ロングディケイ/Tʌ́-rot
1. ロングディケイ
2. 傷跡
3. Loop
新潟を拠点に活動していたTʌ́-rotが2,000枚限定でリリースした1stシングル。
2002年に解散となり、本作が単体音源としては最初で最後のCD作品となっている彼ら。
入手困難な作品が多いことが惜しまれていましたが、2024年になって、前売りチケット100枚が予約完売すれば復活ワンマンを開催するという発表がありました。
仮に達成しなくても限定音源が制作される見込みとなっているので、遂に2枚目のCD作品となるかと期待がかかります。
本作が発表された2001年は、CT「頭上に咲いた逆さまの花」を完売させ、じわじわと存在感を増していた頃。
しかしながら、デモテープに収録された5曲中3曲を作曲していたGt.TAKAさんが脱退。
現在ではハイダンシークドロシーで活動しているDr.靖乃さんもリリース前に離脱しており、Vo.ATSUSHI、Gt.RYO、Ba.DAISUKEの3人編成での作品となっています。
ex-L'luvia。ex-Suzzy&CarolineのNAOさんをサポートに迎えてバンドサウンドは保っているものの、作曲者が作詞も行うスタイルだったTʌ́-rotにとっては、コンポーザーがRYOさん、DAISUKEさんにシフトしたことで、一部の音楽性や世界観に変化をもたらすことになりました。
象徴的だったのは、コテコテメイクとソフビ風メイクの2種類を組み合わせたアーティスト写真。
二面性を意識して幅を広げようとしていたことがうかがえますね。
RYOさんが作曲した表題曲は、退廃的かつ耽美色の強いミディアムナンバー。
新潟バンドが名古屋系との親和性を高めつつあった時代背景を受けてか、コテコテ感は薄まり、ディープでマニアックな作風に。
メロディは歌謡曲的ながら、6/8拍子で展開されるため、キャッチーになりすぎない雰囲気モノに仕上がっています。
「傷跡」と「Loop」は、DAISUKEさんによる楽曲。
それまでのダークでハードなイメージを踏襲した部分があるのは「傷跡」。
ソリッドな構成にメロディアスな印象を加える、うねったベースラインが効いています。
「Loop」は新境地といったところで、神秘的なシンセを前に出して白系的なアプローチに挑戦。
Vo.ATSUSHIさんの艶のある歌声には、まだまだポテンシャルがあることを示していました。
バランスが良く安定性は抜群。
あとは、1stシングルらしいインパクトが欲しかったといったところで、入手困難となっていたデモテープの楽曲の再録でもいいから、勢いのあるキラーチューンが欲しかったかな、と。
本作ではじめてTʌ́-rotの音楽に触れるリスナーも多かったことを踏まえれば、少し変化球的だったと言えなくもありません。
その意味では、羽化の途中で歩みが止まってしまったと言えるTʌ́-rot。
公表されているアーティスト写真ではフルメンバーでの復活ではないことが示唆されており、どれほどの期間での復活を想定しているかも未知数ですが、せっかく動きがあるなら予想以上の反響を生んで、あわよくば再録ベストの制作まで突き進んでほしいものです。
<過去のTʌ́-rot(Ta-rot)に関するレビュー>