■日本酒と料理の相性を愉しむ…■ -14ページ目

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【大七 純米生もと 寒おろし 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 大七酒造(福島県,二本松市)

特定名称 生もと純米酒 

原料米 「五百万石」(精米歩合60%,扁平精米)

酸度 1.5 アミノ酸度 0.9

日本酒度 +2 アルコール度 15%

酒造年度 H20BY

完熟の味わい【寒おろし】

 2009年もいよいよ残りあと僅かとなり、師走の街はいっそう慌しさが増してきました。

 お店は29日で年内の営業が終了し、今日から年末年始のお休みに入りましたが、色々な出来事があった今年1年間を振り返りつつ呑む一本は、

 【大七 純米生もと 寒おろし】です。

 これは生もと造りで知られる福島の大七酒造が、春先に仕込んで一度「火入れ」した後ひと夏寝かせて秋に出荷する「ひやおろし」より、更に熟成期間を伸ばして12月になってから出荷した純米酒でその為「寒おろし」という名前が付けられています。


 香りは、「生湯葉」のような柔和な穀物類の香りや、「松の実を想わせるナッティな香りがあり、「穏やかで洗練された印象の香り」が感じられます。

 実は微かな熟成香があると予想していたのですが、予想に反して熟成に由来する香りはありませんでした。

 口に含むと、明快でキレのある酸を中心としながら、スッキリとした甘味とキレイな旨味の調和が取れていて、全体が丸みを帯びているような味わいの印象です。

 後口は割としっかりとしていて、コクやボリューム感は程好くあり、「絹のようなスムーズな飲み口で、雑味の少ないキレイでしっとりとした味わい」のお酒でした。
 香りもそうですが、味わいも予想していたよりもずっと軽めで、これはこの蔵のもう一つの特徴である、「扁平精米」(通常よりもお米の雑味の出る部分を多く磨く精米方法)によるものと思われます。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  今回は発酵と熟成をキーワードにした「酒の肴」を2品用意してみましたが、
 まずは【豆腐よう】からです。

 これは11月に沖縄のケラマ諸島に6年ぶりにスキューバダイビングに行った時に、お土産に買ってきたものですが、島豆腐紅麹クース(泡盛の古酒)に長期間漬け込み発酵させ、約1年間熟成させた沖縄の珍味です。

 奈良漬けを想わせる香りで、食感はクリームチーズに近く、練りウニや味を濃厚にした酒粕のようなフレーバーで、もはや元々の原料が豆腐だとは思えません。

 ほんのひとかけらを口に入れて「大七 寒おろし」を呑んでみると、一瞬間をおいてから濃厚な旨味と泡盛のフレーバーがブワッと広がり、「豆腐よう」の強い個性でお酒の個性がやや隠れてしまうような感もありますが、何とも不思議な感覚の美味しさがある組合せです。

 それでもやはりベストマッチの飲み物は、「泡盛の古酒」なのかも知れません。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いてもう1品は
【ナポレオン・ヴュー】です。
 これは、羊乳で造られたフランス産の「ブルビ」タイプのチーズで、「大七 寒おろし」とほぼ同じ期間の10ヶ月間熟成させたものです。

 凝縮されたミルクのような強い香りがありますが、食べてみると思った程にクセはなく、濃厚なコクと旨味と程好い塩味,そして余韻には心地良い甘味が感じられます。

 「大七 寒おろし」と合わせてみると、まずは両方の甘味が口の中で同調し、そこにチーズの塩味がアクセントとなり、最後に舌の上に旨味が長く残ります。

 似たもの同士といった印象で、日本酒とチーズの相性の面白さを改めて感じさせられるマリアージュでした。


 さて、この2つの発酵,熟成食品を肴にしてついグビグビと呑んでしまい、最後の一合になってからハッと思い出して、45℃の上燗にして呑んでみましたが、「冷や」で呑んだ時よりもコクや深みがぐっと増して、味わいにもずっとメリハリが出てきました。

 どうやらこの「寒おろし」は、お燗にすることで本領を発揮してくれるお酒だったようですね…。

【東洋美人 純米吟醸 372

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 澄川酒造場(山口県,萩市)

特定名称 純米吟醸酒(無濾過生詰め)

原料米 萩市大字中小川372番地の「山田錦」(精米歩合50%)

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +5 アルコール度 15.8%

酒造年度 H20BY

【番地シリーズの酒】第3弾!

 12月の「天皇誕生日」はクリスマスが直前に迫っていることもあり、いつも「酒の肴」を買っている新宿のデパ地下の食品売り場が、普段よりもかなり多い買い物客でごった返していました。

 どちらかと言うと人ごみが苦手な方なので、早々に家に引き上げて取って置きの一本を愉しむこととし、今宵我が家の日本酒のストックの中から選んだのが、
 【東洋美人 純米吟醸 372】です。

 これは「東洋美人」の蔵元の澄川氏が、フランスのブルゴーニュ地方の「ブドウ畑の名前別のワイン」を意識して造っている、自分が育った地元の「田んぼの番地別の日本酒」シリーズの第3弾で、今回は「372番地の山田錦」を、50%まで磨き上げて醸した大吟醸規格の純米吟醸酒です。


 香りは、「熟したマスカット」を想わせる高級感のある果実の香りに、「ユーカリオイルのような爽やかさを感じさせる香りが加わって、「甘く華やかな中にも品の良さを感じさせる香り」が感じられます。

 口に含むと、嫌味の無い甘味とシャープな酸,そしてしなやかな旨味のバランスがキレイに取れていて、後口はスッキリと切れます。

 コクやボリューム感は程好くあり、「絹のように滑らかな喉越しで、上品な甘いフレーバーを持つ芳醇な味わい」のお酒でした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  今回はチョッピリいたずら心を持って、優しいテイストの料理と、個性の強い珍味の両方を、このお酒にぶつけてみました。

 まず優しい方テイストの方は、
【蕪の蟹あんかけ】です。

 とろける位に柔らかく炊いたに、旨味のある「蟹あん」がタップリとかかっていて、蕪特有の根菜類の穏やかなフレーバーとほんのり甘い味わいが口に広がります。

 ここに上品な甘味のある「327」が加わると、お酒と料理がどちらも出しゃばることなくすんなりとマッチして、最後にはスッキリとした余韻が残り、こちらはの組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いてはガラリと変わって強い個性を持つ、

 【鱈のチャンジャ】です。
 チャンジャは韓国料理の珍味で、塩漬けにした鱈の胃袋を熟成させ、キムチ風の「ヤンニョン」に漬け込んだものです。

 口に入れるとまずは唐辛子とニンニクの風味が強く舌を刺激して、その後からごま油のフレーバーが広がります。

 コリコリとした食感を楽しみながら噛み締めていると、ジワジワと旨味が浸みだして来て、ちょっとクセになりそうな味わいです。

 「372」と合わせてみると、唐辛子の辛さとお酒のフルーティーな味わいが、口の中でやや平行線を辿ってしまい、両方がバラバラになってしまうような印象で、残念ながらこちらは▲の組合せでした。
 やはり、やや甘味のあるソジュ(韓国焼酎)etc.と合わせるのが良いのかもしれません。

 話は変わりますが、一番上のラベルの画像を見ると判るように、この「東洋美人372」のラベルデザインは、
おおよそ日本酒のラベルとは思えない斬新なものですが、これは何と「稲刈りが終わった田んぼ」をイメージしているそうです。

 そう言われてもう一度良く見直してみると、う~ん,なるほど確かにそう見えますね…。

【〆張鶴 しぼりたて生原酒

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 宮尾酒造(新潟県,村上市)

特定名称 吟醸 しぼりたて生原酒

原料米 新潟県産「五百万石」(精米歩合60%)

       新潟県産「雪の精」(精米歩合60%)

酸度 1.2 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 20%

酒造年度 H21BY

【賞味期限1ヶ月?】の酒

 12月も既に中旬に入り、日本列島では冬型の気圧配置が強まって、いよいよ寒さが厳しくなってきました。

 この時期になると、各地の酒蔵から次々と寒造りの新酒が出荷されてきますが、新宿のデパートの日本酒売り場に並んでいた様々な新酒の中から、気になって手に取った一本がコレ、

 【〆張鶴 しぼりたて生原酒】です。

 これは新潟の宮尾酒造が、しぼりたての新酒を火入れも割り水もせずにそのまま瓶詰めした生原酒なのですが、実は売り場でこのお酒が気になった理由は、裏ラベルに太字で「製造年月日より1ヶ月間を賞味期限としてお勧めいたします。」と明記されていたからです。

 このことについてはまた後で述べるとして、まずは味わってみました。


 香りは「花梨」のような果実の香りや、「シナモンパウダーを想わせる甘い香りがあり、そこにフレッシュな香草類の香りも加わって、「フルーティー&フレッシュで甘美な香りが感じられます。

 口に含むとトロリとした口当りで、やや濃密な甘味と程好くキレのある酸、そしてタップリとした旨味が組合わさって、ダイナミックな印象の飲み口が広がります。

 余韻は長めで、後口にはアルコールのボリューム感がしっかりと残り、まるで「完熟した果実の甘い果汁に、アルコールを加えたような濃醇な味わい」のお酒でした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは、「しぼりたて新酒」のはつらつとした香味に
合わせて、
 【リコッタ・フレスカ】を合わせてみました。

 これはチーズを造る時に出るホエー(乳清)という水分に、ミルクを加えて再び煮詰めて造られる、南イタリア産のフレッシュタイプのホエーチーズで、見た目はまるで「汲み上げ豆腐」のようです。

 食感はややザラリとしていて、味わいは豆腐を微かに甘くしたような、ほんのりミルキーでプレーンな味わいです。

 通常はチーズケーキの材料にしたり、ハチミツをかけてデザートとして愉しむようですが、「〆張鶴ソース?」と一緒に味わってみると、そのままではやや物足りない味わいだった「リコッタ」が、お酒の濃密な甘味によって甘いチーズデザートに変化し、そして口の中でサッと溶けてゆきます。

 ちょっと不思議な感覚ですが、これはこれで面白い組合せだと思います。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  
もう一品は、デパ地下の洋惣菜売り場で衝動買いした

【魚介とポテトのアボガドサラダ】です。
 これは海老と帆立とじゃが芋を、ペースト状にしたアボガドとマヨネーズで和えたもので、サラダと言うよりはアンティパストのような料理ですが、口当りはややねっとりとしていますが、思ったよりは軽めの味わいです。

 「〆張鶴」と合わせてみると、アボガド特有のフレーバーとお酒の酸,じゃが芋の甘味とお酒の甘味,そして帆立と海老の旨味とお酒の旨味がそれぞれ同調して、お酒と料理の両方が、互いにスッと寄り添っていくようなイ、そんなメージの組合せでした。

 さて話は冒頭の件に戻りますが、日本酒のラベルに記載されている「製造年月日」というのは、他の食品とは違って、火入れしたお酒では一定期間のタンク貯蔵後に「蔵で瓶詰めされた日」,そして瓶貯蔵の生酒タイプでは「蔵から出荷された日」を示していて、特に「賞味期限」は示されていません

 つまり今回の「〆張鶴」のように、ラベルにお勧めの賞味期限を明記するのはチョット異例のことなのですが、「生酒タイプの日本酒」を、消費者が購入した後で本当に美味しく呑んでもらう為には、従来の「要冷蔵庫保存」と共に「蔵元お勧めの賞味期限」をラベルに示すことも、今後は検討すべきだとは思いませんか?

【黒龍 本醸造 垂れ口 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 黒龍酒造(福井県,高知市)

特定名称 本醸造しぼりたて生原酒 

原料米 福井県産「五百万石」(精米歩合65%)

酸度 1.6 アミノ酸度 ?

日本酒度 -6 アルコール度 18%

酒造年度 H21BY

初冬の旬!【垂れ口新酒】

 師走に入って、お店でも忘年会の問い合わせのTELが急増し、何となく世間全体が慌しい雰囲気になってきました。

 さて、毎年この初冬の時期になると、数量限定で出荷される季節の風物詩的なお酒があるのですが、今年も早速購入して味わってみることとしました。
 その名も【黒龍 本醸造 垂れ口】です。

 これは福井の黒龍酒造が、その年の冬の一番目の仕込みとして出荷する本醸造酒で、発酵が終わったモロミを粗く搾り、その後静かに清澄させ上澄みだけを瓶詰めした「しぼりたて生原酒」で、この蔵元が醸すお酒の中では、唯一日本酒度の数字がマイナス(甘口表示)となっています。


 瓶の底にはうっすらとが積もっていて、瓶を振るとまるで粉雪が舞い上がるように霞がかってきます。

 香りは「洋梨のコンポート」を想わせる甘いフルーツデザートの香りや、「皮が黒くなる位に熟したバナナのような良く熟した果実の香りがあり、「甘く華やかで、フルーティーかつ芳醇な香りが広がります。

 口に含むと、とろりとした甘味と程好くキレの良い酸,そして芳醇な旨味が、それぞれ互いにぶつかり合いながら、口の中で一つになってゆきます。

 後口は力強く、舌の上にアルコールのピリピリ感が残り、余韻には僅かに苦味も感じられます。

 コクやボリューム感は十分で、「荒々しさの残る弾けるような飲み口で、米本来の艶やかな甘さがある濃醇かつジューシーな味わい」のお酒でした。


 この「垂れ口」を冷やして呑むとお酒単体でグイグイと呑めてしまい、料理は特に必要ないようにも思われましたが、濃密な甘味に対して塩辛系の「酒の肴」を持ってきてみました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは【まぐろの酒盗】からです。

 酒盗と言えば、一般的には「カツオの酒盗」が有名ですが、これはまぐろの胃と腸だけを長期塩漬け熟成させたもので、カツオの酒盗より若干味わいがマイルドなのが特徴です。

 実はお店でも、プレーンのクリームチーズに酒盗を乗せた「まぐろの酒盗とクリームチーズ」というメニューを珍味として出しています。

 酒盗だけ食べるとやや顔をしかめる程の塩辛さですが、そこに「垂れ口」の艶やかな甘味が加わると、塩辛さが口の中であっという間に大人しい味わいへと変わり、お酒と溶け合ってゆきます。

 なるほど、「酒を盗む」という名前に相応しい組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■

 続いては、【甘塩の筋子(紅子)】です。
 これは、紅鮭の身から取り出したままの卵を塩漬けにしたものですが、この筋子の筋膜を取ってバラバラに加工したものが、いわゆる「イクラ」と呼ばれるものです。

 独特のやや生臭さい血のフレーバーと塩辛い味わいで、思わず白いご飯が欲しくなってしまいますが、ご飯の代わりに「垂れ口」を合わせると、こちらも筋子の塩辛さががマイルドな味へと変化して、後からじんわりと旨味がにじみ出てきます。

 個性の強いもの同士が出会って、別の美味しさが生まれてくるような組合せで、この2種類の珍味を肴にして呑んでいるうちに、気が付くと4合瓶が一本空になっていました。


 ちなみに、このお酒の名前の由来ですが、酒蔵では発酵が終わったモロミを酒袋に入れて、「槽(ふね)」と呼ばれる木槽に積み重ねて圧搾するのですが、その「槽の搾り口」から滴り落ちてくる新酒と同じような状態のお酒であることから、「垂れ口」と付けられたそうです。

 なかなか素敵な名付けだと思いますが、これからますます日本酒の需要を拡大させてゆく為には、ネーミングという要素も大切になってくるのかも知れませんね。

【鶴齢 純米吟醸 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 青木酒造(新潟県,南魚沼市)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 南魚沼産「越淡麗」(精米歩合55%)

酸度 1.4 アミノ酸度 ?

日本酒度 +0.5 アルコール度 15%-16%

酒造年度 H20BY

【新潟の名工】杜氏が醸す酒

 11月も終わりとなり、今年もいよいよカレンダーが残り1枚となってしまいました。

 さて先日WEBサイト上のお気に入りのSAKE SHOPの商品をチェックしていて、何となく呑んでみたくなって購入したお酒がコレ、

 【鶴齢 純米吟醸】です。

 これは、本年度新たに「新潟の名工」に認定された青木酒造新保杜氏が、新潟県が開発した酒造好適米である、「越淡麗」を使って醸した純米吟醸酒なのですが、09年11月発表の関東信越国税局の鑑評会の「燗酒部門」において、優秀賞を受賞しているお酒だそうです。(ラベルには特に何も謳っていませんが


 香りはやや控えめで、「ライチ」「ラベンダー」のような果実や花のほのかな香りに、「マドレーヌを想わせる洋菓子の香りが組合わさって、ほんのり華やかで甘く、穏やかさを感じさせる香り」といった印象です。

 口に含んでみると、優しい甘味と程好い強さの酸,そして丸みを帯びた旨味の調和が柔かく取れていて、そして後口は割りとしっかりしており、余韻には心地良い酸と旨味が感じられます。

 コクやボリューム感も程好くあり、「ソフトで膨らみのある飲み口で、安心させられるような味わい」の旨口酒でした。

 今回は酒の肴として、旨味と甘味が豊かな海の幸を2品用意,

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは【蒸しタラバ蟹】からです。

 これは蟹をボイルではなく加熱水蒸気を使って蒸したものですが、その為にタラバ蟹の濃厚な旨味が身の中にタップリと残っていて、「かに酢」をつけなくても十分に美味しく食べられます。

 蟹を頬張ったところでお酒を流し込むと、「タラバ蟹」の凝縮された旨味が、「鶴齢」の優しく膨らみのある味わいの上にうまく乗っかって、口の中で美味しさがいつまでも持続してゆくような、そんな組合せでした。

 一応「かに酢」と「鶴齢」との相性も試してみましたが、こちらは両方の味がやや平行線を辿ってしまうような印象を受け、今ひとつでした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いて2品目の海の幸は、

 【ぼたん海老の刺身】です。

 今回購入したのはカナダ産のぼたん海老でしたが、プリプリとした歯応えで、わさび醤油につけて食べると、海老特有の甘味と旨味が口いっぱいに広がります。

 そこにすかさず「鶴齢」を合せると、お酒と海老の両方の甘味と旨味が口の中で一つになって、心地良く溶け合ってゆきます。

 そして、海老の頭に残った緑色のミソとお酒の相性も、これまた◎の組合せでした。


 さて新潟の地酒と言うと、一般的には「淡麗辛口」というイメージがあり、また「越淡麗」というネーミングからしても、この酒造好適米が元々は、淡麗辛口な酒質を目指して開発されたものではないかと推測されますが、「新潟の名工」の杜氏が醸すと、「鶴齢 純米吟醸」のような「旨辛口」のお酒になるんですねえ~。

【真澄 吟醸あらばしり

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 宮坂醸造(長野県,諏訪市)

特定名称 吟醸原酒 生酒 

原料米 長野県産「美山錦」(精米歩合55%)

       長野県産「ひとごこち」(精米歩合55%)

酸度 1.6 アミノ酸度 0.8

日本酒度 -2 アルコール度 18%

酒造年度 H21BY

【冬のおとりよせ】の酒と肴

 11月も第3週に入って夜になると冷え込む日が多くなり、それと共にお店でも、お客様からの鍋料理の注文がだいぶ目立つようになってきました。

 話は変わりますが、「真澄」の蔵元である長野の宮坂醸造から、「冬のおとりよせ」というタイトルの小冊子が先日送られてきたのですが、その中で紹介されていた「信州の酒と肴のセット」を見て、思わず「おとりよせ」してしまいました。

 その「おとりよせ」のお酒が【真澄 吟醸あらばしり】です。

 このお酒は、毎年11月下旬から出荷が始まる新酒の「しぼりたて」で、信州産の新米を真澄の蔵オリジナルの「七号酵母」で醸し、ろ過,火入れ,割り水をせずに瓶詰めした生原酒です。


 香りのトーンはやや強く、「豊水梨」のような甘く熟した果実の香りや、「シクラメンを想わせる花の香りがあり、甘く華やかで、フレッシュ&フルーティーな香り」といった印象です。

 口に含むと、艶のある甘味と鮮やかな酸,そして透明感のある旨味が口に広がり、後口には力強さとキレの良さが感じられます。

 まるでアルコール入りのジューシーな果汁を飲んでいるようなイメージで、「躍動感のある飲み口で、鮮烈かつ芳醇な味わい」の新酒でした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 そして信州の「おとりよせセット」の酒の肴の一品目は、

 【野沢菜漬け】です。

 これは長野の「松尾商店」が、八ヶ岳連峰の麓の地下水を使って、伝統的な二度漬け製法で漬け込んだこだわりの野沢菜漬けで、シャキシャキとした歯応えとあっさりとした味わいが特徴です。

 お酒と合わせると、野沢菜の程好い塩味と「真澄」の艶やかな甘味が口の中でうまくバランスが取れ、そして後口には瑞々しさが感じられるような、なかなか相性の良い組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いて「おとりよせセット」の酒の肴の二品目は、

 【くるみ味噌】です。
 これは真澄の蔵元が、自社の味噌蔵で信州産の大豆とお米で造った味噌に「くるみ」を加えたもので、今回は豆腐の上にトッピングして「変り冷奴風」にしてみました。

 お酒と一緒に味わってみると、くるみ味噌の甘辛味と豆腐のクリーミーな旨味,そして「真澄」の芳醇な味わいが、マイルドに調和して口の中で滑らかに溶けてゆきます。

 「う~ん旨い…」とつぶやきながら、お酒がグイグイとすすんでしまうような、そんな素敵な取り合わせでした。


 ちなみに今回の「おとりよせセット」には、「蔵元からのお願い」という一文が添えられていたのですが、その中で「このお酒はお燗はご容赦願います」ということがハッキリと述べられていて、蔵元側の「このお酒を本当に美味しく呑んで欲しい」とういう気持ちの強さが、ひしひしと伝わってくるような気がしました。

【神亀 純米酒 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 神亀酒造(埼玉県,蓮田市)

特定名称 純米酒 

原料米 「山田錦」「五百万石」「美山錦」(精米歩合60%)

酸度 1.6 アミノ酸度 ?

日本酒度 +6 アルコール度 15.5%

酒造年度 H19BY

【全量純米酒宣言】の蔵の酒

 11月も半ばを過ぎて、街角ではクリスマスイルミネーションの点灯が始まり、季節が秋から冬へと変わってゆく様子が、こんな所からも感じられます。

 この時期は、どうしてもお燗で呑みたくなるお酒に手が伸びてしまいますが、今週末の一本は、

 【神亀 純米酒】です。

 この神亀酒造は、22年前に日本で最初に「全てのお酒を純米酒にする」という宣言をした蔵元で、秩父山系の伏流水を使い、有機栽培の酒米にこだわって酒造りを行っています。
 またこの純米酒は、2年間蔵で寝かせたものなのですが、「熟成させてから出荷する」ということにもこだわりを持っているのが、この蔵元のもう一つの特徴となっています。


 香りは、「稲藁」のような木質の香りに、「クローブ(丁子)のようなスパイス類の香りや「カラメル」を想わせる香りが組合わさって、「熟成に由来するやや複雑な香り」があります。

 まずは常温で呑んでみると、厚みのある酸がやや前面に出てくる感がありますが、大人しい甘味と穏やかな旨味とのバランスはそれなりに取れていて、キレの良い後口と辛口の余韻が感じられます。

 続いて「ぬる燗」にして呑んでみると、味わいにまとまりが出てきつつ、しっかりとした酸とピリリとした後口はちゃんと残ります。

 全体的には、「酸を中心とした骨格のしっかりした味わい」の辛口酒でした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  さて料理ですが、このお酒の紹興酒に似たフレーバーを意識して、

 中華惣菜の【酢 豚】から試してみました。

 今回食べたのはパイナップルの入っていないタイプの酢豚で、やや口をすぼめるくらいに甘酢の味が効いたものでしたが、「神亀」と合わせてみると、このお酒の個性的でしっかりとした味わいが酢豚の味をやや消してしまい、余韻には微かな苦味も感じられます。

 決して合わない訳ではないのですが、同じ中華でも「牛肉のオイスターソース炒め」のような、もう少し味が濃い料理のほうが、このお酒とはより相性が良いように思われました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  それならばと、次は熟成つながりから、

 【ル・ブラン】を試してみました。
 これはフランスのブルゴーニュ地方の六角形のチーズなのですが、ウォッシュタイプとしては匂いは穏やかで、皮にはやや弾力がありますが中身はクリーミーで、口の中ですぐに溶けてゆきます。

 味わいも、塩味が控えめでクセが無くマイルドで、良くも悪くもウォッシュぽくないチーズでした。

 このチーズの味わいから予想はしていたものの、「神亀」の複雑性のある味わいの方が、チーズに勝ってしまうような印■【利き酒師世界一】のひとり言■ 象の組合せで、これまた合わないということはないのですが、同じウォッシュタイプチーズの「エポワス」(強烈なフレーバーと濃厚な味!)の方が、このフルボディの日本酒とはより美味しいマリアージュを見せてくれるように思われました。


 そんなわけで、今回は利酒師としてはチョット反省すべき組合せを選んでしまいましたが、この「神亀 純米酒」が、それだけ強い個性を持ったお酒だと言うことなのかもしれません。

 蔵元いわく、「35歳以上で人生の機微のわかる方にオススメのお酒」なのだそうです…。

【獅子の里 玉苗 純米吟醸 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 松浦酒造(石川県,加賀市)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 山形県産「玉苗」(精米歩合60%)

酸度 1.6 アミノ酸度 0.5

日本酒度 +5 アルコール度 15%

酒造年度 H20BY

【扁平精米の「玉苗」】を味わう

 11月の第1週にいきなり冬のような寒さがやって来て、このまま冬になってしまうのかと思われましたが、第2週には寒さが緩んで再び秋が戻ってきました。

 こんな晩秋の夜に選んだお酒は、

  【獅子の里 玉苗 純米吟醸】です。
 これは石川県の松浦酒造が、新品種の酒造好適米「玉苗」金沢酵母で醸した純米吟醸酒なのですが、原料のお米を「扁平精米」という特別な方法で磨いています。

 通常は、磨かれたお米はだんだん丸い形状になってゆくのですが、この方法で磨くとお米が元来の細長い形状のまま磨かれてゆく為、同じ%の精米歩合でも通常より多くお米を磨いた状態になるのが「扁平精米」の特徴です。


 香りは控えめですが、ほのかに「熟したネーブルのような果実の甘い香りや、「洋菓子のサバランを想わせるややスーとした香りがあり、「ほんのり甘く華やかで清楚な香りといったイメージです。

 口に含むと、旨味はしなやかで控えめなのですが、上品な甘味と鮮やかな酸とのバランスは取れていて、後口にはややドライな印象が残ります。

 ボリューム感がありながら雑味は少なく、「厚みがある飲み口で、キレイで芳醇な味わい」のお酒でした。

 今回はまずはお造りからということで、一品目は

■【利き酒師世界一】のひとり言■  【帆立貝柱のお造り】
です。

 帆立貝柱特有の甘味と旨味のある味わいに「獅子の里」を合わせてみると、お酒が帆立の味わいを口の中でキレイに流してゆき、より上品な味へと変えていってくれます

 チョットした思い付きで、半分は塩コショウをしてからフライパンにバターを敷いて、弱火で軽く火を通してソテーしてみると、帆立の旨味がお造りの時よりもぐっと凝縮し、こちらはお酒と帆立の両方の味わいの個性を残しつつ、それでいて両方が美味しくなるような組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして2品目は地元の食品スーパーで見つけた、

 【プチ・プレジール】というチーズす。

 これは、北海道の十勝平野にある共働学舎のチーズで、見た目はややカマンベールに似ているのですが、食べてみると凝縮されたミルクの旨味に加えて、まるでシェーブルチーズのようなきめ細かな舌触りと爽やかな酸味があり、余韻には微かに日本酒を想わせるフレーバーがあります。

 実はこのチーズを発酵させる時に、日本酒用の酵母を少し加えているらしいのですが、こんな風味のチーズが日本酒と合わないはずも無く、似た者同士の組合せのように両方の味わいがピタリとはまって、まるで2つの味が一つにまとまるような見事なマリアージュでした。


 さて今まで、日本酒とチーズの様々な美味しい組合せを体験してきましたが、チーズの発酵時に日本酒用の酵母を加えるという発想は、さすがにヨーロッパにおけるチーズ造りでは考えつかないと思われ、今後はこの共働学舎の造るチーズに注目して、色々なタイプの日本酒との組合せを試してみたいと思っています。

【常山 両替屋秘蔵 純米吟醸

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 常山酒造(福井県,福井市)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 兵庫県産「山田錦」(精米歩合55%)

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +5 アルコール度 16%-17%

酒造年度 H19BY

燗酒最適?の【秘蔵っ子の酒】

 11月の初日は何と気温25℃の夏日!で、半袖シャツ1枚でも過ごせるような暑さだったのに、その翌々日には一転して寒気が入り込んで、最低気温5℃と一気に冬のような冷え込みとなりました。


 冷え込む夜にはやっぱり「お燗酒」ということで、今宵の一本は

 【常山 両替屋秘蔵 純米吟醸】です。

 蔵元の福井県の常山酒造は江戸時代には両替商を営んでいたそうで、その名残で「両替屋」という屋号が付けられた蔵があります。

 そのひんやりした土蔵の中で、山田錦100%の純米吟醸酒を、瓶詰め後に常温で2年間熟成させたのがこのお酒で、裏ラベルには蔵元の「秘蔵っ子」のお酒であるという言葉と共に、でかでかと「燗酒最適」という文字が記されています。

 香りは、「杉の木樽」を想わせる木質の香りや、かすかに「リコリス(甘草)のようなハーブの香りがありますが、常温熟成に由来するような熟成香は意外な程感じられず、全体としては「かすかに熟成感のある柔和で丸い香りといった印象です。

 「燗酒最適」という蔵元の言葉に逆らって、まずは「冷や」で呑んでみましたが、全体の調和は取れているものの、「常温熟成の割には熟成感が弱く、滑らかでやや物足りなさも感じる位」の味わいでした。

 それではと「ぬる燗」と「上燗」にして呑んでみると、熟成香こそ出てこないものの含み香に「おが屑」のような木質の香りがふわりと出てきて、味わいには「酸が際立ちコクが増してくる」ような印象が感じられます。

 確かに「燗酒最適」のお酒でしたが、ちょっと意地悪な言い方をすると「燗酒にしないとあまり面白味が感じられないタイプ」のお酒でした
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 あったかい燗酒には温かい料理ということで、

 まずは【絹ごし豆腐の揚げ出し】です。

 今回購入してきた揚げ出し豆腐セットのタレには、隠し味として「魚醤」が入っていましたが、「ぬる燗」にして合わせてみると、お酒と料理の温度が口の中で丁度よく交わって、またお燗にすることで際立ったお酒の酸が、揚げ出し豆腐のやや甘辛の味わいによって、穏やかな酸へと変わってゆきます。

 全く違和感の無い美味しい組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして続いての温かい料理は、

【鰯つみれの「のっぺい汁」】です。
 「のっぺい汁」とは、日本各地で見られる郷土料理で、地方により呼び名や内容が若干異なりますが、要は「とろみを付けた具だくさんの汁物」の事を言うようです。

 「上燗」にして合わせてみると、「のっぺい汁」のとろみのあるやや薄口の味わいを、お燗にしてコクの増したお酒の味わいが包み込んでゆくようなイメージで、里芋の甘味とも良く合います。

 そして、こちらはお酒の酸がしっかりと残る組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  話は変わりますが、今回はこの「両替屋秘蔵」の本領を発揮させる為に、60℃のお湯に一合徳利で3分程度浸けて、40℃~45℃前後のお燗酒にして愉しみましたが、実際に自宅で日本酒を湯煎にする際に、お湯やお酒の温度を測る時は、右の写真のような「デジタル芯温計」があると、手軽に手早く(10秒程度)チェック出来てとても便利です,ご参考まで

【貴 特別純米ひやおろし 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 永山本家酒造場(山口県,宇部市)

特定名称 特別純米酒 

原料米 山口県産「山田錦」(精米歩合60%)

酸度 1.6 アミノ酸度 ?

日本酒度 +6 アルコール度 15.8%

酒造年度 H20BY

秋の夜長は【ぬる燗酒】

 10月に入ってから2つ目の台風が接近した影響で、10月下旬の東京は雨の週末となりました。

 ひと雨降るごとに秋の深まりが感じられ、ニュースでも各地の紅葉の様子が伝えられていますが、こんな秋の夜長にはしんみりと「お燗酒」が呑みたくなります

 そんな訳で今宵選んだのは【貴 特別純米ひやおろし】です。

 これは永山本家酒造場の永山貴博杜氏が、「山口県産山田錦」を100%使って「秋に呑みたくなるお酒」をコンセプトにして仕込み、その後ひと夏の熟成を経てからリリースされた「ひやおろし」です。


 香りは、「シクラメン」「黄色りんご」のような花や果実の香りに、「甘酒」を想わせる米麹の甘い香り,さらには菜類の香りが加わって、ほんのり華やかで、穏やかかつ自然な香り」が感じられます。

 口に含むと、滑らかな甘味と輪郭のハッキリとした酸,そして豊かで膨らみのある旨味のバランスが心地よく取れていて、「充実感のある飲み口で、コクとキレのある味わい」のお酒です。

 早速「ぬる燗」にして呑んでみると、明快な酸はしっかりと残りつつ、全体の味わいにまとまりが増して、まるで「体にじんわりと浸み込んでゆくような」呑み心地でした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 このお酒のしっかりとした味わいを意識して、今回は甘辛系の家庭料理を2品用意してみました。

 まず1品目は【サバの味噌煮】です。

 濃いめの味付けの味噌の煮汁を、ふっくらとしたサバの身にタップリと絡ませて食べると、思わず白いご飯が欲しくなってしまいます。

 ご飯の替わりにお酒を流し込んでみると、「貴」のしっかりとした酸はそのまま持続しながら、「サバ味噌」の甘辛の味わいが口の中でマイルドになってゆき、お酒がどんどん進んでしまう取り合わせです。

■【利き酒師世界一】のひとり言■
 そして甘辛系の惣菜と言えば忘れてはならないのが、

 【肉じゃが】です。
 今回デパ地下の惣菜売り場で購入してきたのは、やや甘めのコッテリとした味付けの「肉じゃが」でしたが、「貴」と合わせてみると、じゃが芋のやや強めの甘味が嫌味のない上品な甘味へと変わってゆきます。

 そして豚バラ肉の脂の部分と、お酒のコクのある味わいとの相性もOKで、改めて食中酒としての日本酒における、「酸」の役割の重要性ということを認識させられた組合せでした。


  さて不況が続く中で、世の中ではいわゆる「家呑み」が増えてきているようですが、こんなオーソドックスな家庭料理と美味しい「ひやおろし」の組合せは、「家呑み」のおすすめのスタイルの一つかもしれませんね。