■日本酒と料理の相性を愉しむ…■ -4ページ目

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【賀茂金秀 しぼりたて純米生 うすにごり】 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…

蔵元 金光酒造(広島県,東広島市,黒瀬町)

特定名称ほか 純米 しぼりたて生原酒 うすにごり

原料米 広島県産「八反錦」(精米歩合 60%) 

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +1 アルコール度 16.5%

酒造年度 H23BY

韓国料理と合う?!【うすにごり生】  

 12月最初の日曜日,東京では前日まで降り続いていた雨が上がって寒さもやや緩み、比較的穏やかな師走の一日となりました。

 さてこの時期になると、各地の蔵元から続々と今シーズンの「新酒」が出荷されてきますが、そんな中から今宵選んだ一本がコレ、 
 【賀茂金秀 しぼりたて純米生 うすにごり】です。
 これは広島の金光酒造が、広島県産の酒造好適米「八反錦」を磨いて醸した数量限定の新酒で、しぼりたてのお酒に酒袋からにじみ出た「滓(オリ)」を少し絡めた、「うすにごり」タイプの純米生原酒です

 香りのトーンは中程度で、「アベリアのような白い花の香りや、「大根の皮」を想わせるような菜類の香りがあり、「ほんのりと甘く、フレッシュ感のある香り」が感じられます。

 口当りは強めで、芳醇な甘味と活き活きとした酸,そしてやや濃密な旨味が、互いに主張し合いながら荒々しく迫ってきます。

 後口はしっかりとしていて余韻も比較的長く、心地良い甘味と切れ味抜群の酸,そして舌に浸み込むような厚みのある旨味が感じられます。

 コクやボリューム感も十分で、「しぼりたての躍動感を感じさせる飲み口で、芳醇かつ旨味の乗った味わい」の新酒でした。


 今回は広島のお酒ということもあり、季節の味覚「牡蠣」を使った料理を2品選んで合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目
【牡蠣の山椒煮です

 これは、牡蠣を醤油ダレと実山椒で絡めるように甘辛く炊いた料理で、やや濃い目の味付けと山椒の風味,そして牡蠣特有の旨味がお酒を誘います。

 さっそく「賀茂金秀」と合わせてみると、このお酒と「牡蠣の山椒煮」の味の濃さのレベルが丁度良く釣り合い、そして実山椒の個性的なフレーバーに対しても、全く違和感なく寄り添ってゆきます。
 それぞれが、しっかりとした味わいを持つお酒と料理が出会うことによって、互いに相手の味の強めの要素をまろやかにし合っているような印象で、なかなか相性の良いお酒が進む組合せでした。


 続いて2品目は【牡蠣のコチュジャンマヨネーズ焼きです。  ■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  
 こちらは、牡蠣に「コチュジャン」「マヨネーズ」を合わせたソースをかけてオーブン焼きにした料理で、コクのある濃厚なソースが牡蠣と良くマッチし、ちょっとクセになりそうな味わいです。

 正直言って、この料理に「賀茂金秀」を合わせるのはやや冒険だったのですが、「コチュジャン」の甘辛い味と「マヨネーズ」の酸味のどちらに対しても、このお酒が驚く程すんなりとなじみ、そしてお酒と料理がそれぞれ相手の個性を消さずに口の中で付かず離れず絡まり合ってゆきます。

  「マヨネーズ」と日本酒の相性が良いことは以前から知っていたのですが、韓国調味料の「コチュジャン」とこのタイプの日本酒の相性が良いというのは、今回初めて判った非常に興味深い体験でした。


 ちなみに韓国料理と相性の良いお酒と言えば、真っ先に「マッコリ」が挙げられると思いますが、原料や造り方に様々な違いがあるとは言え、どちらもお米を使ったアルコール発酵飲料であるということを考えると、「生マッコリ」「にごり生タイプの日本酒」には、幾つか香りや味わいの共通点があるようにも思われます。

 どうやら、各種のコリアンフード「にごり生酒」の組合せを、今後色々と試してみる必要がありそうですね。

【陸奥八仙 特別純米 無濾過生 ふなざけ

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 八戸酒造(青森県,八戸市,大字湊町)

特定名称ほか 特別純米 無濾過生原酒 槽口酒

原料米 青森県産「まっしぐら」(精米歩合 60%) 

酸度 1.8 アミノ酸度 ?

日本酒度 +2 アルコール度 18.0%

酒造年度 H23Y

すっぴん美人のお酒【ふなざけ】
 今年は11月26日土曜日が、暦の上で「三の酉」(11月の3回目の「酉の日」)となり、新宿の花園神社でも例年通り「酉の市」の祭礼が行なわれていて、境内は縁起物の「熊手」を買い求める人達で賑わっていました。
 そんな11月最後の週末の夜に選んだのは、
 【陸奥八仙 特別純米 無濾過生原酒 ふなざけ】です。
 これは青森の八戸酒造が、青森県産の酒造好適米「まっしぐら」を使って醸した、今シーズンの「陸奥八仙シリーズ」第一弾の新酒で、モロミを槽(ふね)という搾り機で搾る際に、槽口(ふなくち)から出てくる搾りたてのお酒に一切手を加えずに瓶詰めした、いわば「すっぴん美人」の無濾過生原酒です

 外観はうっすらと霞がかっていて香りはやや強く、「洋梨のコンポートを想わせるフルーツデザートの香りや、「サイダー」のような甘味炭酸飲料の香りがあり、「フルーティーで、清涼感を伴ったスウィーティーな香り」が感じられます。

 口当りはインパクトがあり、果実味のある甘味とフレッシュ感のある酸,そして芳醇な旨味と程好い苦味とが、口の中でやや暴れ気味になりながらパワフルに押し寄せてきます。

 後口はしっかりとしていて心地良い甘味と旨味が感じられ、そして余韻はキレの良い酸と心憎いほろ苦さを伴いながら、スーっと引いてゆきます

 ボリューム感やボディの厚みも十分で、「ジューシーかつダイナミックな飲み口で、搾りたてそのものといったシズル感溢れる味わい」の新酒でした。


 この「ピッチピチ」の新酒は、料理無しでもお酒単体でグイグイと呑めてしまいますが、ジューシーな甘味とのバランスを考えて、塩気の強い醗酵食品を「和」と「洋」からそれぞれ1品ずつ選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず「和」から
【いいだこの塩辛です

 弾力のあるコリコリとした食感で、通常の「いかの塩辛」とは異なって、「豆板醤」を加えて仕上げられている為、これだけで食べ続けていると口の中が塩辛さと辛さの両方でかなりヒリヒリとしてきます。

 そこに「ふなざけ」を流し込むと、塩辛さと豆板醤の刺激が一気にまろやかな味へと変化し、その一方でこのお酒の芳醇な甘味がよりいっそう膨らんできます。

 「たこの塩辛」自体の味わいはやや消えてしまいますが、「酒の肴」が「お酒」の引き立て役に回ってくれているような、そんな印象を受ける組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  そして「洋」からはロックフォール】です。
 「ロックフォール」は、言わずと知れたフランスを代表する羊乳製の「ブルーチーズ」ですが、舌がピリピリする程の青カビの刺激と強い塩味の奥から、圧倒的なコクのある旨味とほのかな甘味が現れて、そして最後はバターを想わせる滑らかな舌ざわりで溶けてゆきます。

 期待した通りの美味しさで、思わずお酒を呑むのを忘れてしまいそうになりますが、気を取り直して「ふなざけ」と合わせてみると、「ロックフォール」の個性である青カビの風味と強い塩味,そして濃厚な旨味と、このお酒の持ち味であるジューシーな甘味とピチピチした酸とが、口の中で見事なハーモニーを奏でてくれます。

 お酒とチーズとが一体に溶け合ってゆくような印象で、思わず「う~ん」と唸ってしまう程の完璧なマリアージュでした。


 ちなみに、今回の「陸奥八仙 特別純米 無濾過生」のような「ふなくち酒」は、「クール宅急便」という便利なものが存在しなかった昔の時代には、冬場の蔵元に直接出向かないと呑むことが出来なかったお酒です。

 それを暖房の効いた自宅で寛ぎながら呑めるなんて、「酒呑み」にとっては恵まれた時代になったものだ,などと思いながらグビグビと呑んでいるうちに、気が付いたら四合瓶が一本空になっていました…。

鍋島 純米酒 愛山 熊本酵母 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 富久千代酒造(佐賀県,鹿島市,浜町)

特定名称ほか 純米酒 火入れ

原料米 兵庫県産「愛山」(精米歩合 65%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 +3 アルコール度 15-16%

酒造年度 H22BY

「世界が認めた蔵」の【SAKE】 
 11月の第3土曜日,東京はあいにくの雨模様となりましたが、翌日の日曜は晴れて日中の気温が22℃まで上がり、これで2週連続で、平日は冷え込んで週末は暖かくなるという妙なパターンの天気が続いています
 そんな天候不順な晩秋の夜に選んだ1本は、
 【鍋島 純米酒 愛山 熊本酵母】です。
 これは佐賀の富久千代酒造が、近年プレミアム酒米として注目されている兵庫県産の「愛山」を65%まで磨き、「熊本酵母」を使って醸した純米酒で、この蔵元から出荷されるH22酒造年度の最後のお酒となります。 

 香りのトーンはやや強く、「苺のショートケーキを想わせる洋菓子の香りや、「バター飴」のような甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりと甘く、穏やかで落ち着きのある香り」が感じられます。

 口当りは強めで、やや艶のある甘味と明快かつ豊かな酸,そして凝縮感のある旨味が、それぞれお互いに主張し合いつつも、それでいてちゃんと調和が取れています

 余韻は長めで、後口には甘味,酸,旨味の三味がバランス良く感じられ「ボリューム感のある充実した飲み口で、しっかりとした呑み応えのある味わい」のお酒でした。


 このお酒の味わいから、「食中酒」として幅広く様々な料理と相性が良いと思われましたが、今回は京風の惣菜2品と合わせてみました。

 まず1品目【海老芋の含め煮です■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 「海老芋」は伝統的な京野菜の一つで、土を寄せて片方のみ太らせることによって「海老の形」になるように造られます。

 京料理では、海老芋と干した「棒だら」を一緒に煮含めた「いもぼう」が有名ですが、今回は海老芋だけを薄口の出し汁で含め煮にしたものを選んでみました

 柔かくややネットリとした粘りのある食感で、濃厚な旨味と上品な甘味が芋の芯までしっかりと浸み込んでいます。

 「鍋島」と合わせてみると、まるであらかじめ申し合わせていたかのように、お酒と料理のそれぞれの甘味と旨味が、口の中で一つの味わいへと溶け合ってゆきます。

 「甘味」と「旨味」とは、ある意味では紙一重の味覚なのだということを改めて感じさせてくれるような、しみじみとした美味しさが愉しめる組合せでした。


 ■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  そして2品目は【甘鯛のかぶら蒸しです。 
 これは、京野菜の「聖護院かぶら」をすりおろして「卵白」と混ぜ、「ぐじ(甘鯛)」の上に乗せて蒸し上げてから、仕上げに「べっこう餡」をかけたもので、晩秋~冬にかけての代表的な京料理です。

 お酒と合わせてみると、蒸し上げた「かぶら」の穏やかな甘味と「べっこう餡」のやや濃い甘味,さらには「甘鯛」の上品な甘味と「鍋島」の艶やかな甘味,という4つの種類の甘味が驚く程すんなりと融合し、そこにワサビが絶妙なアクセントを添えてくれています。

 お酒と料理の両方が、お互いに相手をより美味しくし合ってくれているような印象で、とても相性の良い組合せでした。

 

 話は変わりますが、毎年ロンドンで行なわれている世界最大規模のワイン品評会である、IWC(インターナショナルワインチャレンジ)の2011年の「SAKE部門」において、この蔵元が出品した「鍋島 大吟醸酒」「最優秀賞」を受賞しており、そのニュースが伝わってからは、NET上で「鍋島」ブランドのお酒が品薄状態となってしまっています。
 「世界が認めた味わい」と言える「鍋島」のお酒は、次のH23酒造年度シーズンにおいても、引き続き注目されることが間違いなしですね。

【笑四季 純米吟醸 リバティン

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 笑四季酒造(滋賀県,甲賀市,水口町)

特定名称ほか 純米吟醸 火入れ

原料米 滋賀県産「吟吹雪」(精米歩合 50%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

「道楽者」の酒?【リバティン】  
 11月第2週に入って、平日はようやくこの季節らしい冷え込みとなりましたが、週末は再び気温が20℃を超える暖かい日へと逆戻りし、日々の気温の変化に体を合わせるのが大変な一週間となりました。
 さて、先日いつものようにWEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて、チョット興味を惹かれたお酒がコレ、
 【笑四季 純米吟醸 リバティン】です。

 これは、個性的なお酒を次々とリリースしている滋賀の笑四季(えみしき)酒造が、滋賀県産「吟吹雪」を50%まで磨いて醸した、「リバティン=道楽者」という変わった名前の純米吟醸酒で、「蝶」をデザインしたとてもお洒落なラベルが貼られています。

 香りのトーンはやや控えめで、熟したバナナ」のような甘い果実の香りに、「ユーカリオイル」を想わせる香草系のアロマオイルの香りが組合わさって、「ほんのりと甘く、そしてクールな印象も受ける香り」が感じられます。

 口当りはややインパクトがあり、まずは自然な甘味と力強く主張する酸,そして膨らみのある旨味が口に広がり、後半からは苦味と共に僅かな渋味が感じられて、余韻はキレイに切れてゆきます。 

 香りの「甘い」印象とは裏腹に味わいはやや流麗辛口で、「洗練された飲み口ながら、明快な酸と余韻の苦味が全体にしっかりとした骨格を与えている、繊細さと力強さが融合した味わい」のお酒でした。

 実は当初和惣菜を幾つか合わせてみたのですが、このお酒の特徴でもある余韻の苦味&渋味がそれらの料理との相性をやや難しくしてしまった為、思い切って「濃厚な旨味 」を持つ食材と合わせてみることにしました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず【本からすみからです
 「からすみ」
は、「ぼらの卵巣」を塩漬けにしてから天日で干し上げた高級酒肴で、形が「唐の墨」に似ていることから、「からすみ」と名付けられたとされています。

 3mm位の幅に薄くスライスして食べてみると、ややねっとりとしたした食感で、コクのある旨味と魚卵独特の風味がお酒を誘います。

 「リバティン」と合わせてみると、このお酒のしっかりとした酸や余韻の苦味を、「からすみ」の濃厚な旨味が優しく包み込んでまろやかにし、口の中で両者が絶妙な調和を見せてくれます。

料理とお酒が互いに相手の個性を尊重しつつ、共同作業で一つの味の世界を作り上げているような印象で、お酒がグイグイと進んでしまう組合せでした。



■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ 続いては【グラナ・パダーノです。
 これは、イタリア北部で牛乳を原料として造られているハードタイプのチーズで、有名な「パルミジャーノ・レッジャーノ」に比べると熟成期間が短く、「塩分濃度」がやや低いのが特徴です。

 香りはミルキーでややボロボロと崩れるような食感があり、程好い塩味の後で濃厚な旨味が口の中一杯に広がってゆきます。

 そのタイミングですかさずお酒と合わせてみると、「グラナ・パダーノ」のミルクを凝縮したような旨味の固まりと、「リバティン」の骨格のしっかりとした味わいとが、一度ガップリ四つに組んだ後でお互いを上手くいなし合い、そして余韻には心地良い旨味だけが残ります。

 このチーズのような濃厚な旨味を持った食材は、日本酒の持つ苦味や渋味に対して「マスキング効果」があるのだということを、改めて認識させてくれた組合せでした。


 話は全く変りますが、これまで「トンボ」「セミ」のラベルは見たことがあったのですが、「蝶」のラベルは今回が初めてだったので興味本位で調べてみたところ、このお酒のラベルに使われているのはパプア・ニューギニア地方に分布している蝶で、日本名では「オオルリアゲハ」というそうです。

 「リバティン=道楽者」という変わったネーミングのお酒に、なぜこのミステリアスな雰囲気の蝶の絵のラベルを使ったのか、その理由を蔵元に直接聞いてみたくなるのは私だけでしょうか…。

【澤屋まつもと うるとら純米大吟醸

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 松本酒造(京都市,伏見区,横大路三栖大黒町)

特定名称ほか 純米大吟醸酒 火入れ

原料米 兵庫県産特等「山田錦」(精米歩合 40%) 

酸度 1.3 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +3 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

「超」大吟醸の【ウルトラの酒】
 11月になったというのに、東京では日中の気温が未だに連日21℃を超えており、とても「霜月」とは呼べないような暖かい日々が続いています。

 そんな例年とは異なる趣の「晩秋の宵」に選んだ一本は、

 【澤屋まつもと うるとら大吟醸】です。
 これは京都伏見の松本酒造が、兵庫県産の特等クラスの「山田錦」40%まで磨き上げ、年に一度の限定醸造で出荷した純米大吟醸酒で、この蔵の通常の「純米大吟醸酒」よりさらにワンランク上のお酒であるという意味から、「ウルトラ(うるとら)」という冠言葉が付けられています。


 香りのトーンは中程度で、「王林(黄色りんご)を想わせる果実の香りや、「ミントのフリスク」のような清涼タブレット菓子の香りがあり、「はんなりと華やかで、爽やかさも感じさせる香り」といった印象です。

 口当りはソフトで、嫌味の無い甘味とシャープな酸,そして穏やかな旨味が、口の中で上品かつキレイに調和してゆきます。

 後口のキレは良く、自然な甘味と軽快な酸が、余韻の微かな苦味を伴いながらフェードアウトしてゆきます。

 コクやボリューム感は程良くあり、「滑らかかつスムースな飲み口で、品の良さを感じさせるエレガントな味わい」のお酒でした。


 この「ウルトラなお酒」は、料理が無くてもお酒単体でスイスイと呑めてしまいますが、今回は蟹料理2品と合わせてみました。

 まず1品目は【茹でタラバ蟹です■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
これは、「蟹の王様」と呼ばれているオホーツク海産のタラバ蟹を、鮮度が落ちない内にボイルして冷凍保存したもので、まずは何もつけずに頬張ってみると、蟹の甘味が口いっぱいに広がります。

 甘味の余韻が消えない内に「澤屋うるとら」と合わせてみると、このお酒の上品でキレイな味わいが、出しゃばること無く蟹の美味しさをより一層引き立ててくれます。

 続いて、蟹に「土佐酢」をつけて「澤屋うるとら」と合わせてみましたが、こちらはお酒から微かな苦味が引き出されてしまい、それがやや気になってしまいました。

 茹でた蟹料理に、「上品な味わいのタイプの純米大吟醸酒」を合わせる時は、どうやら「蟹酢」は不必要なようです。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  2品目は【紅ズワイ蟹の蟹味噌です。

「紅ズワイ蟹」は水深450~2500mの深海に棲む蟹で、一般的なズワイガニと較べると、生きている時から鮮やかな赤褐色をしていて、甲羅の形が高く盛り上がっているのが特徴です。

 今回は蟹の身ではなく「蟹味噌」だけを購入して来ましたが、非常に濃厚な味わいで、蟹独特のフレーバーがしっかりと感じられます。

 「澤屋うるとら」と合わせてみると、蟹味噌の濃密さを程好くマイルドに変化させてくれるのですが、その一方でこのお酒の折角のエレガントな味わいが、蟹味噌の味の強さに押されてやや消えてしまいます。

 相性としては決して悪くはないのですが、蟹味噌に日本酒を合わせる時は、もう少し「濃醇旨口タイプ」のものを合わせた方がベターなようです。


 さて冒頭でも述べたようにこの「澤屋 うるとら純米大吟醸」は、値段が高価な兵庫県産の特等級の「山田錦」を、贅沢に40%まで磨き上げて醸しています。

 蔵元の話によると、精米機で更に磨いて精米歩合を35%以上にすることも可能なのですが、そうすると「砕けた米」が混ざる確率が高くなってしまい、このような「ウルトラな酒質のお酒」が醸されない為、この蔵元では敢えて精米歩合を40%に留めているのだそうです。

 なるほど、お米は必ずしも「磨けば磨くほど良い」というわけではないのですね。

【天吹 辛口いちご酵母 MONSTER 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 天吹酒造(佐賀県,三養基郡,みやき町)

特定名称ほか 純米吟醸酒 いちご花酵母

原料米 秋田県産「酒こまち」(精米歩合 55%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 ?

日本酒度 +6 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

「いちご酵母」の【怪物くん?!】
  10月も下旬に入り、日中はまだまだ暖かい日が続いているものの、朝晩はだいぶ冷え込むようになってきました。

 そんな秋の夜長に、WEBサイト上のSAKE SHOPのラインナップをチェックしていて、興味を惹かれて取り寄せたお酒がコレ、

  【天吹 辛口いちご酵母 MONSTER】です。

  この蔵元には、従来より「天吹 純米吟醸 いちご酵母」という、「いちごの花酵母」で醸した純米吟醸酒があったのですが、これはいわばその「裏バージョン」として辛口スペックで醸されたお酒で、「MONSTER」というちょっと風変わりなネーミングが付けられています。


 香りのトーンは中程度で、「蜜入りのふじリンゴのような果実の香りや、「サヴァラン」を想わせるようなお酒を使った焼き菓子の香りがあり、「ほんのりと華やかで、フルーティーな香り」が感じられます。

 口当りは軽快で、控えめでスッキリとした甘味とシャープでキレの良い酸,そしてキレイで滑らかな旨味が口に広がってゆきます。

 後口は割としっかりしていて、ピリピリ感のある酸と共にスーっと切れてゆき、余韻に感じられる僅かな「渋味」が、味わい全体にややドライな印象を与えています。
 コクやボリューム感は控えめで、「キリリとした軽快な飲み口で、やや淡麗でドライ感のある味わいの辛口酒」でした。

 

 今回は「モンスター」という横文字の名前にちなんで、「洋風のオードブル」2品用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目【サバのマリネです

 これは、サバと野菜を「アンチョビ」「生姜」入りの「マリナード」に漬け込んだもので、アクセントとして「ピンクペッパー」が添えられています。

 「MONSTER」と合わせてみると、マリネにしたサバやアンチョビ,そして生姜といったそれぞれのフレーバーに対しては、特に違和感は無いのですが、お酒と料理が口の中で一体になるという感覚が何故か今一つ感じられません。

 このお酒の特徴であるドライな味わいと、マリナードに使われている「白ワインヴィネガー」とが、やや馴染んでいないことが理由のような気もしましたが、相性的には「可も無し不可も無し」といった印象の組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は
【ラタトゥイユ】  です

 これは、茄子,ズッキーニ,セロリ,パプリカ,オニオンetc.の香味野菜を、オリーブオイルで炒めてからトマトを加えて煮込んだ、南仏プロヴァンス地方の野菜料理なのですが、それぞれの野菜が持つ自然な甘味と「バルサミコ酢」の熟成感を伴なった酸味,そしてオリーブオイルの風味がなかなか良くマッチしています。

 お酒と合わせてみると、こちらも1品目の「サバのマリネ」と同様に、「MONSTER」のドライ感とラタトゥイユの野菜の甘味とが口の中で今ひとつ絡み合わず、両方の味わいの個性がそのまま平行して進むような印象を受けてしまいました。

この料理に対しては、もう少し「優しい甘味を持つタイプ」の日本酒を合わせた方が良いのかもしれません。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  話は変わりますが、2010年の「紅白歌合戦」で、アイドルグループ「嵐」のリーダーの大野君が、天吹酒造で「いちご酵母」のお酒を仕込んでいるシーンが放送されたのですが、その後ファンからの問合せが殺到して、その年に仕込んだ「天吹 純米吟醸 いちご酵母」は、あっという間に売り切れてしまったそうです。

 そこで天吹酒造ではこの「裏バージョン」のいちご酵母のお酒に、大野君主演の映画「怪物くん」にちなんでMONSTERという名前を付け、そしてラベルのデザインについても、「怪物くんの洋服」と同じ色にしたのだそうです。

 こんな「遊び心」溢れるお酒も、たまには「有り」なのかもしれませんね…。

飛良泉 完全無添加 山廃純米

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 飛良泉本舗(秋田県,にかほ市,平沢字中町)

特定名称ほか 山廃仕込み純米酒 完全無添加

原料米 大潟村みすず農場産「美山錦」(精米歩合 55%) 

酸度 1.7 アミノ酸度 1.4

日本酒度 +4 アルコール度 15-16%

酒造年度 H22BY

完全無添加の【ピュアな酒】
 10月第3週の日曜日,東京では何と最高気温が29.7℃まで上昇し、まるで夏が戻ってきたような暑さとなり、既にタンスにしまい込んでいた夏物の半袖シャツを、もう一度引っ張り出して着ることとなってしまいました。
 さて、そんな季節ハズレの暑さの週末の夜に選んだ一本は、
 【飛良泉 完全無添加 山廃純米です。
 これは秋田の飛良泉の蔵元が、大潟村みすず農場産完全無農薬栽培の「美山錦」(「山田錦」よりも値段が高い!)と蔵付きの「9号酵母」,そして鳥海山系の伏流水を使って山廃造りで醸した純米酒で、米,水,種麹,酵母以外の添加物を一切使わずに仕込んだ「完全無添加」と言えるお酒です。


 香りのトーンはごく控えめで、「シクラメンを想わせるほのかな花の香りや、「すりおろした蕪」のような菜類の香りがあり、「微かに甘く、穏やかで控えめな香り」が感じられます。

 口当りは柔らかく、山廃仕込みならではのキレのある酸を、大人しく穏やかな甘味としなやかな旨味がフォローすることによって、味わい全体にややクリアーな印象を与えています。

 後口は割としっかりとしていて酸のキレが感じられ、「透明感のある飲み口で、キレイな印象の酸と程好いコクが特徴の、バランスが取れた味わい」のお酒でした。


 このお酒の持つややクリアーなイメージを損なわないように、今回は素材そのものをシンプルに味わう料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目
【生湯葉のお刺身】です
 今回選んだのは、生湯葉を重ねて巻いて余分な水分を抜いたややしっかりしたタイプのもので、まずはそのままで食べてみると、大豆の旨味が豆乳の香りと共に口に広がってゆきます。

 続いて、お刺身風にわさび醤油を付けて「飛良泉」と合わせてみましたが、意外にもこのお酒の山廃由来のしっかりとした酸が生湯葉に対して上手になってしまって、生湯葉の味の個性である「甘味を伴なった旨味」を消し去ってしまいました

 いかにキレイな印象の酸とは言っても、「山廃純米酒の酸」「生湯葉の繊細な味わい」を組み合せるのは、残念ながら相性的にはやや無理があったようです。

 気を取り直して2品目は【金目鯛の湯引きです。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
これは金目鯛の皮目に軽く塩を振ってから熱湯をかけ、皮が縮んだところで直ぐに氷水に漬けて冷やしたもので、まずは美しい朱色の色合いが目を愉しませてくれます

 味わってみると、「湯引き」にしたことで金目鯛の皮と身の間にある旨味がより一層引き出されていて、噛み締めていると濃厚な旨味が滲み出してきて実に美味です。

 そのタイミングですかさず「飛良泉」と合わせてみると、「山廃純米酒の酸」「金目鯛の凝縮された旨味」がガップリ四つに組み合った後で互いに融合し、口の中に別の美味しさが生まれてきます。

 こちらは申し分なくと言えるような、とても相性の良い組み合わせでした。

 さて冒頭でも述べたように、このお酒は「完全無添加」と呼べるピュアなお酒なのですが、たとえ原料となるお米が完全無農薬栽培であったとしても、日本酒造りの工程ではそれぞれの蔵元の考え方によって、「乳酸」「醸造アルコール」「活性炭」「滓下げ剤」etc.の物が添加されることが多く、このように完全無添加と堂々とラベルに明記できるお酒はほとんど無いというのが実際の所です。

 また、日本人は「添加」という言葉に対してどうもネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、個人的にはそれが無害なものであるならば、日本酒の醸造過程で何かが添加されていようが無かろうが、「出来上がったお酒が旨ければそれでいいじゃん!」という風に今のところは思っております…。

【仙禽 ひやおろし 赤とんぼ 愛山 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 せんきん(栃木県,さくら市,馬場)

特定名称ほか 純米吟醸 ひやおろし

原料米 「愛山」(精米歩合 55%) 

酸度 2.0~3.0 アミノ酸度 ?

日本酒度 -3~-5 アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

中毒にご注意!【甘酸っぱいお酒】

 10月の3連休最終日となった10日の「体育の日」は、日中は上着を着ていると汗ばむほどの陽気となり、日本各地で運動会や様々なスポーツの催しが行われました。

 そんな「スポーツの秋」の夜に相応しい一本として選んだのが、
 【仙禽 ひやおろし 赤とんぼ 愛山】です。

 これは、唯我独尊の酒造りで知られる栃木の「せんきん」の蔵元が、酒造好適米の「愛山」を55%まで磨いて醸した純米吟醸酒を、火入れしてからひと夏の間熟成させたもので、秋に出荷される「ひやおろし」のイメージに相応しく、「赤とんぼ」というネーミングが付けられています。


 香りのトーンは中程度で、「杏のような甘酸っぱい果実の香りや、「りんごパイ」を想わせるフルーツ入りの洋菓子の香りがあり、「爽やかさを伴なった、甘酸っぱい香り」が感じられます。

 口当りはインパクトがあり、自然で優しい甘味とやや口をすぼめてしまう程の酸っぱい酸が、不思議なバランスによって「甘酸っぱい世界」を造り出していて、そこに丸みを帯びた旨味と僅かな苦味が加わることによって、全体の調和もちゃんと取れています

 後口の切れ味の良さは抜群で、まさに「仙禽ワールド」全開といった印象の、「甘味と酸の絶妙なハーモニーが愉しめる、【甘酸っぱさ】に癒される味わい」のお酒でした。


 この個性的な「甘酸っぱいお酒」に対して、今回は「甘酢」を使った料理でストレート勝負を挑んでみることにしました。

 まず1品目は、【カラスガレイの甘酢あんかけです
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「カラスガレイ」
は程好く脂の乗った白身の魚ですが、これは衣揚げにしたカラスガレイに、「甘酢あん」をタップリと絡めた中華の惣菜で、食欲がそそられる味わいです。

 「仙禽」と合わせてみると、料理とお酒の両方の「甘酸っぱさ」が口の中で見事に同調し、そしてこのお酒の僅かな苦味が甘酢によって増幅されることもなく、そのまま適度なアクセントとなって余韻に残ります。

 「甘酢あん」を使った料理に対する相性では、日本酒の中ではこの「仙禽ワールドの甘酸っぱいお酒」がベストではないかと思われるような、そんなとても仲の良い組み合わせでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は【熟成黒酢の酢豚】です。

 これは通常の酢豚と違って野菜が入っておらず、「熟成黒酢」豚肉だけでシンプルに造られた「こだわりの酢豚」です。

 口に入れる前から黒酢独特の熟成フレーバーが鼻を突きますが、食べてみると柔らかい豚肉に熟成黒酢の練れた酸味と甘味がしっかりと浸み込んでいて、なかなかコクのある味わいです。
 早速お酒と合わせてみると、1品目の「甘酢あん」を上回る驚くほど完璧なマッチングで、「熟成黒酢」「甘酸っぱい仙禽」という素敵なマリアージュのパターンを、新たに一つ発見することができました。


 さて、今回はここまで何度も「甘酸っぱい」という言葉を繰り返してきましたが、このお酒の裏ラベルにも、「甘酸っぱいお酒なので、くれぐれも中毒にご注意を」という蔵元からのメッセージが記載されています。
 従来のものとは異なる「独自の日本酒の味わいの世界」を作り上げているのだという、蔵元の揺るぎの無い自信が感じられる言葉ですね…。

【長陽福娘 純米酒 ひやおろし 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 岩崎酒造(山口県,萩市,大字東田町)

特定名称ほか 純米酒 ひやおろし

原料米 山口県産「山田錦」(精米歩合 60%) 

酸度 1.7 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 15-16%

酒造年度 H22BY

【ひやおろし解禁日】のお酒

 10月最初の土曜日は爽やかな秋晴れの一日となり、絶好の秋の行楽日和となりました。
 ちなみに日本酒業界では、10月1日を「日本酒の日」(今ひとつ世間では知られていませんが)と定めており、毎年この日には様々な日本酒関連のイベントが行われています。

 そんな「日本酒のメモリアルデー」の夜に選んだ一本は、
 【長陽福娘 純米酒 ひやおろし】です。


 これは山口県の岩崎酒造が、地元山口産の「山田錦」を使って厳冬期に仕込んだ純米酒を、敢えて一定期間室温熟成させ、その後ひと夏の間じっくりと冷温熟成させてから出荷した「ひやおろし」です。

 香りのトーンは中程度で、「豊水梨を想わせる果実の香りや、「マドレーヌ」のような焼き菓子の香りがあり、「ほんのりと甘く、落ち着きのある丸い香り」が感じられます。

 口に含むと、柔らかくて優しい甘味と輪郭のハッキリとした酸,そしてふくよかな旨味が、ひと夏の熟成によってバランス良く融合しています。

 余韻は比較的長く、心地良い甘味と旨味が、明快な酸を伴って舌の上に広がってゆきます。

 コクやボリューム感も程好くあり、「角の取れた穏やかな飲み口で、甘味,旨味,酸の三味の調和が見事に取れた一体感のある味わい」の旨酒でした。


 このお酒は「食中酒」として、和洋中の様々な料理と幅広く相性が良いと思われましたが、今回は魚料理を2品選んでみました。
 まず
【タラの粕漬け焼きです。■【利き酒師世界一】のひとり呑み■

 タラは比較的淡白な味わいの魚ですが、酒粕に漬け込むことによって、味わいに奥深さが増してきます

 表面の酒粕が焦げ付かないように、クッキングペーパーを被せてからグリル焼きにして食べてみると、酒粕の甘味が鱈に程好く浸み込んでいて、なかなかの美味です。

 「長陽福娘」と合わせてみると、もともと日本酒と酒粕は兄弟みたいなものですから、当然のように両者のフレーバーはすんなりと同調し、このお酒の調和の取れた味わいが、鱈の粕漬けの味わいを消すことなく優しく包み込んでくれました。

 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  
次は【氷下魚(こまい)の一夜干しです。
 「こまい」は主に北海道で獲れる魚で、今回選んだ「一夜干し」のようなソフトタイプと、ガンガンに硬くなるまで完全に干した
ハードタイプのものがあります。

 ハードタイプの干物は、金槌で叩いて柔かくしてから皮を剥ぎ、身をむしりながら食べるというチョット大変な作業が必要ですが、このソフトタイプの一夜干しは、そのまま炙って食べることができます。

 「マヨネーズ七味」につけて口に入れてみると、思ったよりも癖が無く塩分も控えめで、「長陽福娘」のコクのある味わいとの相性も申し分無く、まさにこれぞ「酒と肴」と言いたくなるような組合せでした。

 さて冒頭でも述べたように、業界では10月1日を「日本酒の日」としていますが、11月第3木曜日の「ボージョレ・ヌーボーの解禁日」のように、その日を「ひやおろしの解禁日」にしようという動きが、一部の蔵元や酒販店を中心に数年前から見られています

 確かに面白い取り組みだとは思うのですが、蔵元や酒販店の間で足並みが揃っていないのが実情のようで、世間一般にこの「ひやおろし解禁日」を定着させるのは、今の所はまだ難しいかもしれませんね…。

【而今 純米吟醸 雄町 無濾過 火入れ 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 木屋正酒造(三重県,名張市,本町)

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過 火入れ

原料米 「雄町」(精米歩合 50%) 

酸度 1.7 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +2 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

お米から造る【果実酒?!】
 9月21日に関東地方を直撃した大型の台風15号は、夕方の帰宅時間帯の首都圏の交通機関を完全にマヒ状態にし、その影響で多くの人々が帰宅難民となりました。

 そんな台風の通過と共に、長かった東京の残暑もやっと収まりを見せ、ようやく秋風が感じられるようになりましたが、そんな「秋の訪れ」を想わせる夜に選んだ一本は、
 【而今 純米吟醸 雄町 無濾過 火入れ】です。


 これは、三重の木屋正酒造から今年の3月に出荷された、「純米吟醸 雄町 無濾過生酒」の「火入れ&熟成バージョン」で、出荷量が非常に少ない為に入手困難なお酒なのですが、今回はNET上の酒屋から毎月購入している、「日本酒領布会」の中の一本として呑むことができました

 香りのトーンはやや強く、「熟したマンゴーのようなトロピカルフルーツの香りや、「ラベンダー」を想わせる花の香りがあり、「甘く華やかで、フルーティーな香り」が感じられます。

 口に含むと、艶やかかつ透明感のある甘味と鮮やかな酸,そしてギュっと凝縮された旨味が、トルク全開でダイナミックに押し寄せてきます。

 余韻には僅かに苦味も感じられ、後口はキレの良い酸と共に不思議な程にスーッと引いてゆきます。

 味わいのボリューム感もしっかりとあり、「火入れとは思えない程ジューシー感が残る飲み口で、果実味タップリの魅惑的な味わいのお酒」でした。


 このお酒は、料理が何も無くてもお酒単体で十分に呑めてしまいますが、先日6年ぶりに法事の為に秋田に帰省した際に、帰りに秋田空港の売店で買ってきた秋田の郷土料理と合わせてみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず【比内地鶏の燻製です。
  「比内地鶏」は、日本三大地鶏の一つと呼ばれ、秋田の比内町で放し飼いにされていて、余分な脂肪が少なくてコクのある引き締まった肉質が特徴の地鶏です。

 これはその比内地鶏を軽めにスモークしたもので、程好い塩加減で噛み締めていると鶏肉の旨味が滲み出てきます。

 「而今」と合わせてみると、このお酒の迫力のある味わいに比内地鶏の繊細な味わいが一瞬包みこまれてしまいますが、余韻には再び比内地鶏の凝縮感のある旨味とほんのりとしたスモークフレーバーが戻ってきます。

 どちらかというと、料理がお酒の美味しさを引き立ててくれるような、そんな印象を受ける組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【みずの実の醤油漬けです。

 「みず」は東北地方で採れる山菜で、春~夏にかけては主に茎の部分を食べますが、秋になると茎の先端部分に通称「みずの実」と呼ばれるコブ(むかご)が出来ます。

 これはその「むかご」の部分を醤油漬けにしたもので、独特の歯応えと粘りの中に何とも言えない旨味があり、一度食べるとクセになる味わいの珍味です。

 お酒と合わせてみると、こちらは「而今」のダイナミックな味わいにも圧倒されずに踏み留まり、そしてお酒と珍味の両方の味わいの個性が、口の中で互いに絡まりながら持続してゆきます。

 ちなみに秋田の家庭料理では、この「みずの実」を味噌漬けにするのですが、個人的には醤油漬けよりも味噌漬けにした方が、日本酒との相性が更に良くなるように思われました。

 さて、今回呑んだ「而今 純米吟醸 雄町 火入れ」が、私にとっては平成22酒造年度の「而今」ブランドの飲み納めの一本となり、この後は次の平成23酒造年度の「而今」の新酒を待つこととなります。

 今シーズンも「無濾過生原酒」から始まって「火入れ」タイプまで、様々な「而今」ブランドのお酒を呑んできましたが、どれもこれも「而今」ならではの、まるで「お米で造った果実酒?!」のようなジューシーな味わいで、もはや「異次元レベル?!」と言える美味しさをタップリと堪能させてもらいました。

 今から次のシーズンの「而今」シリーズの登場が待ち遠しいですね~。