■完熟の味わい【寒おろし】 | ■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【大七 純米生もと 寒おろし 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 大七酒造(福島県,二本松市)

特定名称 生もと純米酒 

原料米 「五百万石」(精米歩合60%,扁平精米)

酸度 1.5 アミノ酸度 0.9

日本酒度 +2 アルコール度 15%

酒造年度 H20BY

完熟の味わい【寒おろし】

 2009年もいよいよ残りあと僅かとなり、師走の街はいっそう慌しさが増してきました。

 お店は29日で年内の営業が終了し、今日から年末年始のお休みに入りましたが、色々な出来事があった今年1年間を振り返りつつ呑む一本は、

 【大七 純米生もと 寒おろし】です。

 これは生もと造りで知られる福島の大七酒造が、春先に仕込んで一度「火入れ」した後ひと夏寝かせて秋に出荷する「ひやおろし」より、更に熟成期間を伸ばして12月になってから出荷した純米酒でその為「寒おろし」という名前が付けられています。


 香りは、「生湯葉」のような柔和な穀物類の香りや、「松の実を想わせるナッティな香りがあり、「穏やかで洗練された印象の香り」が感じられます。

 実は微かな熟成香があると予想していたのですが、予想に反して熟成に由来する香りはありませんでした。

 口に含むと、明快でキレのある酸を中心としながら、スッキリとした甘味とキレイな旨味の調和が取れていて、全体が丸みを帯びているような味わいの印象です。

 後口は割としっかりとしていて、コクやボリューム感は程好くあり、「絹のようなスムーズな飲み口で、雑味の少ないキレイでしっとりとした味わい」のお酒でした。
 香りもそうですが、味わいも予想していたよりもずっと軽めで、これはこの蔵のもう一つの特徴である、「扁平精米」(通常よりもお米の雑味の出る部分を多く磨く精米方法)によるものと思われます。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  今回は発酵と熟成をキーワードにした「酒の肴」を2品用意してみましたが、
 まずは【豆腐よう】からです。

 これは11月に沖縄のケラマ諸島に6年ぶりにスキューバダイビングに行った時に、お土産に買ってきたものですが、島豆腐紅麹クース(泡盛の古酒)に長期間漬け込み発酵させ、約1年間熟成させた沖縄の珍味です。

 奈良漬けを想わせる香りで、食感はクリームチーズに近く、練りウニや味を濃厚にした酒粕のようなフレーバーで、もはや元々の原料が豆腐だとは思えません。

 ほんのひとかけらを口に入れて「大七 寒おろし」を呑んでみると、一瞬間をおいてから濃厚な旨味と泡盛のフレーバーがブワッと広がり、「豆腐よう」の強い個性でお酒の個性がやや隠れてしまうような感もありますが、何とも不思議な感覚の美味しさがある組合せです。

 それでもやはりベストマッチの飲み物は、「泡盛の古酒」なのかも知れません。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いてもう1品は
【ナポレオン・ヴュー】です。
 これは、羊乳で造られたフランス産の「ブルビ」タイプのチーズで、「大七 寒おろし」とほぼ同じ期間の10ヶ月間熟成させたものです。

 凝縮されたミルクのような強い香りがありますが、食べてみると思った程にクセはなく、濃厚なコクと旨味と程好い塩味,そして余韻には心地良い甘味が感じられます。

 「大七 寒おろし」と合わせてみると、まずは両方の甘味が口の中で同調し、そこにチーズの塩味がアクセントとなり、最後に舌の上に旨味が長く残ります。

 似たもの同士といった印象で、日本酒とチーズの相性の面白さを改めて感じさせられるマリアージュでした。


 さて、この2つの発酵,熟成食品を肴にしてついグビグビと呑んでしまい、最後の一合になってからハッと思い出して、45℃の上燗にして呑んでみましたが、「冷や」で呑んだ時よりもコクや深みがぐっと増して、味わいにもずっとメリハリが出てきました。

 どうやらこの「寒おろし」は、お燗にすることで本領を発揮してくれるお酒だったようですね…。