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■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【菊姫 鶴乃里 山廃純米 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 菊姫合資会社(石川県,白山市)

特定名称 山廃純米酒 

原料米 兵庫県吉川町産「山田錦」(精米歩合65%)

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 16%-17%

酒造年度 H20BY

10月限定蔵出しの【菊酒】

 つい先月までは半袖で過ごすことが出来たのに、10月も半ばを過ぎて朝夕はめっきり冷え込むようになり、通勤時にはジャケットが必要となってきました。

 さて毎年この時期になると、どうしても呑みたくなってしまう「10月限定蔵出し」のお酒があるのですが、やはり今年も購入してしまいました。

 それがコレ【菊姫 鶴乃里 山廃純米】です。

 

 このお酒は、ヨーロッパ屈指のワインコンクールである「I..W.C」(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の、07年の「SAKE」部門において、「最優秀賞」を受賞して以来注目を浴びている純米酒で、石川県の「菊姫」の蔵から年に一度10月限定で蔵出しされるのですが、これはその2009年度版(H20BY)ということになります。


 香りは、「大豆」のような柔和な穀物類の香りや、「出し昆布を想わせる旨味を感じさせる香り,更にはほのかに熟成香も加わって、「ふくよかで濃醇な旨味を想わせる香りという印象です。

 口に含むと、穏やかで自然な甘味と豊かに主張する酸が口に広がり、後口には米の旨味がタップリと感じられます。

 しっかりした酸に旨味が乗っていて、「充実感のある飲み口で奥深い味わいの濃醇旨口のお酒」でした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  今回はお酒の濃醇な旨味に合わせて、「旨味」を意識した料理を2品選んでみました。

 まずは【フカひれの煮凝り】です。

 これは「フカひれ」を醤油,酒,生姜etc.で造った煮汁で煮詰め、型に流して冷やしてゼリー状に固めたものですが、体温で「煮凝り」のゼラチン質が溶けてゆくにつれて、口の中に凝縮された旨味が広がってゆきます。

 そのタイミングでお酒を合わせてみると、もちろん全体の相性は悪くないのですが、「鶴乃里」の奥の深い旨味に対して、「煮凝り」のストレートな旨味の方がやや負けてしまっているような気がしました


■【利き酒師世界一】のひとり言■  そしてもう1品は、

【大根の海老そぼろあんかけ】です。
 この惣菜はやや濃いめの味付けで、大根に「海老あん」独特の濃厚な旨味がしっかりと浸み込んでいます

 「鶴乃里」と合わせてみると、両者の旨味の濃さのレベルは丁度良く、またお酒の持つ酸がやや際立って感じられます

 料理とお酒の両方の味わいの個性をしっかりと残しつつ、口の中で2つの旨味が絶妙に調和してゆき、しみじみ「旨い」と想わせる組合せでした。


 ちなみに、この蔵のある石川県白山市は「白山連峰」の麓にあり、その雪解け水が流れる「手取川」の上流には「野生の菊」が群生しているそうです。

 そして、手取川の水は菊の滴を受けた水として「菊水」と言われ、その伏流水を使って醸されるお酒は昔から「加賀の菊酒」と呼ばれていたそうです

 こんな「いわれ」を聞いた後で呑むと、この「菊酒」がよりいっそう美酒に感じられてしまいますね~。

【出羽桜 枯山水 14年熟成 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 出羽桜酒造(山形県,天童市)

特定名称 吟醸古酒 

原料米 「美山錦」「雪化粧」(精米歩合55%)

酸度 1.3 アミノ酸度 ?

日本酒度 +5 アルコール度 18%

酒造年度 H6BY!

【14年熟成の酒】と向き合う

 10月第2週は秋雨前線の停滞により週の初めより雨のスタートとなり、その後水曜の夜に2年ぶりに上陸した台風18号が、そのまま日本列島を縦断して各地に多くの被害をもたらしました。

 さて台風一過の今週末は、久々に古酒をじっくりと呑んでみたくなり、自宅のストックの中から選んだのが、

 【出羽桜 枯山水 14年熟成】です。

 「出羽桜」と言えば、一般的には東北を代表する吟醸酒として知られていますが、このお酒は年間平均5℃の千歳蔵の中で、14年もの歳月をかけて静かに眠り続けた低温熟成古酒なのです。


 香りのトーンは強めで、「干し海老」「プルーン」のような干した食材やドライフルーツの香りに、「スターアニスを想わせる甘苦系のスパイスやナッツ類の香りなどが組合わさって、「ふくよかでやや複雑かつ個性的な香りが広がります。

 口に含むと、練れた甘味と舌に浸み込むような酸,そして深みのある旨味と微かな苦味etc.が、複雑性を保ちつつ熟成により見事に調和しています。

 後口には充実したボリューム感があり、味の余韻は比較的短くてキレが良く、「キレイに枯れた安らかな飲み口で、歳月が感じられる円熟した味わい」の美酒でした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 今回は「枯山水」の独特の香味に負けないように、やや複雑な味わいの料理と個性的なフレーバーを持つ料理を合わせてみました。

 まず1品目は【麻婆豆腐】です。

 ご存知のように、豆板醤の辛さが後を引く定番の四川料理なのですが、「枯山水」と合わせてみると、このお酒の持つスパイス系のフレーバーが、「麻婆豆腐」の山椒や胡椒のフレーバーとうまく同調してゆきます。

 お酒と料理の両方の個性的な味わいが、お互いに寄り添ってゆくようなイメージで、なかなか面白い組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして2品目は

【骨付きラムロースのソテー】です。
 肉を購入した時に付いていた「ハーブソルト」をまぶし、ソテーしてお酒と合わせてみると、ラムの脂を「枯山水」がキレイに流してくれて、肉の味わいがより上品に感じられます

 そしてラム特有の香りと、古酒の熟成フレーバーとのハーモニーも申し分無く、2つの個性が出会ったことによって別の美味しさが生まれてくるような、そんな印象の組合せでした。


 さてこの「枯山水」という長期熟成古酒,確かに料理との個性的な相性を愉しむのも良いのですが、本来は14年という長い年月と向き合いながらじっくりと呑むお酒のような気がします。
 もしかしたらこのお酒を愉しむ時には、料理は何も要らないのかもしれませんね…。

【澤乃井 純米ひやおろし
■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…

蔵元 小澤酒造㈱(東京都,青梅市)

特定名称 純米酒(ひやおろし)

原料米 岡山県産「アケボノ」(精米歩合65%)

酸度 1.8 アミノ酸度 1.2

日本酒度 ±0 アルコール度 15.5%

酒造年度 H20BY

【奥多摩の秋酒】を愉しむ…

 10月に入ったとは言え、東京では日中の気温がまだ25℃近くに達する日が続き、それに加えて第1週の金土は2日間とも雨模様となった為、やや蒸し暑い週末となりました。

 さて先月の末に、「ぐるなび」主催の日本酒セミナーに参加し、その時に試飲した「ひやおろし」の中で、気に入った一本を後日購入しておいたのですが、

 それがコレ【澤乃井 純米ひやおろし】です。

 これは東京の青梅の小澤酒造が、秋口までじっくりと熟成させてから出荷した「純米のひやおろし」なのですが、上の画像のように奥多摩渓谷の秋の風情が感じられるラベルが貼られていて、呑む前にまずは目で愉しむことができます。 


 香りは、昔小学校の給食で食べた「玄米パン」を思い出させる穀物類の香りや、「豆乳のような香りがあり、「ふくよかで心が落ち着くような香り」といった印象です。

 口に含むと、穏やかな甘味としっかりとした酸,そして丸みを帯びた旨味が広がり、余韻には僅かに苦味も感じられます

 後口は酸と旨味が滑らかに消えてゆくようなイメージで、全体的には甘味,酸,旨味がひと夏の熟成により心地良く調和していて、「お米の旨味が感じれらる丸く柔らかな味わい」の旨酒でした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒は、料理との相性が幅広いと思われる食中酒なのですが、まずは和惣菜の

 【鶏肉の治部煮】と共に味わってみました。

 「治部煮」と言えば金沢の代表的な郷土料理である「鴨の治部煮」が有名ですが、これはそれを鶏肉を使って手軽に造ったバージョンで、鶏肉に片栗粉をまぶして煮ることによって、煮汁の味を肉にしっかりと乗せることができるのが特徴です。

 お酒と合わせてみると、「治部煮」のとろみのあるやや甘口の味わいが「澤乃井」のを引き立て、そして口の中で両方の味わいがゆっくりと調和してゆくような印象で、「純米のひやおろし」と「和の煮物」は、予想通りハズレの無い定番の美味しい組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては少し冒険して、自宅のチーズのストックの中から、

 【マロワール】を試してみました。
 これはフランス産のウォッシュチーズで、表皮はやや固くベトベトした赤茶色で、「古漬け」のような独特の匂いがあります。

 口当りは少し弾力のある蒲鉾のようで食感はムッチリとしていて、程良い塩味の後で旨味とコクが感じられる味わいですが、ウォッシュタイプとしてはあまり個性が強くないように感じられました。

 「澤乃井」と一緒に味わってみると、もともと大人しめの「マロワール」の味わいがよりニュートラルになってしまい、これを「良し」とするかどうかは意見の分かれる所だと思いますが、違和感は特に無いという点から考えて、一応はの組合せにしておきました。


 ちなみにこの「マロワール」は、フランスでもティラシエ地方というベルギー国境に近い地域で造られているのチーズなので、もしかしたら日本酒よりも「ベルギービール」の方が相性が良いのかもしれませんね?!

【ボーテ オリヤンタール 437

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 澄川酒造場(山口県,萩市)

特定名称 純米吟醸酒(無濾過生詰め) 

原料米 「萩市大字中小川437番地の山田錦」

       (精米歩合50%)

酸度 1.5 アミノ酸度 1.2

日本酒度 +5.0 アルコール度 15.8%

酒造年度 H20BY

テロワール【437番地の酒】

 9月も最終の日曜となり、いつの間にか今年も既に3/4が過ぎようとしています。

 さて週の半ばに、いつものように帰宅後にWEBサイト上のSAKE SHOPのメルマガをチェックしていて、とても興味深いお酒を見付けたので直ぐにクリックして購入し、週末の夜にじっくりと味わってみることとしました。

 その名も【ボーテ オリヤンタール 437】です。

 これは山口の澄川酒造場が、地元の「437番地の田んぼの山田錦」を100%使って醸した純米吟醸酒で、ブルゴーニュワインのように「テロワール」を強く意識しています。

 「テロワール」を日本語で表現するのは少し難しいのですが、ワイン用語では「特定のブドウ畑の微小気候や土壌や地形及び風土etc.の複合的個性」という意味で、今回の場合は、原料米である「437番地の田んぼの山田錦」のテロワールを反映させたお酒ということになります。(ちなみに「ボーテ オリヤンタール」とはフランス語で「東洋美人」という意味です)


 香りは、「マスカット」を想わせる上品な果実の香りに、「皮をむいた直後の大根のような菜類の香りが加わって、ほんのりフルーティーで穏やかかつ繊細な香り」が感じられます。

 口に含むと、控えめでキレイな甘味の後でやや刺激のある豊かな酸が口一杯に広がり、そしてきめ細かくて滑らかな旨味が続きます。

 コクやボリューム感は程好くあり、後口のジューシーかつキレのある酸が、余韻をスパッと切ってくれます。

 全体的な印象としては、「躍動感と刺激のある飲み口で、果実味のある白ワインを呑んでいるような芳醇な味わいのお酒でした。

 今回は、チョットこだわって珍味系の「酒の肴」を二品用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■

 まず一品目は【鯖のへしこの刺身】です。

 これは南青山の福井県のアンテナショップで購入したもので、「鯖のへしこ」とは鯖を塩漬けにし、それを米ぬかに漬けて1年間しっかりと熟成させた越前若狭地方の郷土料理なのですが、今回は米ぬかを洗って薄くスライスし、それを真空パックした「刺身タイプのへしこ」を買ってきました。


 味わってみると、やや強めの塩味と個性的な熟成フレーバーがあり、思わず「炊き立てのご飯」が欲しくなってきますが、そこに「437」を流し込むと、お酒の程好い甘味や旨味と「へしこ」の塩味が口の中で調和して溶けてゆき、酒と肴の両方がより一層美味しくなるような組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いての酒の肴は、【牡蠣の山椒煮】です。

 これは牡蠣を山椒の実と一緒にふっくらと煮含めたものですが、山椒の独特のフレーバー効いていて、牡蠣にもやや甘辛い味がしっかりと浸み込んでいます。

 「437」と合わせてみると、両者の味わいの濃さのレベルが丁度良く釣り合い、そして牡蠣の旨味とお酒の旨味の二つの旨味が絡まりあって、最後に余韻にもう一度口の中で山椒の香味がフワッと広がります。
 こちらもなかなかに美味しい酒と肴の組合せでした。


 それにしてもこの「東洋美人437」というお酒,利酒師の集まりの際に表ラベルだけを見せながらワイングラスに入れて飲ませたら、もしかしたら何人かは「白ワイン」と間違えてしまうのではないかと思われるような香りと味わいなので、機会があれば是非一度いたずらで試してみたいと思っています。

【真澄 山廃造り 純米吟醸 二夏越し 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 宮坂醸造(長野県,諏訪市)

特定名称 山廃造り 純米吟醸酒 

原料米 長野県産「美山錦」(精米歩合55%)

       長野県産「ひとごこち」(精米歩合50%)

酸度 1.7 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +2 アルコール度 15%

酒造年度 H19BY

シルバーWは【二夏越しの酒】

 今年の9月は祝日の並びの関係で、第3週の週末から「シルバーウィーク」と呼ばれる大型連休となり、オフィスビル内にある当店も、日祝が店休日の為に4連休となりました。

 休日中の「酒の肴」を仕入れる為に近所の食品スーパーに出かけたところ、毎年この時期になると購入しているお酒を見付けたので、早速買い込んできて呑んでみました。

 それがコレ【真澄 山廃造り 純米吟醸 二夏越し】です。

 これは長野の宮坂醸造が、昔ながらの「山廃造り」でゆっくりと仕込み、その後二夏の間じっくりと寝かせて熟成させたお酒なのですが、毎年9月の中旬過ぎになると、その年の「二夏越し」として出荷されて店頭に並べられます。

 香りは、まず最初に「熟した甘い梨」を想わせる果実の香りがほんのりとあり、続いて「豆乳」のような丸く柔和な香り、さらには微かに「干し海老」のような熟成香が組み合わさって、全体的にはやや複雑ながら癒されるような香り」が広がります。

 口に含むと、しっかりとした酸が明快に主張しながらも、穏やかな甘味と丸みのある旨味との調和は熟成によってちゃんと取れています。

 コクやボリューム感も程よくあり、「滑らかかつ柔らかな飲み口で、個性的な酸によるキレが感じられる味わい」のお酒でした。

 このお酒は酸に特徴があるので、お酒単体でもグイグイ呑めてしまうのですが、酸に負けないやや濃いめの味の「酒の肴」ということで、
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 まずは
 【真鯵のなめろう】からです。

 これは房総地方の郷土料理で、鰺をおろしてから味噌や葱,生姜etc.と一緒に叩いたものですが、今回の「なめろう」には隠し味として「酒粕」が加えられていました。(ちなみにこれを焼いた物は「さんが焼き」と呼ばれています)
 「なめろう」だけではややしょっぱさを感じる位の濃い味わいでしたが、そこにお酒を流し込むと口の中で味わいが柔かく溶けてゆき、そして余韻には「真澄」のと鯵の旨味の両方がちゃんと残ります。

 「なめろう」を酒の肴にしながら、お酒がどんどん進んでしまうような美味しい組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして酸に個性のある山廃純米酒には、個人的にはシェーブルチーズを合わせるのが好きなのですが、今回選んだのは

【クロタン・ド・シャビニョール】です。

 これは小さなおにぎり形の山羊乳チーズで、熟成が進むと水分が抜けて硬くなり表面にカビが生えて黒っぽくなるので、その様子から通称「クロタン=山羊の糞!」などとも呼ばれ
ています。

 今回は、敢えて熟成させてない表皮が白いタイプのものを選んだのですが、食感はややホックリしていて、シェーブル特有の口をすぼめる位の酸味が口に広がります。
 お酒と合わせてみると、「真澄」の山廃造り特有のキレのある酸と「クロタン」の爽やかな酸の2つの種類の酸が見事に絡まり合って、余韻にはチーズの旨味もじんわりと出てきます。

■【利き酒師世界一】のひとり言■ やはり酸のしっかりとした純米酒には、あまり熟成させないタイプのシェーブルチーズが良く合うようです。


 ちなみに、この「真澄 二夏越し」を湯煎で「ぬる燗」に仕上げると、個性的な酸をしっかりキープしつつ、全体がより円やかに調和して味の膨らみも増してくるのですが、この温度帯の時には一体どんなチーズが合うのか、それはまた次回の愉しみに取って置きたいと思います。

【酔鯨 純米吟醸 秋あがり

■【利き酒師世界一】のひとり言■ このお酒のデータは…
蔵元 酔鯨酒造(高知県,高知市)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 愛媛県産「松山三井」(精米歩合50%)

酸度 1.6 アミノ酸度 1.15

日本酒度 +6.5 アルコール度 16%-17%

酒造年度 H20BY

氷温熟成の【秋あがり】

 9月も第2週となり、深夜に仕事帰りに駅から自宅まで自転車を走らせていると、やや涼しさも感じられるようになってきました。

 さて、週末に久々に新宿のデパートの日本酒売り場を覗いてみると、「ひやおろし特集」のコーナーが設けられていて、しかもほぼ全品が試飲ができるようになっていました。

 早速何種類か試飲させてもらい、その中で購入してきた一本が、

【酔鯨 純米吟醸 秋あがり】です。

 これは高知の酔鯨酒造が、春先に仕込んだ純米吟醸酒を一度「火入れ」して、それからひと夏の間「0℃の氷温」貯蔵で熟成させ、秋になってから数量限定で出荷した、いわゆる「ひやおろしタイプ」のお酒です。


 香りは、「巨峰」のような甘く熟した果実香があくまで穏やかに香り、そこに「お祭り屋台の綿飴のような甘く穏やかな香りが加わって、ほんのり甘く落ち着きのある香り」が感じられます。

 口に含むと、まずはシャープな酸がしっかりと感じられ、そして滑らかな甘味と柔らかな旨味との調和が、熟成によってキレイに取れてきています。

 コクやボリューム感も十分にあり、「のど越し滑らかな飲み口ながら、酸がしっかりしたメリハリのある味わい」の辛口酒でした。■【利き酒師世界一】のひとり言■

 秋の酒の肴には、まずは秋の味覚の代表格である

【秋刀魚の塩焼き】からです。

 今回食べたのは、北海道根室沖で獲れた「歯舞さんま」というブランド物?!でしたが、「秋あがり」のしっかりとした酸が秋刀魚の脂を程好く流し、そしてややシンプルな秋刀魚の味わいにお酒が複雑性をプラスしてくれるような印象で、付け合せの大根おろしとの相性もGOODでした。

 さらに苦味のある「ハラワタ」の部分とも合わせてみましたが、お酒が苦味を増幅することなく包み込んで、心地良いほろ苦さの余韻だけを残してくれました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  そしてもう一品は、チョット意外なところで、

【豚ロース肉の生ハム】です。
 今回選んだのは、燻製はするが加熱はしない「ラックスハム」と呼ばれるタイプの生ハムで、栃木県の「大谷石洞窟」の中で天然熟成させたという、こだわりの一品です

 「秋あがり」と合わせてみると、このお酒の個性の一つである辛口の味わいと、生ハム独特の熟成フレーバーの双方が口の中で維持されて、それでいて両者が平行線をたどらずに、微妙な相性の良さで組合わさって行きます。

 個人的には生ハムは、その程好い塩味と熟成による個性的な香味が、「魚介類の塩辛」と似た感覚で日本酒にも合うので、いわば「洋風の酒の肴」であるなと感じています。


 話は変わりますが、一般的に「ひやおろし」と言うと、従来迄は新酒を「一度火入れ」してからひと夏熟成させ、秋に「生詰め」(二度目の火入れをしない)で出荷するお酒のことを指していたようですが、醸造技術や流通段階も含めた品質管理環境が飛躍的に向上した近年は、全く火入れをしない「生原酒」でも「ひやおろし」の表示がなされています。

 つまり「ひやおろし」の明確な定義は無い訳ですが、利き酒師としてお客様に説明する時には、「早春に生まれた新酒が、ひと夏を越して良い熟成をしたお酒です。」といった表現で良いのではないでしょうかね…。

【賀茂金秀 特別純米酒 秋の便り 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 金光酒造(広島県,広島市)

特定名称 特別純米酒 

原料米 広島県産「千本錦」(精米歩合55%)

           「こいおまち」(精米歩合55%)

酸度 1.4 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 15%-16%

酒造年度 H19BY

【ひやおろし+1年熟成】の酒

 9月に入って、東京では朝晩の気温が20℃位まで下がるようになり、大分しのぎやすくなってきました。

 さて例年この時期になると、WEBサイト上のSAKE SHOPから、各酒蔵からの「ひやおろし」の出荷情報が続々と届けられてきますが、そんな中でチョット変わった「ひやおろしタイプ?」のお酒を見付けたので、早速購入して呑んでみることとしました。

 それが 【賀茂金秀 特別純米酒 秋の便り】です。

 これは広島の金光酒造が、造りの段階から1年後の秋に出荷することを意識して仕込み、通常の「ひやおろし」よりも1年長く蔵元で熟成させて、二夏を越えてから出荷した特別純米酒で、敢えて「ひやおろし」ではなくて「秋の便り」とうい名前が付けられています


 香りはやや強めで、「洋梨」を想わせるほんのり華やかな果実の香りに、「天津甘栗のような甘く丸みのある穀物類の香りが加わって、ほんのり甘くフルーティーで丸い香り」が感じられます。

 口に含むと、程好い熟成により、優しい甘味と適度に主張する酸,そしてふくよかな旨味のバランスが取れていて、コクやボリューム感はまだ十分にあります。

 余韻も比較的長く、「適度に呑み応えがあり、しっかり味の乗った後を引く印象のお酒」でした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 「秋の便り」には秋の味覚をとういことで、まずは

【戻りガツオのお造り】からです。

 岩手産の戻りガツオの、脂の乗ったとろけるような食感とジワリと舌に浸み込むような旨味が生姜醤油と良く合い、さらにそこにお酒を流し込むと、両方の味のボリューム感がドンピシャの相性を見せてくれます

 カツオの旨味とお酒の酸の両方の味わいが程好く残り、味の余韻も口の中で長く続いて、まさに「旨し秋」といった感じの実に美味しい組合せでした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いてはフランス産のセミハードタイプチーズの、

【ミモレット22ヶ月熟成】です。
 いつもは12ヶ月熟成のものを、野菜用の「ピーラー(皮むき)」でスライスして酒の肴にしているのですが、今回は「秋の便り」の熟成期間とほぼ同じ、22ヶ月熟成のものにチャレンジしてみました。

 色は濃い人参色で熟成によりカチコチに固くなっていて、チーズカッターで切ろうとすると、小さな固まりに砕けてしまいます。

 その破片を食べるというよりも、しゃぶり付くような感じで味わってみると、最初は強めの塩味とややザラザラとした舌ざわり(アミノ酸の結晶?)が感じられますが、それが次第に口の中で溶けて濃厚な旨味へと変化してゆきます。

 そこですかさず「秋の便り」をグビリと呑むと、お酒の膨らみのある旨味とチーズの深みのある旨味の、2つの異なるタイプの旨味のハーモニーが広がってこれまた旨い!


 前々から思っていたのですが、大部分の市販されているチーズのガイドブックでは、各チーズと相性の良い飲み物の欄には、赤ワインか白ワインもしくはシャンパンetc.が記載されているものがほとんどなのですが、フレッシュタイプからハードタイプまでの世界中の様々なチーズと、香味のタイプ別の日本酒との相性を体系的に解説したガイドブックを、誰か出してもらえないものでしょうか。

 もし誰もいないなら、私がやってしまおうかな?!

【雪の茅舎 秘伝山廃 純米吟醸

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 齋弥酒造店(秋田県,由利本荘市)

特定名称 山廃造り 純米吟醸酒 

原料米 秋田県産「あきた酒こまち」(精米歩合50%)

       「山田錦」(精米歩合50%)

酸度 1.8 アミノ酸度 ?

日本酒度 +1 アルコール度 16-17%

酒造年度 H19BY

8月末は【残暑見舞いの酒】

 私事となりますが、毎年8月の下旬になると、私の故郷である秋田の親戚から、「残暑見舞い」として地酒が2本ずつ送られてきます。

 そこで8月最後の週末は、そんな「残暑見舞いの酒」をじっくりと呑みながら、今年の短かった夏を締めくくることとしました

 さて今年送って頂いたお酒は、
【雪の茅舎 秘伝山廃 純米吟醸】です。

 これは、秋田の山内杜氏の一人である「高橋藤一」氏が、伝統の山廃造りで醸した純米吟醸酒で、酵母の働きに任せてじっくりと発酵させる為に、敢えてモロミに櫂入れはせず、またお米の旨味を最大限に引き出す為に、搾ったお酒を濾過も加水もせずにそのまま瓶詰めされています。

 ちなみにこのお酒は、国際的な日本酒コンクールである、2008年の「インターナショナル・サケ・チャレンジ」の、生もと・山廃部門において金賞を受賞しています。


 香りはやや強めで、「黄桃の缶詰」のような甘い果実の香りや、「ぜんざいを想わせる香りがあり、「完熟した果実のような甘美で濃醇な香りが広がります。

 口に含むと、やや艶やかな甘味と柔らかく豊かな酸,そして膨らみのある旨味の調和が絶妙に取れており、後口はしっとりとしていて心地よい甘味のフレーバーが残ります。

 コクやボリューム感も充分にあり、全体としては「優しくジューシーな飲み口で、三味のバランスの良い芳醇かつ洗練された味わい」のお酒でした。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 今回は「雪の茅舎」の芳醇で充実感のある味わいに合わせて、しっかりした味付けの惣菜を二品選んでみました。

 まずは、【ぜんまいのうま煮】からです。

 ぜんまい,人参,稲荷揚げ,突きこんにゃくが醤油,味醂,砂糖,出し汁で甘辛く煮付けられていて、白いご飯が欲しくなるような味の惣菜です。

 ご飯の替りに「雪の茅舎」を合わせてみると、お酒のやや艶やかな甘味と「うま煮」のあまから味が同調し、また両方の味わいの濃さのレベルも丁度良くて、思わずお酒が進んでしまう組合せです。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  そして二品目は

【きのこと茄子のマーボー】です。
 3種類のきのこと茄子と挽き肉に、オイスターソースが効いた濃い味わいの餡がタップリと絡まっていて、さらにピリ辛の唐辛子が味にアクセントを添えて、こちらも思わず炊き立てのご飯が欲しくなってしまうような中華料理です。
 おもむろに「雪の茅舎」と合わせてみると、料理単体では少し濃過ぎるようにも感じた「マーボー」の味わいに、お酒の優しい甘味が加わることによって、口の中で丁度良いバランスの味わいへと変化し、お酒と料理の両方が一層美味しくなるような組合せでした。


 さて今年の夏は、様々なタイプのいわゆる「夏スペックの酒」を呑み、その中には確かに「蒸し暑い真夏の夜」というシーンにピッタリのお酒もあったのですが、こうして夏の終わりに洗練された香味の山廃純米吟醸酒をじっくりと呑んでいると、やはりこういったTPOで呑む方が、日本酒の本領を発揮しているような気がしてきてしまいます。

 呑ん兵衛というのは本当にわがままなものですねえ…。

【美丈夫 純米吟醸 スリーセブン 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 濱川商店(高知県,安芸郡)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 愛媛県産「松山三井」(精米歩合55%)

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +7 アルコール度 14%-15%

酒造年度 H20BY

景気回復の酒【スリーセブン】

 8月22日(土)に、有楽町の東京国際フォーラム内において、NPO法人FBO関東支部主催のイベント「良い酒 夢気分 関東巡礼」が約100名の来場者のもとで行われ、支部の役員である私もスタッフとして参加し、当日蔵元が来れなかった茨城の地酒ブースを、蔵元に替わって担当させていただきました。

 さて話は全く変わりますが、イベントから一夜明けた今宵の一本に選んだのは、先日WEBサイト上のSAKE SHOPで見つけた時に、思わず声を出して笑ってしまったお酒で、

 その名も【美丈夫 純米吟醸 777(スリーセブン)】です。

 これは高知の濱川商店が、本酒造年度(H20BY)の「7番目」に仕込み、「7号酵母」を使って日本酒度を「プラス7」の辛口に仕上げ、さらには蔵元の出荷日までが「7月7日」という、7という数字に徹底的にこだわったお酒で、世の中の不況を吹き飛ばすような、「スリーセブン」という縁起の良い名前が付けられています


 香りは、「花梨」のようなほのかな花の香りや、「大福餅を想わせるやや甘い香りが感じられ、ほんのり華やかだが飾らない香り」といったイメージです。

 口に含むと、スッキリとした酸が明快に主張しますが、おとなしめの甘味と控えめな旨味に対してのバランスが、若干強いようにも感じられます。

 余韻は比較的短く、後口には辛口の味わいが残り、全体的にはやや平坦な印象も受けますが、「喉越しの良い飲み口で、明快な酸と後口のキレが特徴の辛口酒」で、あまり冷やし過ぎずに「常温」(18℃前後)で呑んだ方が、よりお酒の味わいが感じられるように思われました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 今回はスッキリした辛口のお酒に合わせて、おつまみもサッパリ系のものを用意しました,まずは

【もやしと中華クラゲの和え物】からです。

 これはモヤシ,胡瓜,大根の細切りと中華クラゲを、胡麻油風味の旨味タレで和えた中華の前菜で、「777」と合わせてみると、料理のサッパリ感を残しつつも、お酒の味わいの方がやや上手を行ってしまいます。

 そこでアレンジとして、純米黒酢ラー油を3滴程たらしたものを混ぜ合わせてみると、料理の味わいにより複雑性が増してお酒との相性もグッと良くなりました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  

 続いては、

【北海道産水だこの湯引き】です。
 まずはシンプルに天然塩に付けてお酒と合わせてみると、塩によってタコの甘味と旨味が引き出され、それが「777」の控えめな甘味や旨味と口の中で融合して◎の組合せです。

 次にモミジおろしポン酢で試してみると、ピリ辛の味わいが一枚加わって、これはこれで中々に相性の良い組合せでした。

 

 今回ちょっと思ったことは、お酒と料理の組合せにおいては、もちろん「お酒の香りと味」「素材とその料理法」が重要であることは間違いないのですが、例え相性が今一つであった場合でも、「和洋中の様々な調味料」でアレンジを加えることによって、より相性の良い組合せに変えられるということです。

 これでお酒を呑む愉しみが、また一つ増えたような気がしますね。

【三井の寿 純米吟醸 チカーラ(CICALA)

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 井上合名(福岡県,三井郡)

特定名称 純米吟醸酒 

原料米 福岡県産「夢一献」(精米歩合60%)

酸度 1.9 アミノ酸度 1.8

日本酒度 +2 アルコール度 15%

酒造年度 H20BY

お盆の終わりに【セミの酒】

 お盆期間の最終日となった16日の日曜は、カラリとした「夏空」の一日となり、夕方になってから近所の玉川上水緑道の木陰を散歩していると、ヒグラシの「せみ時雨」が、まるで体に染み込んで来るように感じられました。

 さて「セミ」と言えば、夏向きのスペックのお酒を幾つか買い込んでいた中に、こんなラベルのお酒があったのを思い出して、今宵の一本とすることにしました。

 それは、【三井の寿 純米吟醸 チカーラ(CICALA)】です。

 これは、福岡県三井郡の井上合名が、地元の酒造好適米「夢一献」を磨き、爽やかな「リンゴ酸」を多く生産する新しい酵母を使って醸した夏向けのお酒で、名前の「CICALA(チカーラ)」とはイタリア語で「セミ」という意味で、ラベルも「セミが木にとまっている」夏らしいイメージでデザインされています。


 香りは控えめながら、「夏みかん」を想わせる柑橘系の果実の香りや、「クレソンのような菜類の香りがあり、爽やかでスーとするような香り」が感じられます。

 口に含むと、シャープながらしっかりした酸が広がり、控えめでスッキリとした甘味と透明感のある旨味とのバランスも良く、余韻には微かに苦味も感じられますが、舌の上には爽やかな酸が残ります。

 コクやボリューム感はやや控えめで、全体としては「爽やかな飲み口で、キリリとした味わいのお酒」で、しっかりと冷やして呑むと夏にピッタリという印象を受けました。


 今回はネーミングにイタリア語が使われていることにちなんで、イタリア料理のアンティパスト(前菜)と日本酒との組合せに挑戦してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■
 まずは一皿目は定番の、

【トマトとモッツァレラのカプレーゼ】です。

 見た目が赤・緑・白とイタリア国旗と同じ3色のサラダですが、「モッツァレラチーズ」のもっちりした口当りと淡白な味わい,良く熟したジューシーなトマトの甘味,そしてバジルとオリーブオイルとのシンプルな組合せが絶妙です。

 早速「チカーラ」と合わせてみると、冷たい「カプレーゼ」の味わいによって、口の中でお酒の爽やかさが増幅されるような組合せですが、余韻に残る苦味がやや気になります。

 ■【利き酒師世界一】のひとり言■ 続いて二皿目は、

【イワシのパン粉焼きバジル風味】です。
 脂の乗ったイワシに、ガーリックとバジルとオリーブオイルの風味が効いていて、付け合せのトマトやズッキーニやパプリカと
緒に食べると、何となく地中海のリゾート(TVで見たことしかないのですが)を思わせるような前菜です。

 こちらも「チカーラ」との相性は悪くないのですが、どうしても余韻の苦味が感じられます。
 ここで、「イタリアンのアンティパストと日本酒の組合せは難しい」と投げてしまっては利き酒師として失格なので、何が「余韻の苦味」を感じさせるのかを究明する為に、両方の料理に共通な食材である「トマト」「オリーブオイル」「バジル」 を、買い込んできて試してみることとしました。


 まずは「冷やしトマト」と日本酒の組合せは、当然ながら問題なし。

 続いて「エキストラ・バージン・オリーブオイル」を、直接飲んで日本酒を呑んでみましたがこれもOK。

 最後に「バジルの葉」と日本酒を合わせると、何と口の中が「苦味」で一杯になってしまいました。

 したがって、「バジル」や「バジルソース」を使ったイタリアンは、余韻の苦味を感じさせるという点から言うと、一般的には日本酒以外の飲み物と合わせた方がベターなようです。

 というわけで、今回はちょっとマニアック?!な内容でした。