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■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【綿屋倶楽部(コットンクラブ) 純米酒】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 金の井酒造(宮城県,栗原市,一迫字川口町)
特定名称ほか 純米酒
原料米 「蔵の華」(精米歩合 60%)
酸度 1.5-1.8 アミノ酸度 ? 酵母 宮城酵母
日本酒度 -2+2 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY
ゆるゆるスペックの【コットンクラブ】 
 4月の第4日曜日は、前線を伴った低気圧の影響で西日本では激しい雨の降る荒れた天気となり、東京でも終日雨が降ったり止んだりの一日となりました。
 さて、今週帰宅後にWEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて、興味を惹かれて取り寄せたお酒がコレ、
 
【綿屋倶楽部(コットンクラブ) 純米酒】です。

 これは、「綿屋」ブランドで知られる宮城県の金の井酒造から、毎年スペックを変えてゲリラ的に出荷される実験的位置付けのお酒で、「綿屋倶楽部」と書いて「コットンクラブ」(=アメリカ禁酒法時代にニューヨークに実在した高級ナイトクラブの名前)と読ませる、チョットお洒落なネーミングになっています。

 香りのトーンは中程度で、「わらび餅」のような甘い餅菓子の香りや、「砂糖入りのホットミルク」を想わせる甘味を加えた乳製品の香りがあり、「ほのかに甘く、穏やかで丸く柔和な香り」が感じられます。
 口当りは柔らかく、優しく自然な甘味と輪郭のハッキリとした豊かな酸,そしてマイルドなお米の旨味が、とてもバランス良く口に広がってゆきます。
 後口にも明快な酸が感じられ、そして程好い甘味と旨味が一体となった心地良い余韻が長めに続きます。
 コクやボリューム感も十分で、「柔らかな飲み口で、ホッとさせられるような心落ち着く味わいの、純米酒らしい純米酒」でした。

 この「オーソドックスな純米酒」を「ぬる燗」にしてしみじみと呑みながら、「おにぎりの具」にしたくなるようなこんな2品と合わせてみました。
 まず1品目は【北海道産「時鮭」の甘塩】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ 春~夏にかけて獲れる鮭は、旬の秋以外の時期の鮭という意味から「時知らず(鮭)」と呼ばれていて、「秋味」よりも脂が乗っているのが特徴なのですが、食品スーパーなどでは一般的に「時鮭」という名前で売られています。
 今回は塩分濃度が高い「辛塩」タイプではなく、塩分控えめの「甘塩」タイプのものを買ってきて焼いてみましたが、程好く脂が乗っていて塩加減も丁度良く、おにぎりの具にして食べたらさぞかし美味いだろうなと思わせる味わいです。
 ご飯の代わりに「綿屋倶楽部」で包み込んでみると、このお酒の優しい甘味が「時鮭」の塩分を抑え、鮭本来の味を引き出してくれるのですが、それでも若干ながら「時鮭」の塩気の強さの方が、このお酒の穏やかな味わい対して上手になっているような印象が残りました。
 もちろん相性としてはと言って良いのですが、「塩鮭」にはもう少し濃醇甘口タイプの純米酒を組み合せた方が、よりいっそう相性度がアップするように思われました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は【いくらの醤油漬け】です。
 「いくら」鮭の「生筋子」から薄皮や筋を取り除いてバラバラにほぐしたものですが、それを醤油,酒,味醂に漬けた「いくらの醤油漬け」は、「おにぎりの具」としては決して外せない定番アイテムの一つとなっています。
 大きめのスプーンですくって頬張ってみると、口の中で「いくら」がプチプチと弾け、そして程好い醤油のフレーバーと魚卵独特の旨味が広がりお酒を誘います。
 そのタイミングで「綿屋倶楽部」と合わせてみると、このお酒の自然な甘味と「いくらの醤油漬け」のコクと旨味を伴った醤油味,さらには味醂の甘味とが見事に融合して一体となってゆきます。
 こちらは文句なしでと言える、お酒がグイグイと進むとても相性の良い組合せでした

 話は変わりますが、このお酒の裏ラベルには「日本酒度」と「酸度」の数値が記載されているのですが、「日本酒度-2~+2「酸度1.51.8」といった具合に、どちらも数値に幅のある曖昧な表現となっていて、これは私の勝手な想像なのですが、この蔵元は「大体これくらいのスペックなので、あまり数値を気にしないでゆるりと呑んでね。」と言いたいのではないかと思います。
 こんな「心落ち着く味わいの純米酒」を「ぬる燗」にして「ゆるりゆるり」と呑んでいると、こんな「ゆるゆる」としたスペック表記も「あり」だな,と思えてきてしまうのが不思議ですね…。

【一白水成 純米吟醸 生酒 山田錦】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 福禄寿酒造(秋田県,南秋田郡,五城目町)
特定名称ほか 純米吟醸 生酒
原料米 「山田錦」(精米歩合 50%)
酸度 非公開 アミノ酸度非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY
「一白水成」の【山田錦デビュー酒】 
 東京では4月最初の週末に桜が満開となり、それ以降は春らしい陽気の日が続いていましたが、第2週の週末の土曜日は低気圧の影響で2月下旬の寒さへと逆戻りし、さらに終日降り続いた雨と北風によって桜の花もあらかた散ってしまいました。
 そんな肌寒い週末の夜に選んだ一本は、
 
【一白水成 純米吟醸 生酒 山田錦】です。

 これは秋田の福禄寿酒造が、原料米に初めて「山田錦」を使って醸した数量限定の純米吟醸の生酒で、「一白水成」(いっぱくすいせい)という名前には、「白」いお米と「水」から「成」「一」番旨いお酒という意味がこめられており、またこの蔵から「一白水成」ブランドで出荷されるお酒のスペックは、全て無濾過原酒(生酒もしくは瓶火入れ)となっています。

 香りのトーンは中程度で、「マスクメロン」を想わせる甘い果実の香りや、「パンジー」のような花の香りがあり、「ほんのりと甘く華やかで、上品な印象の吟醸香」が感じられます。
 口に含むと、チャーミングな印象の甘味と輪郭のハッキリとした酸,そして円やかな旨味が、非常にバランス良く広がってゆきます。
 後口は割としっかりとしていて、余韻にはややピリピリ感を伴ったドライな酸が感じられます。
 コクやボリューム感も十分にあり、「滑らかかつ芳醇な飲み口で、甘味,酸,旨味の調和が見事に取れた、呑み飽きしない味わい」のお酒でした。

 このお酒はとてもスイスイと呑めてしまう「食中酒」なので、あまり深く考えずに旬の魚介や野菜と合わせてみることとしました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは旬の魚介から
【生桜海老】です。
 今年の駿河湾の春の桜海老漁は4月から既にスタートしていて、「桜海老」と言うと一般的には「釜揚げ」にしたものが販売されていますが、今回はデパ地下の鮮魚売り場で「生桜海老」が売られていたので購入してきました。
 「海のルビー」と言われている透明感のある美しい桜色で、また殻が柔らかいので殻ごと食べても全然OKです。

まずは醤油も何もつけずに食べてみたのですが、桜海老の上品な甘味がタップリと感じられてとても美味です。
 「一白水成」と合わせてみると、お酒の甘味と桜海老の甘味がピッタリと同調して口の中で渾然一体となり、その一方でこのお酒の持つシャープな印象の酸が、桜海老の甘味によってより一層引き出されてきます。
 呑みながら思わず「う~ん」と唸ってしまうほどの、相性が抜群の組合せでした。 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては旬の野菜から
【茹でそら豆】です。
 今回は鞘入りのものを買ってきて、タップリのお湯に塩とお酒を入れて茹でてみましたが、そら豆独特のほんのり青臭いフレーバーと共に、野菜の持つ自然で心地良い甘味が感じられます。
 お酒と合わせてみると、特に違和感は無く相性としては悪くないのですが、そら豆のせっかくの自然な甘味が、「一白水成」の持つ無濾過生原酒のボリューム感にスッポリと包み込まれて、やや消えてしまうような印象があります。
 試しに「良く冷えた缶ビール」を合わせてみたのですが、こちらは「そら豆」の持つ味の個性とフレーバーがしっかりと持続し、「文句なしに◎」と言える相性の良い組合せでした。
 やはり「そら豆」とベストカップルな飲み物という点では、日本酒よりもビールに軍配が上がるようです。

 さて冒頭でも述べたように、この蔵元が「一白水成」の名前で出荷しているお酒のスペックは、全て「無濾過原酒の生酒又は瓶火入れ」に統一されているのですが、その一方で使用米に関しては、今回呑んだ「山田錦」の他にも、「美山錦」「愛山」「雄町」「亀の尾」「美郷錦」「吟の精」「秋田酒こまち」と様々な酒造好適米が使われているので、ぜひ今年中に全種類の「一白水成」を制覇したいと思っております。(無理かな?!)

【而今 純米吟醸 山田錦 無濾過生】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 木屋正酒造(三重県,名張市,本町)
特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生酒
原料米 「山田錦」(精米歩合 50%)
酸度 非公開 アミノ酸度非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 17.0
酒造年度 H23BY
【而今の大本命】「山田錦 無濾過生」 
 新年度に入って最初の週末,東京では平年より3日遅れて桜の花が満開となりました。
 そこで休日を利用して、「都会の桜の名所」として知られている赤坂の「桜坂」から「スペイン坂」へと散策に出かけ、全長700mにも及ぶ見事な桜並木のトンネルを愉しんできました。 
 そんな「春爛漫」といった雰囲気の夜に選んだ一本は、
 
【而今 純米吟醸 山田錦 無濾過生】です。

 これは、三重の木屋正酒造「而今 純米吟醸 無濾過生シリーズ」の今シーズンの第4弾となるお酒で、今年に入ってから既に「五百万石」,「八反錦」,「千本錦」を使ったバージョンが出荷されていますが、この「山田錦」を使ったバージョンは毎年ダントツの人気で入手が非常に困難となっており、半ば諦めかけていたのですが何とか一本だけ購入して呑むことができました。

 香りのトーンは強く、「完熟のパイナップル」のようなトロピカルフルーツの香りや、「イチゴのショートケーキ」のようなフルーツを使った洋菓子の香りがあり、「甘く華やかで、ジューシーな果実を想わせる香り」が感じられます。
 口に含むと、いきなり濃密で果実味タップリの甘味が押し寄せてきてノックアウトされてしまいますが、その甘味を溌剌とした酸と厚みのある旨味がしっかりとフォローしてくれている為、全体の甘味が強いにもかかわらず「くどさ」は全く感じられません。
 後口にもフルーティーな甘味が長く続き、余韻には微炭酸のガスによるフレッシュ感も感じられ、そして最期は透明感を伴ってキレイに切れてゆきます。
 コクやボリューム感は十二分にあり、「ジューシー&フルーティーな飲み口で、まさに芳醇の極みといった印象の別次元の味わい」のお酒でした。

 このお酒はしっかりと冷やしてお酒単体で呑むのが一番なのですが、敢えて料理と合わせる場合は、「而今」のフルーツジュースのような甘味に圧倒されないように、個性的で強い味わいの「酒肴」が良いように思われたので、今回はこんな2品を選んでみました。
 まず1品目は
【ゴーダチーズ 5年熟成】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「ゴーダ」「エダム」と並ぶオランダの代表的なセミハードチーズで、日本では「プロセスチーズの原料」としても使われていますが、これはその「ゴーダチーズ」を5年間も熟成させた「超長期熟成タイプ」で、ここまで長く熟成させたものはチーズショップでもめったに見かけることはありません。
 外観はキャラメルのような濃いオレンジ色で、長期熟成により水分が減って固い状態になっている為、チーズを切るというよりも砕いてその破片を食べるという感覚です。

口に入れるとジャリジャリとした舌触りのアミノ酸の結晶があり、まさに「旨味の固まり」といった凝縮感のある深い味わいなのですが、不思議なことにその味わいの中になぜか「味噌」そっくりの香りと「しょっぱさ」があります。
 お酒と合わせてみると、「而今」のジューシーな甘味がこのチーズの持つ味噌風味の「しょっぱさ」を包み込み、そして「ゴーダチーズ」の濃厚な旨味と「而今」の魅惑的な甘味とが、ガップリ四つに組み合いながら互いの個性をしっかりと主張し続けてゆきます。
 個性派同士が出会うことによって、互いの個性の強さのバランスがうまく取れているような、なかなか面白い印象のマリアージュでした。 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は
【まぐろの酒盗】です。
 「酒盗」と言うと一般的には「カツオの酒盗」が思い浮かびますが、これは「まぐろの胃袋」だけを塩漬けにして約1年間熟成し発酵させたものです。
 かなりの塩辛さで、思わずアツアツのご飯に乗せて食べたくなってしまいますが、ただ単に塩辛いだけではなく、塩辛さの中にコクや旨味もしっかりと感じられます。

ご飯の代わりにお酒を流し込んでみると、「而今」の濃密な甘味と「まぐろの酒盗」の塩辛さがどちらも一瞬でマイルドに変化し、それに代わってお酒と酒盗の両方の旨味が顔を出してきます。
 これぞ「酒と肴」,と言いたくなるような絶妙な相性の良さで、お酒がグビグビと進んでしまうとても危険な組合せでした。

 さて、今まで様々な種類の酒米を使った「而今」の「純米吟醸 無濾過生シリーズ」を飲んできて、そして飲む度ごとに「お米」が原料とは思えないジューシーで果実味溢れる味わいに驚かされてきましたが、個人的にはやはりこの「山田錦バージョン」が、トータルの実力ではナンバーワンなのではないかと思っています。
 そんな訳で、自分にとっては「大本命」である「而今 純米吟醸 山田錦 無濾過生」を既に飲んでしまったので、今シーズンは残りの「而今」シリーズを追いかけるのはお休みにして、しばらくの間は他のお酒に浮気しようかなと考えています。

【越の白鳥 特別純米 仕込み5
              無濾過生原酒】
  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区,横川)
特定名称ほか 特別純米 無濾過生原酒
原料米 新潟県産「たかね錦」(精米歩合 60%)
酸度 非公開 アミノ酸度非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 17.0
酒造年度 H23BY
【幻の山間】のDNAを継ぐお酒 
 3月最終日となった31日の土曜日,発達した低気圧の影響により関東地方は朝から強い風雨の荒れ模様の天気となりましたが、その悪天候の中で気象庁から今年の東京の「桜の開花宣言」が出されました。
 そんな「春の嵐」が吹き荒れた日の夜に選んだ一本は、
 
【越の白鳥 特別純米 仕込み5号 無濾過生原酒】です。

 これは、新潟第一酒造から出荷された「山間 仕込み5号 無濾過生原酒」と同じモロミから搾られたお酒なのですが、杜氏の「武田良則」氏のこだわりによって、搾りの中間の最も品質の良い「中採り」の部分を「直汲み」で瓶詰めしたものには「山間」,そして搾り初めの「走り」の部分と最後にプレスして搾り切る「責め」の部分をブレンドして瓶詰めしたものには「越の白鳥」という名前が付けられていて、それぞれ別々のブランドとして出荷されています。

 香りのトーンは強めで、「ティラミス」のようなココアを使ったデザートの香りや、「天津甘栗」を想わせるような甘い焙煎香があり、「甘くフルーティーで、ほのかに香ばしさを感じさせる香り」といった印象です。
 口当りはインパクトがあり、やや濃密で艶のある甘味と舌に浸み込むようなコクのある旨味が一気に広がり、そこに更に心地良い苦味や渋味が加わって、複雑に変化する味の世界が口の中で展開してゆきます。
 後口にも心憎い「甘・旨・苦渋味」の三つ巴の余韻が長く続き、そして微発泡のプチプチ感による快い刺激も感じられます。
 コクやボリューム感も充分にあり、「絶妙なビター&スウィートテイストがクセになりそうな、複雑かつ魅力的な味わい」のお酒でした。

 この「ヤバうま酒」は、料理が何も無くてもお酒だけでグイグイと呑めてしまいますが、「山間」と同様に「しっかりとした旨味があるもの」と相性が良いと思われたので、こんな2品を選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目は
【めかぶとろろ】です。
 「めかぶ」は生長した「わかめの茎」の根元の方にあるヒダヒダの部分で、「生のめかぶ」は「わかめ」の採取時期と同じ2月~4月の間だけ手に入れることができるのですが、これはその「生めかぶ」を軽く湯通ししてから包丁で細かく刻んでトロロ状にしたものです。
 コリコリとした歯応えで、独特の磯の香りとぬるぬる感があり、口の中があっという間に「めかぶ」の旨味成分でいっぱいになります。
 そのタイミングですかさず「越の白鳥」を合わせてみると、両方の旨味の濃さと凝縮感がドンピシャで同調して融合し、そして余韻にはこのお酒の個性である「甘苦渋味」が再び戻ってきます。
 旨味×旨味の相乗効果が愉しめる、なかなか相性の良い組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は
【アルディ・ガスナ】です。
 これはフランスのバスク地方で造られている「ブルビ(羊乳のチーズ)」で、今回はある程度熟成させたものを購入してきたのですが、「羊乳チーズ」特有のクセのある臭いは思った程強くなく、口当りは柔らかくしっとりとしていて、素朴な味わいの中に深い旨味とほんのりとした甘味,そして程好い塩味が感じられます。
 お酒と合わせてみると、両者の味わいの濃厚さのレベルがうまく釣り合い、またこのチーズの適度な塩味と「越の白鳥」の艶のある甘味とのバランスも丁度良く、そしてこちらの組合せにおいても、このお酒のキャラクターである深いコクのある複雑な味わいはしっかりと持続してくれました。
 今年の2月に「山間」と「ボーフォール」を合わせた時もそうでしたが、このタイプの無濾過生原酒は、いわゆる「山のチーズ」と呼ばれるハード又はセミハードタイプのチーズを一定期間熟成させたものと、非常に良い相性を見せてくれるように思われました。

 さて話は全く変わりますが、以前から「山間」を購入していたNET上の酒屋のブログ上で、今期の「山間」シリーズのお酒は、「山間 仕込み5号」を最期に終了になったという衝撃的な発表が行なわれました。
 蔵元のオフィシャルブログによると、モロミを搾る「ヤブタ」という圧搾機のゴムパッキンを新品に交換したことにより、パッキンの「ゴム臭」がお酒に多少移ってしまっていることが判明したのだそうです。
 その「ニオイ」は、搾られたお酒を「炭素濾過」するとキレイに消える為、今後この蔵から出荷されるお酒は全て濾過されることとなりますが、杜氏の武田氏としては「山間」は「無濾過」で出すということにこだわっており、したがって今期の「山間」ブランドでの出荷は断念せざるを得ないという判断を下したそうです。
 そういった理由から、今シーズンはもう「山間」が呑めなくなってしまったのですが、同じモロミから搾られしかも「無濾過」で出荷されたこの「越の白鳥 無濾過生原酒」は、ある意味で「幻の山間のDNAを引き継いでいる貴重なお酒であると言うことができます。
 そんな訳で、今回は一升瓶を3本も「まとめ買い」してしまったのですが、今シーズン中は「山間」の代わりにこのお酒を呑みながら、来シーズンの「山間」ブランドの復活を待ちたいと思っています。

【笑四季 LA MOUSSON メルヴェイユ】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 笑四季酒造(滋賀県,甲賀市,水口町)
特定名称ほか 貴醸酒 生原酒
原料米 信楽町産「山田錦」(精米歩合 60%)
酸度 非公開 アミノ酸度非公開 酵母 笑四季19号酵母
日本酒度 非公開 アルコール度 17.0
酒造年度 H23BY
スウィートな【バニーちゃんのお酒】 
 「春分の日」を過ぎてようやく春めいてきましたが、それと共に今年も「花粉症」に悩まされる時期がやって来ました。
 それでも近年は効果のある薬が色々と出てきているので、この季節に「利き酒」をする際にも、以前ほど花粉症の症状に邪魔されずに済むようになりました。
 そんな、「花粉が舞う」週末の夜に選んだ一本は、
 
【笑四季 LA MOUSSON メルヴェイユ 生原酒】です。

 これは個性的な酒造りで知られている滋賀県の笑四季酒造が、「貴醸酒をベースとした極甘口のお酒」として昨年からリリースしている「モンスーン(MOUSSON)シリーズ」の本年度版の新アイテムの一つで、この蔵独自の「笑四季19号酵母」信楽町産の山田錦」を使って醸し、垂口(たれくち)から直汲みによって瓶詰めした「生原酒」タイプのお酒です。
 ちなみに、サブタイトルとして付けられている「メルヴェイユ」とは、「素晴らしい」という意味のフランス語です。

 香りは、「完熟マンゴー」を想わせるトロピカルフルーツの香りや、「エクレア」のようなチョコレートを使った洋菓子の香りがあり、「スウィート&フルーティーで、非常に甘美な香り」が感じられます。
 口当りはトロリとしていて、まずは濃密かつジューシーな甘味に圧倒されますが、その甘味をキレのある引き締まった酸と、「甘味と紙一重」の芳醇な旨味がフォローしてゆき、そして後口には生原酒ならではの微発泡感が加わって爽やかにフィニッシュします。
 まるで「トロピカルフルーツカクテル」を飲んでいるような印象で、「極甘口の味わいと生原酒のフレッシュ感が同時に愉しめる、甘美で魅惑的な味わい」のお酒でした。

 この「スウィートなお酒」は、しっかりと冷やして「食前酒」としての一杯か、デザートと一緒に「食後酒」として飲むのがベストかと思われましたが、今回はフランスのボルドー地方の極甘口ワイン「ソーテルヌ」にならって、「フォアグラ料理」「ブルーチーズ」を合わせてみることとしました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【フォアグラのテリーヌ】です。
 これは、「トロンペット」という名前のフランス産の黒いキノコと「フォアグラ」を使った「テリーヌ」で、レバー特有のブラッディーなフレーバーとコクのある味わいに対して、「トロンペット」の強めのキノコの香りが、「味わい」ではなく「香り」によってこの料理に程好いアクセントを与えています。
 「モンスーン」を合わせてみると、口の中でこのお酒の濃密な甘味がやや穏やかな甘味へと変化し、その一方でフォアグラのクセのある個性的なフレーバーもマイルドに変化してゆきます。

両者がすんなりと調和しつつ、お酒と料理の味わいがどちらも「少し大人しく」なってゆくように感じられる、ちょっとユニークな感覚の組み合わせでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【オスタークロン】です。
 これはオーストリアを代表するブルーチーズで、青カビのピリピリとした刺激はそれ程強くなく、ブルーチーズとしてはどちらかと言うとマイルドなタイプなのですが、その一方で塩味は割としっかりと感じられ、またミルクを凝縮させたような濃厚な旨味もあります。
 「モンスーン」と合わせてみると、「オスタークロン」の塩味とこのお酒の艶やかな甘味が絶妙なバランスで釣り合い、そこにこのチーズのミルキーな旨味と「モンスーン」の引き締まった酸が加わることによって、口の中に一つの完成された味わいの世界が誕生します。

「極甘口タイプ」のお酒「ブルーチーズ」のカップルは、最高のマリアージュの一つだということを改めて認識させてくれるような、とても素敵な相性の組み合わせでした。

 それにしてもこの「モンスーン メイヴェイユ」というお酒,「貴腐ワイン」のような強烈かつ魅惑的な味わいはもちろんのこと、モノトーン調の「バニーガール」のお洒落なラベルデザインの外観,さらにはワイン用の750mlサイズの瓶を使っている点など、どの要素を取っても従来の日本酒のカテゴリーにはもはや収まりきらない商品になっていて、笑四季酒造から出されている酒販店向けの資料の中にも、「このお酒が日本酒として【あり】か【なし】かについては皆さん自身で考えて下さい。」という趣旨のコメントが添えられています。

もちろん、私個人としては断然【あり】な日本酒ですね。

【三井の寿 純米吟醸 クアドリフォリオ】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 井上合名(福岡県,三井郡,太刀洗町,栄田)
特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生酒(加水?)
原料米 「吟のさと」(精米歩合 60%)
酸度 1.4 アミノ酸度 1.3 酵母 自家培養9号系酵母
日本酒度 +8 アルコール度 15.0
酒造年度 H23BY
四葉のクローバーの【春告げ酒】 
 3月の第3土曜日,西日本では南寄りの風が強まって気温が上昇し、九州北部と四国では今年の「春一番」が吹いたという気象台からの発表がありました。
 そんな、「春を告げる風」が吹いた週末の夜に選んだ一本がコレ、
 
【三井の寿 純米吟醸 クワドリフォリオ】です。

 これは、福岡県の筑後平野の中に位置する「三井の寿」の蔵元が、春夏秋冬の季節ごとにリリースしている「イタリアンラベル」シリーズの「春バージョン」のお酒で、「クワドリフォリオ」というのはイタリア語で「幸運の四葉のクローバー」という意味の言葉です。
 またこのお酒の原料米には、母親とお爺さんが「山田錦」(つまりは3/4が山田錦系統)である、「吟のさと」という新しい酒造好適米が使われています。

 香りは、「マスカット」のような果実の香りや、「スペアミントのタブレット菓子」を想わせる香草系の香りがあり、「ほんのり甘く華やかで、爽やかさを伴ったフローラルな香り」が感じられます。
 口当りは軽快で、大人しく控えめな甘味と軽くキレイな酸,そして穏やかな旨味と余韻に割とハッキリと感じられる苦味が組み合わさって、味わい全体に非常にスッキリとした印象をもたらしています。
 コクやボリューム感も比較的控えめで、「滑らか&クリアーな飲み口で、透明感を感じさせるやや淡麗な味わい」のお酒でした。
 「日本酒度プラス8の辛口でありながら「アルコール度15%」というこのお酒のスペックから考えて、おそらく「加水」をしているのではないかと思われますが、このところ立て続けに「無濾過生原酒」ばかり呑んでいたせいもあるのか、個人的にはこのお酒の味わいが「やや薄い」ようにも感じられてしまいました。

  このスッキリタイプのお酒には、あまり濃い味付けのものやコッテリ系の料理は合わないように思われたので、こんな料理を2品セレクトしてみました。
 まずは
【桜鯛の湯引き】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 「真鯛」は南から桜の便りが届く3月中旬の頃から旬を迎える魚で、産卵を控えたこの時期の真鯛はその鮮やかなピンク色の姿から別名「桜鯛」とも呼ばれていますが、今回は「湯引き」にして皮目の美しさを残した「桜鯛」を、このお酒のやや淡麗な味わいを考えて、「わさび醤油」ではなく「焼き塩」で食べながらお酒と合わせてみました。
 まずは、口の中で「クアドリフォリオ」の穏やかな甘味と「焼き塩」が丁度良く釣り合い、続いてその合間から「桜鯛」の凝縮感のある旨味がしっかりと顔を出し、さらにはその旨味の効果によって、このお酒がより一層スッキリとした味わいへと変化してゆきます。
 「クワドリフォリオ」の透明感のある味わいが、消えてしまいそうになりながらもギリギリ踏み留まってくれているような、そんな印象を受ける組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【よもぎ胡麻豆腐】です。
 これは「よもぎ」を湯がいてアクを抜き、細かくたたいてから「胡麻」「葛粉」と一緒に練り上げて、豆腐のように仕立てた料理で、「よもぎ」の鮮やかな深緑色と添えられている「わらび」「竹の子」「クコの実」のキレイな彩りが、見た目にも「春の訪れ」を感じさせてくれます。
 ところが味わってみると、胡麻の風味で若干和らげられているとは言え、間違って「よもぎ」の分量を多く入れ過ぎたのではないかと疑う程、「よもぎ」独特の苦味と青臭いフレーバーが口全体に強烈に広がってゆきます。
 慌ててお酒を流し込むと、「クワドリフォリオ」の穏やかな甘味のマスキング効果により、「よもぎ」の苦味が一時的には消えるのですが、余韻には再び「ベジェタル」な印象の苦味が戻ってきてしまいます。
 まあ「ふきのとう」の苦味を味わうのと同じように、「よもぎ」の強い苦味を「春の味覚」と割り切って味わえば良い料理なのかもしれませんが、日本酒と組み合わせて愉しむのには「やや難」のある料理でした。  

 ■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ さて冒頭でも述べたように、この蔵元では四季ごとに「イタリアンラベル」シリーズのお酒を出していて、今回呑んだ春の「クワドリフォリオ」(四葉のクローバー)の他に、夏の「チカーラ」(せみ)秋の「ポルチーニ」(きのこ),そして冬の「ネーベ」(雪)という3種類があります。
 なぜ日本酒のラベルとネーミングが「イタリアン」なのか?,その理由は蔵元のホームページを見ても良く判りませんでしたが、確かにどれも見た目が愉しくて、ついつい「ジャケ買い」したくなってしまいますね。

【桜吹雪 大吟醸 出品仕込み 本生】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 金光酒造(広島県,東広島郡,黒瀬町)
特定名称ほか 大吟醸 本生 出品仕込
原料米 広島県産「千本錦」(精米歩合 40%)
酸度 1.2 アミノ酸度 ? 酵母 ?
日本酒度 +4 アルコール度 17.0
酒造年度 H23BY
「本生」バージョンの【出品仕込み】 
 あの東日本大震災から1年が経った311日の日曜日,被災地では犠牲者への鎮魂の祈りが捧げられ、そして日本各地では様々な追悼の行事が行なわれました。
 被災地の一日も早い復興を改めて祈りつつ、今宵選んだお酒がコレ、
 
【桜吹雪 大吟醸 出品仕込み 本生】です。

 これは、全国新酒鑑評会において3年連続で「金賞」を受賞している広島の「賀茂金秀」の蔵元が、広島県産の「千本錦」40%まで磨き上げて醸した今年の「鑑評会出品仕込み」大吟醸酒で、しかも今回購入した初回出荷分に限り、一切「火入れ」を行わない「本生バージョン」で蔵出しされています。

 香りは、「熟したアメリカンチェリー」のような甘い果実の香りや、「藤の花」を想わせるフローラルな香りがあり、「甘く華やかで、優雅な印象の香り」が感じられます。
 口当りはスムーズで、果実味のある芳醇な甘味と鮮やかな酸,そして滑らかな旨味が、見事なバランスで調和しています。
 後口は割としっかりとしていて味の余韻も比較的長く、心地良い甘味とピチピチ感のあるシャープな酸が感じられます。
 コクやボリューム感も程好くあり、「躍動感のある飲み口で、ジューシーかつエレガントな味わいの美酒」でした。

 このお酒は、香り,味わい共に「優雅さ」を感じさせてくれる美酒なので、お酒単体でじっくりと味わうのが一番かと思いましたが、今回はこんな料理を2品試してみました。
 まず1品目は
【ほたるいかの辛子酢味噌】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「ほたるいか」は普段は深海に棲んでいますが、春になると産卵の為に群れをなして岸近くまで集まってきて、富山湾の「ほたるいか漁」が解禁となる3月以降は、市場でもかなり多くみられるようになってきます。
 今回はボイルしてあるものを銀座のデパ地下の鮮魚売り場で購入してきたのですが、ほたるいかの「目」と「軟骨」の部分が、食べ易いようにあらかじめ取り除かれた状態で売られていました。(銀座に買い物に来るマダム仕様なのか?)
 「辛子酢味噌」に付けて食べてみると、イカ独特の風味とワタの部分のコクと旨味のある味わいに、「辛子酢味噌」が程好いアクセントとなっていて実に美味です。
 「桜吹雪」と合わせてみると、両者が何の違和感もなくすんなりと寄り添って一つに溶け合い、それでいてこのお酒の味わいの「優雅さ」は全く揺らぐことがありません。
 「大吟醸酒」と言うと、個人的には「食前酒の一杯」として愉しむか、料理と合わせるにしても「オードブルの一品まで」というイメージがあったのですが、この「桜吹雪 大吟醸」は「食中酒」としてのキャラクターも十分に兼ね備えていて、意外なほど相性の良さを感じさせてくれる組合せでした。

 続いて2品目は「桜つながり」
【鯛の桜蒸し】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  これは、蒸した「道明寺粉」を丸めてその中に一度昆布で挟んだ鯛を入れ、それを「塩漬けの桜の葉」で包んで蒸し上げてから、仕上げに「銀餡」をかけたこの季節ならではの料理で、上にあしらった「塩漬けの桜の花」がより一層春らしさを演出しています。

子供の頃食べた「柏餅」を思い出させるような香りで、「餅米」のモチモチとした食感と甘味に対して程好い塩加減が効いていて、さらにそこに昆布で〆た鯛の旨味と「銀餡」の風味が加わることによって、口の中が「春のフレーバー」でいっぱいになります。

そのタイミングですかさず「桜吹雪」を合わせてみると、蒸した道明寺粉の上品な甘味とこのお酒の芳醇な甘味がキレイに同調し、そして余韻には「桜の葉」の香りと「桜吹雪」の優雅な吟醸香が、何とも言えない香りのハーモニーを奏でてくれます。

この「鯛の桜蒸し」という料理は、もともと「大吟醸酒」と合わせる為に考え出されたのではないかと思ってしまうほど、とても素敵な相性を見せてくれた組合せでした。


 ちなみに、今回呑んだ「鑑評会出品仕込みの桜吹雪」は、モロミが通常の方法によって搾られているのですが、実際に「鑑評会に出品される桜吹雪」の方は、同じモロミから「雫取り」によって時間と手間をかけて搾られていて、その後「斗瓶」の中に貯蔵されて静かに出品の時期を待っているそうです。

つまり鑑評会には、この優雅な美酒の更に「雫酒バージョン」が出品されることになるわけで、今年の全国新酒鑑評会でも、「桜吹雪 大吟醸」4年連続で金賞を受賞するのはもう間違いないと言って良いでしょう。

天狗舞 純米大吟醸 50生酒

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 車多酒造(石川県,白山市,坊丸町)
特定名称ほか 純米大吟醸 生酒
原料米 兵庫県産「特A山田錦」(精米歩合 50%)
酸度 1.4 アミノ酸度 ? 酵母 ?
日本酒度 +3 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY
老舗蔵の【新タイプのお酒】 

 33日の「ひな祭り」の土曜日は、日中は寒さが緩んで「お出かけ日和」となった為、新宿御苑まで「梅の花」を観に出かけたのですが、2月の厳しい寒波の影響で例年より開花が大幅に遅れているらしく、園内の梅の木はまだほとんどが「つぼみ」の状態で、花がほころび始めているのは全体の約一割といったところでした。

そんな春が待ち遠しい週末の夜に選んだ一本がコレ、
 天狗舞 純米大吟醸 50生酒】です。

 これは「天狗舞」で知られる石川県の車多酒造が、今シーズンは一度のみという限定で出荷した「純米大吟醸の生酒」で、世間で「天狗舞」の代名詞になっている「山廃仕込み純米酒」とはスペックが異なる、いわばこの蔵の「新商品」とも言うべき全く新しいタイプのお酒です。

 香りのトーンは中程度で、「ラ・フランス」のような果実の香りや、「りんご羊羹」を想わせる菓子類の香りがあり、「甘く華やかで、キレイな印象の果実香」が感じられます。

口当りは滑らかで、フルーティーさを伴った上品な甘味ときめ細かく軽やかな酸,そして膨らみのある旨味がバランス良く調和しています。
 後口は軽快で余韻は比較的短く、スッキリとした甘味と穏やかな旨味が心地良さを感じさせてくれます。
 コクやボリューム感は中程度で、「のど越しスムーズな飲み口で、スッキリとしていながらも程好く旨味の乗った、優しい味わい」のお酒でした。

 この「新タイプの天狗舞」には、あまり濃い味付けの料理やコッテリ味のものは合わないように思われたので、「春の味覚」を使ったこんな料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【キビナゴのお刺身】です。
 「キビナゴ」は春先~初夏の産卵前が旬となる小魚ですが、「手開き」によって造られる「キビナゴのお刺身」は九州を代表する郷土料理の一つで、銀色と青色の体側の帯の彩りのコントラストの美しさは、鮮魚売り場の中でもひときわ目を引きます。

生姜醤油で食べてみると思ったよりも歯応えがあり、また上品な味わいの中にほのかな旨味もあります。
 「天狗舞」と合わせてみると、相性としては決して悪くはないのですが、キビナゴのお刺身の繊細かつ淡白な味わいが、このお酒の優しい味わいに包み込まれてやや消えてしまうようにも感じられます。

このタイプのお酒には、「カツオ」のようなもう少し旨味のある魚介のお刺身を合わせた方がベターのようです。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【わけぎと貝柱のぬた】です。
 春野菜の「分葱(わけぎ)」は、主に関西以西で栽培されている長ネギと玉ネギの雑種で、種ではなく球根で増える為に根の部分が少し膨らんでいるのが特徴で、魚介類と「わけぎ」を「辛子酢味噌」で和えた「ぬた」はこの季節の定番料理の一つになっています。

シャキシャキとした食感で、ネギ特有の甘味や旨味と共に程好い辛味があり、それが「辛子酢味噌」と絶妙にマッチングしていて、いかにも「酒の肴」といった感じの料理です。

お酒と合わせてみると、「わけぎ」の甘味と辛味,そして「辛子酢味噌」の風味が、「天狗舞」の上品な甘味をより洗練させてゆくように感じられ、それでいてお酒の味わいも「ぬた」の美味しさもしっかりと持続します。

こちらは、「酒の肴」がお酒をより一層美味しくしてくれるような、とても相性の良い組合せでした。

さて、今回呑んだ「天狗舞 純米大吟醸 50 生酒」ですが、これまで私が「天狗舞」に対して持っていた「熟成感のある個性的なお酒」というイメージが、良い意味で大きく覆された「新タイプの天狗舞」でした。

いわゆる「老舗」と呼ばれている蔵元が、こんな風に新商品造りにチャレンジしてくれるのは、新たな日本酒ファンの裾野を広げてゆくことに繋がると思われるので大歓迎ですね。

【無風 純米吟醸 無濾過原酒生】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 玉泉洞酒造(岐阜県,養老郡,養老町高田)
特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒
原料米 兵庫県産「特A地区山田錦」(精米歩合 60%)
酸度 1.4 アミノ酸度 ? 酵母 協会9号系酵母
日本酒度 +3 アルコール度 16.5
酒造年度 H23BY
春の味覚と【ムカデの生酒】
 2
月下旬に入ってからようやく寒さが緩み始め、「春は間近か?」と思ったのも束の間のこと,低気圧が東へ進んだ影響で、月末の29日は東京都心では未明から昼にかけて2cmの積雪となり、厳しい寒さへと逆戻りしてしまいました。
 そんな2月の最終日に選んだお酒は、
 
【無風(むかで) 純米吟醸 無濾過原酒生】です。

 これは、地元では
泉(れいせん)」という銘柄で知られている岐阜の玉泉洞酒造が、「兵庫県特A地区の山田錦」を60%まで磨き、養老山系の「軟水」を使って醸した純米吟醸の無濾過原酒で、今回の「生酒バージョン」と秋口に出される1回火入れバージョン」の、年に2度しか出荷されない数量限定のお酒です。

 香りは、「ふじリンゴ」を想わせる果実の香りや、「シクラメン」のような花の香りがあり、「派手さの無い、上品かつ穏やかな吟醸香」が感じられます。
 口当りは柔かく、自然で嫌味の無い甘味とキレイな酸,そして丸みのある旨味が、どれも突出することなく穏やかに調和しています。
 含み香は中程度で、後口には滑らかな甘味とまろやかな旨味,さらには適度にキレのある酸が感じられ、そして余韻はそのまま静かにフェードアウトしてゆきます。
 「無濾過生原酒」としてはボリューム感はやや控えめな方で、「程好く飲み応えがあり、三味の調和が優しく取れた飲み飽きのしない味わい」のお酒でした。

 このお酒は、「食中酒」として料理との相性の幅が比較的広いと思われたので、こんな「春を感じさせる味覚」2品用意してみました。 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは【サヨリのお刺身】です。
 「サヨリ」はこの時期が旬となる高級魚で、皮の銀白色の部分を少し残した透明感のある白身のお刺身は、まずは見た目の美しさで愉しませてくれます。

クセの無い上品な味わいながら、淡白そうな外観の印象よりもずっと脂が乗っていて、割としっかりとした旨味も感じられます。
 「無風」と合わせてみると、サヨリの程好い脂をこのお酒の柔らかな味わいが口の中でキレイに流し、そして余韻にはサヨリの旨味と「無風」の穏やかな甘味が残ります。
 料理とお酒が、お互いの良い部分を消すことなく自然に融合してゆくような、なかなか相性の良い組合せでした。
 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【竹の子の土佐煮】です。
 デパ地下の惣菜売り場に「竹の子料理」が並び始めると、ようやく春が近づいて来たという気がしますが、薄口仕立ての「若竹煮」ではこのお酒の味わいにやや負けてしまいそうな気がしたので、今回は「土佐煮」を選んでみました。
 「土佐煮」は、アク抜きをした竹の子をカットしてカツオ節と一緒に煮たものですが、竹の子ならではのシャクシャクとした快い歯応えと僅かな「エグミ」が感じられ、そしてカツオ節の風味が口の中で広がってゆきます。

合わせてみると、カツオ節の持つ旨味と「無風」のまろやかな旨味が面白いくらいにピッタリと同調し、その一方で竹の子独特の「エグミ」を、「無風」の滑らかな甘味が優しく包み込んでくれます。

このお酒の食中酒としての懐の深さを再認識させてくれるような、全く違和感を感じさせない組合せでした。


さて、このお酒のラベルの斬新な「むかで」の絵柄は、戦国時代の武将「武田信玄」の側近集団だった「百足(むかで)衆」が使っていた、「ムカデの旗印」からイメージしてデザインされているそうです。
 確かに見た目のインパクトはかなりありますが、正直言ってあまり日本酒向きの絵柄では無い様にも感じられてしまったのですが、よくよく見るとこのお酒の裏ラベルにはこんな文章が書かれていました。 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
う~ん,これを読むと、ラベルの絵柄が「むかで(無風)」である理由を何となく納得させられてしまいますね

【田中六五 純米生酒】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 白糸酒造(福岡県,糸島市,本)
特定名称ほか 純米 無濾過生原酒
原料米 糸島産「山田錦」(精米歩合 65%?)
酸度 ? アミノ酸度? 酵母 協会9号酵母
日本酒度 +2 アルコール度 16.0
酒造年度 H23BY
田んぼの中の【田中さんのお酒】
 2月第3週目の金曜の夜,上空に流れ込んだ強い寒気の影響で東京では「みぞれ」が降り、そのまま週末の土日にかけて厳しい寒さの2日間が続きました。
 さて今週帰宅後に、WEBサイト上のSAKE SHOPから送られてくるメルマガをチェックしていて、興味を惹かれて取り寄せたお酒がコレ、
 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ 【田中六五 純米生酒】です。

 これは、「山田錦」の産地として知られる福岡県糸島市で、田んぼに囲まれた場所に蔵がある白糸酒造8代目蔵元「田中克典氏」が、糸島産の「一等米 山田錦」を使って醸した純米の無濾過生原酒で、「田んぼの中」の蔵の「田中さん」がお米を65まで磨いて醸したお酒であることから、「田中六五」という駄洒落のようなユニークな名前が付けられています。
 またこの蔵では、日本で唯一「ハネ木搾り」という方法でお酒を搾ることにこだわっており、これは長さ約8m「ハネ木」を支柱にして、そこに石を吊るしてテコの原理で優しく圧力をかけ、2昼夜かけてゆっくりと搾る昔ながらの搾りの技法です。

 香りのトーンは強めで、「王林(黄色りんご)」のような果実の香りや、「和三盆糖」を想わせる和菓子の香りがあり、「ほんのり甘く華やかで、上品な印象の香り」が感じられます。
 口当りは滑らかで、キレイな甘味とスッキリとした酸,そして柔らかな旨味が、バランス良く口に広がります。
 含み香は控えめで、後口には優しい甘味とソフトな旨味が感じられ、最後はスーっと引いてゆきます。
 コクやボリューム感は十分で、「滑らかな飲み口で、雑味の無い優しくまろやかな味わい」のお酒でした。

 このお酒の落ち着きのある味わいを考えて、今回は「やや甘辛」ということを意識しながら、和食の煮物を2品用意してみました。
 まず1品目は、このお酒と同郷の料理
【がめ煮(筑前煮)】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「がめ煮」は福岡を代表する郷土料理の一つで、一口大に切った鶏肉,根菜類,椎茸,里芋,コンニャクetc.を、まず最初に油で炒めてから(この工程が他の煮物との一番の違い)、出し汁,酒,醤油,砂糖,味醂で柔らかくなるまで煮たもので、九州以外の地域では「筑前煮」と呼ばれています。
 「田中六五」と合わせてみると、「がめ煮」の程好く甘辛い味わいと、このお酒のまろやかで雑味のない味わいが、それぞれ相手に対して上手にならずにごく自然に寄り添ってゆきます。
 僅かなアクを感じさせる根菜類の風味との相性も良く、お酒と料理が交互にスイスイと進んでしまうような、とても仲の良い同郷同士の組合せでした。

 そして2品目は
【大はまぐりの生姜煮】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「はまぐり」は2月~4月が旬の時期なのですが、干拓や水質汚染の影響によって日本沿岸地域では激減してしまい、現在日本で「天然物のはまぐり」を採っているのは、有明海,周防灘,伊勢湾etc.に限られているそうです。

煮汁の味が旨味のある「はまぐり」にしっかりと浸み込んでいて、食べ続けているとしょっぱさを感じる位の濃いめの味付けなのですが、その甘辛味が逆にお酒を誘います。
 すかさず「田中六五」を流し込んでみると、このお酒の優しい甘味で「はまぐりの生姜煮」のしょっぱさが和らいで、両方の味の濃さが丁度良く釣り合い、さらには後口に残る生姜のフレーバーが、「田中六五」の味わいをよりスッキリとした印象へと変化させてくれます。

こちらは料理に「生姜」が加わることによって、日本酒との相性がぐっと良くなるパターンの組合せでした。

 さて、この蔵の若き蔵元が醸す新ブランド「田中六五」は、今シーズンでまだ3期目の造りで仕込みの本数も少ない為、地元の福岡県以外ではまだあまり知られていない存在なのですが、このお酒が來シーズン以降一体どんな風に進化をとげてゆくのか、今からとても楽しみな銘柄の一つですね。