い苦味と微炭酸の刺激が上手に食い止めてくれます。

こちらはこの「房島屋」が、「ぶり大根」に対して「食中酒としての本領」を、存分に発揮してくれているような印象の組合せでした。

NET SHOPの紹介文によると、この蔵の杜氏の所 優氏愛媛の梅錦酒造で酒造りの修行をし、2000年よりこの「房島屋」というブランドを立ち上げたということなのですが、今回この「房島屋純米吟醸 無濾過生」を呑んでみて、「甘味,酸,旨味,苦味のバランスが最良になるように、あらかじめ精密に計算されて造られているお酒である」,という印象を強く受けました。

今年はこの「房島屋」シリーズのお酒に、これから先もぜひ注目してゆきたいと思っています。

【NEXT5 EMOTION2011 純米吟醸生酒 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 福禄寿酒造(秋田県,南秋田郡,五城目町)

特定名称ほか 純米吟醸 生酒

原料米 秋田県産「秋田酒こまち」(精米歩合 55%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 16.0%

酒造年度 H23BY

新世代の感動のお酒【NEXT5】 
 今年のお正月は、いきなり元旦の昼過ぎに震度4の地震があってやや驚かされたものの、その後東京では「三が日」が全て晴れの日となり、まずは穏やかな新年のスタートとなりました。

 さて、本年最初の一本に相応しいお酒として選んだのは、

 【NEXT5 EMOTION2011 純米吟醸生酒です。

 これは、「一白水成」「新政」「白瀑」「ゆきの美人」「春霞」の各銘柄で知られる、秋田の五つの蔵元が合同で立ち上げたグループ「NEXT5」が、「新世代の日本酒」を目指して共同で醸した純米吟醸の生酒で、「一白水成」が「モロミ」,「新政」が「酒母」,「白瀑」が「仕込み水」(白神産地の天然湧水!),「ゆきの美人」が「麹」,そして「春霞」が「蒸し米」というように、それぞれの工程を分担して造られたお酒です

  

 香りのトーンは中程度で、「スナックパインのような甘い果実の香りや、「モンブラン」を想わせるような洋菓子の香りがあり、「ほんのりと甘く、飾らない上品な香り」が感じられます。

 口当りはスムースで、自然でジューシーな甘味とフレッシュ感のあるキレイな酸,そしてきめ細かな旨味が、とても滑らかに調和しています。

 後口はソフトで、余韻の僅かな苦味が心地良いアクセントとして感じられます。

 コクやボリューム感も程良くあり、「絹のように滑らかな飲み口で、芳醇かつフルーティーな味わい」の美酒でした。


 今回は、お正月のおつまみ用に買い込んでおいた「酒肴」2品と合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず【子持ち昆布です

  本来「子持ち昆布」とは、ニシンを産みつけた天然の昆布を塩漬けにしたものなのですが、実際にはカナダなどにおいて、産卵の為に押し寄せたニシンを生簀に追い込み、そこに昆布をたらして卵を産み付けさせるという方法のものが多いようです。

 味わってみると、分厚い「数の子」が口の中でプチプチと弾ける食感が心地良く、昆布の旨味とやや強めの塩気がお酒を誘います。

 早速「NEXT5」と合わせてみると、このお酒のジューシーな甘味が「子持ち昆布」の塩分を優しく包み込み、そして昆布の旨味だけを残してくれます。

 「数の子」の味と「NEXT5」の余韻の僅かな苦味も上手く同調し、お酒と料理がお互いに相手の美味しさを引き立て合うような印象の組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【鱒子の醤油漬けです。
  「筋子」鮭の卵を塩漬けにしたものですが、「鱒子」カラフト鱒の卵を塩漬けにしたもので、筋子と比べるとやや粒が小さいのが特徴です。

 これはその「鱒子」をさらに醤油ダレで味付けしたものなのですが、コレだけで食べているとかなり甘じょっぱくて、思わず炊き立ての白いご飯が欲しくなってしまいます。

  ご飯の代わりに「NEXT5」を合わせると、「鱒子」のしょっぱさが一瞬でまろやかになり、その一方でこのお酒の個性であるフルーティーな味わいも、消されること無くちゃんと持続してゆきます。

 こちらはいかにも「酒と肴」といった印象の、お酒がグイグイと進む組合せでした。

 ちなみに、このお酒には「EMOTION=感動」という名前が付けられていますが、これには「NEXT5」の五つの蔵元の各メンバーが、同じ夢を共有することによって造られた「感動のお酒」なのだ,という意味が込められているそうです。

 年の始めから、こんな「情熱を感じさせるお酒」を呑んでいると、今年もこれから沢山の素敵な日本酒にめぐり合えそうな気がしてきて、何だかとても幸せな気分になってしまいますね…。

【越の白鳥 本醸造生原酒 かめ口一番】
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…

蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区,横川)

特定名称ほか 本醸造 無濾過生原酒 直汲み

原料米 麹米「五百万石」(精米歩合 非公開)

       掛米「こしいぶき」(精米歩合 非公開)

酸度 1.6 アミノ酸度 ? 

日本酒度 +4 アルコール度 19.7%!

酒造年度 H23BY

「アル添」OK!の【かめ口酒】

「天皇誕生日」から始まった12月下旬の3連休の最終日は、冬型の気圧配置が強まった影響で日本列島には「クリスマス寒波」が到来し、北日本の日本海側と北陸地方を中心に、各地で大雪の降る荒れ模様の天候となりました。

そんなクリスマスの夜に選んだ一本は、

【越の白鳥 本醸造 無濾過生原酒 かめ口一番】です。

「越の白鳥」は、「山間(やんま)」で知られる新潟第一酒造が、地元向けに出しているもう一つのブランドで、この「かめ口一番」は今シーズンの「越の白鳥」シリーズの第一弾の新酒となります。

ちなみに「かめ口」というのは、モロミを搾る「ヤブタ」という装置から滴り落ちてきたお酒が最初に溜まる容器のことで、これはその「かめ口」に溜まったお酒をダイレクトに「ひしゃく」で汲んで、文字通り「手付かず」の状態で瓶詰めした本醸造の無濾過生原酒です。

香りは、「熟した巨峰」のような甘い果実の香りや、「ユーカリオイル」を想わせる香草系のエッセンシャルオイルの香りがあり、「甘くフルーティーで、ほのかに清涼感もある香り」が感じられます。

口に含むと、まずは熟した果実を思わせる濃密な甘味と、豊かで濃厚な旨味が力強く押し寄せてきます。

含み香は中程度で余韻は比較的長く、後口にもふっくらとした甘味と味乗りの良い旨味が感じられ、そして舌の上に微炭酸のピリピリとした刺激を残しながら、フィニッシュは辛口に切れ上がってゆきます。

ボリューム感は充分過ぎるほどあり、「微炭酸の刺激によるのど越しの良さ,リッチでフルボディな味わい,そして辛口にキレる後口,の三拍子が揃った、ヘビー級のパンチ力を持つ甘辛酒」でした。

今回は「このフルボディなお酒」に負けないような、こんな2品を選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【数の子の山海漬け】です。
 これは、「数の子」胡瓜大根と一緒にワサビ入りの酒粕に漬け込んだ珍味で、数の子のコリコリとした歯応えと共に酒粕の風味とほんのりとした甘味が口に広がり、そして後からワサビの辛さが効いてきて舌がヒリヒリとしてきます。

そのタイミングで「かめ口一番」を流し込んでみると、このお酒の芳醇な甘味で舌の上のヒリヒリ感が一気に和らぎ、その一方でワサビのピリ辛の刺激が、このお酒の重厚な味わいをややライトに変化させてゆくように感じられます。

「甘くて辛い」という個性を持つ者同士がぶつかり合うことによって、お互いの「角の部分」を丸くし合っているような印象の、なかなか面白い相性の組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【レスターシャー・レッド】です。
 これは、イギリスのレスターシャー州で造られる農家製の「トラディショナル・チェダー」で、一般的な工場製の「レッド・チェダーチーズ」に比べると、日本に輸入されている数量は僅かのようです。

鮮やかな「赤褐色」ナッティな香りがあり、濃厚な旨味とコク,そして程好い塩味とほのかな甘味のバランスが絶妙に取れていて、通常の「レッド・チェダー」よりも遥かに複雑な美味しさがあります。

「かめ口一番」と合わせてみると、このチーズの熟成による深みのある味わいが、このお酒の濃密な甘味やフルボディな味わいをしっかりと受け止めて優しく包み込み、そして余韻にはこのチーズの円熟した旨味だけが残ります。

やや「レスターシャー・レッド」の貫禄勝ちといった感もありますが、この「懐の深い味わい」のチーズは、おそらく日本酒だけではなく「赤ワイン」「黒ビール」,さらには「芋焼酎」etc.の、様々な種類のお酒と幅広く相性が良いものと思われます。


話は変わりますが、この蔵元では毎シーズンの新酒第一号として、「純米酒」ではなく敢えてこの「本醸造の無濾過生原酒」を出荷しています。

「本醸造酒」への「醸造アルコール添加」(いわゆる「アル添」)に関しては、賛否両論いろいろな意見があるとは思いますが、こんなにパンチ力があって旨い「アル添酒」を呑んでしまうと、「アルコール添加」というのも、日本酒の立派な醸造技術の一つなのだということを認めざるを得ませんね…。

【嘉美心 純米吟醸 無濾過生酒 冬の月】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   このお酒のデータは…

蔵元 嘉美心酒造(岡山県,浅口市,寄島町

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒

原料米 岡山県産「日本晴」(精米歩合 58%

酸度 1.5 アミノ酸度 ? 白桃酵母

日本酒度 -4 アルコール度 16-17%

酒造年度 H23BY

 満月バージョンの【冬の月】

12月の第3日曜日は、日本列島全体に強い寒気が流れ込んだ影響で、東京でも最低気温が2℃まで下がり、この冬で一番の冷え込みとなりました。

そんな寒さの中、師走の街へ出かけて買ってきたお酒がコレ、

 【嘉美心 純米吟醸 無濾過生酒 冬の月】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  これは岡山の嘉美心酒造が、岡山県産の一等米「日本晴」「岡山白桃酵母」を使って醸した純米吟醸の無濾過生原酒で、モロミを搾る際に圧力をかけない「無加圧搾り」によって、自然に滴り落ちてきたお酒だけを集めて瓶詰めしたものです。


 実はこのお酒は、通常は右のような「冬の夜空に輝く三日月」のラベルが貼られているのですが、蔵元の遊び心で120本に1本位の割合で、上のような「満月バージョン」が紛れ込んでいます。

 今回はデパ地下の日本酒売り場で、偶然この「満月ラベル」のものを見つけ、「当りくじ」を引き当てたような気分になって思わず購入してしまいました。


 香りのトーンは中程度で、「熟したパイナップル」のような果実の香りや、「りんごパイ」を想わせるフルーツ菓子の香りがあり、「ほんのりと甘く華やかで、上品な印象の吟醸香」が感じられます。

 口当りは強めで、艶のある甘味と程好い酸,そして膨らみのあるお米の旨味が、味わい全体にやや力強さを与えています。

 後口は割としっかりしていて、余韻には旨味と一体となった優しい甘味が、長くそして心地良く続きます。

 コクやボリューム感も十分で、「適度なボディで飲み応えがあり、癒されるような甘味が特徴の濃醇旨口タイプ」のお酒でした。

 このお酒の個性である甘味とボディを意識しながら、こんな「冬の味覚」2品と合わせてみました。 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   まず1品目は【生たらこの煮付け】です 

 これは、地元の食品スーパーで北海道産の真鱈の「生たらこ」が安く売っていたのを買ってきて、「冬の月」の特徴である癒し系の甘味との相性を考えて、味醂と砂糖の分量をやや多くして「煮付け」にしたものです。

 合わせてみると、予想していた通りお酒と料理の甘味のレベルがピッタリで、そして煮付ける時に加えた生姜の風味により、このお酒の「艶のある甘味」がより「洗練された甘味」へと変化してゆきます。

 心身共にリラックスさせてくれるような味わいの、「素敵な甘口同士」の組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ そして2品目は【あん肝ポン酢】です。

  ソムリエの世界では、甘口の白ワイン「ソーテルヌ」には「フォアグラ」を合わせるのが定番なのですが、今回は同じ「肝」つながりで「あん肝」と甘口の「冬の月」との相性を試してみました。 

 「すだちポン酢」をかけて「紅葉おろし」を少し添えて食べてみると、程よく脂が乗ったコクのある味わいで、「肝」独特のフレーバーが口に広がってゆきます。

 このタイミングで「冬の月」と合わせてみたのですが、このお酒の艶やかな甘味とボリューム感に包み込まれて、残念ながら「あん肝」の味わいと風味が消えてしまいました。

 「あん肝」を酒の肴として愉しむ時は、もう少し「ボディが軽めのタイプ」のお酒と合わせた方が良いようです。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  さて、たまたまWEBサイト上で発見して驚いたのですが、この蔵元と洋菓子店のコラボレーションによって、何とこの「嘉美心 純米吟醸 冬の月」を使った「酒ケーキ」が販売されています。
 アルコールが約3%含まれていて、NET SHOPのページ上では「【冬の月】の吟醸香と豊かな旨味を、しっとりと焼き上げたチョコレートケーキに封じ込めた贅沢な味わいです。」という風に紹介されていました。

 私は基本的に甘い物は苦手なのですが、この「冬の月 酒ケーキ」にはチョットだけ興味を惹かれてしまいますね…。


【奈良萬 純米生酒 おりがらみ】
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 夢心酒造(福島県,喜多方市,字北町)
特定名称ほか 純米 無濾過生原酒 おりがらみ
原料米 会津産「五百万石」(精米歩合 55%) 
酸度 1.6 アミノ酸度 ?
日本酒度 +3 アルコール度 17-18%
酒造年度 H23BY
大人のカルピス!【おりがらみ生】
 12月第2週の週末はお歳暮&ボーナス商戦の真っ只中となり、いつも出かけている新宿の繁華街やデパ地下も、通常の2倍近い人出でごった返していました。
 人ごみを避けて早々に帰宅し、今宵の一本としておもむろに選んだのが、
 【奈良萬 純米生酒 おりがらみ】です。
 これは
会津の「奈良萬」の蔵元が、まだ発酵が収まっていない状態の純米酒に、滓(オリ)をタップリと絡ませて瓶詰めした「おりがらみ」の無濾過生原酒で、しかもこの「白ラベル」のものは、通常の「紺ラベル」のものより滓の量を多く入れた「爆発バージョン」となっています。

 冷蔵庫でしっかりと冷やしてからほんの少しキャップをひねってみると、瓶の底の方に3cmほど積もっていた滓の塊が、 炭酸ガスの気泡と共にまるで「白い悪魔」のように暴れ始めます。
 慌ててキャップを締めて、そして再び僅かに開けるという作業を約3分間繰り返し、ようやく無事に開栓することができました。

 香りは、
「カルピス」を想わせる乳酸菌飲料の香りや、「すりおろしリンゴ」のような果実の香りがあり、「ミルキーかつ爽やかで、ほんのり甘くフルーティーな香り」が感じられます。
 口当りは強く、炊いたご飯を噛み締めているような甘味と爽やかな酸,そしてやや濃醇な旨味と心地良い苦味が、強い炭酸ガスの発泡と共に口一杯に広がります。
 含み香は中程度で余韻は比較的短く、後口にもシュワシュワとしたガス感が強く感じられます。
 炭酸ガスの強い刺激とフレッシュな酸,そしてフルーティーな甘味とコクのある旨味が一度に愉しめる、「まるで乳酸菌飲料にお米を溶かし込んで、それをソーダ割りにしたような味わい」の、「大人のカルピスソーダ?!」みたいなお酒でした。

 この「おりがらみ生」は、キンキンに冷やして
「食前酒」として飲むのが一番のように思われましたが、このお酒の持つ「爽やか&ミルキー」な印象をキーワードに、こんな料理との相性を試してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【ハタハタの飯鮨(いずし)】です。
 これは
内臓を抜いた「ハタハタ」を、ご飯,米麹,野菜,塩と一緒に漬け込んで乳酸発酵させたもので、秋田の冬の郷土料理の一つです。
 香りは思ったよりも穏やかで、ハタハタの身には程好い歯応えがあり、お米の甘味と乳酸のまろやかな酸,そして熟成したハタハタの旨味がバランス良く調和しています。
 「奈良萬」と合わせてみると、このお酒のほんのりと甘くミルキーな香味と「いずし」の米麹の風味がうまく同調し、そして「いずし」の甘酸っぱい味わいを、「おりがらみ生」のやや濃厚な旨味が優しく包み込んでゆきます。
 お酒と料理のフレーバーに共通項が多く感じられる、「似た者同士」という印象の組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【バノン・アラフォイユ】です。
 これはフランスの
プロヴァンス地方で、山羊乳から造られている伝統的なシェーブルタイプのチーズで、「オードヴィー」(果実蒸留酒)に浸した「栗の葉」を何枚も重ねてチーズを包み、さらにそれを「椰子の葉の紐」で結んでから熟成させています。
 ねっとりとした食感で、思っていた程には「栗の葉」のフレーバーは感じられませんが、シェーブル特有の爽やかな酸とミルクの甘みがあり、それに加えてシェーブルチーズとしては珍しく、ハッキリとした「苦味」が感じられます。
 「奈良萬おりがらみ」と合わせてみると、このお酒の個性の一つである余韻のほろ苦さと、バノンの渋味に近い苦味が重なり合い、しかも互いに相手の苦味を増幅させること無く逆にマスキングしてゆきます。
 これを相性が良いと言うかどうかは意見が分かれる所だと思いますが、口の中で不思議な味の変化が起こる非常にユニークな組合せでした。

 ちなみに、今回はこの「奈良萬おりがらみ」を呑みながらついつい寝込んでしまい、翌日になってから炭酸ガスが抜けた状態のものをもう一度飲んでみたのですが、意外なことにその状態でチェックした方が、このお酒の味わいの個性をより明確に捉えることが出来ました。
 もちろん飲み方としては邪道だとは思いますが、ガス感が強い「活性にごりタイプ」のお酒に関しては、マドラーetc.で攪拌して炭酸ガスを抜いてからチェックしてみるのも、より判りやすいテイスティング方法の一つかもしれませんね。