THE REVIVAL OF SADNESS/Sadie
1. 迷彩
2. 心眼
3. Ice Romancer
4. under the chaos
5. GRUDGE OF SORROW
6. サイレントイヴ
7. Grieving the dead soul
8. MAD-ROID
9. Crimson Tear
10. 妄想被虐性癖
11. 陽炎
12. a holy terrors
再始動を果たしたSadieによる、フルリテイクアルバム。
長い沈黙を破り、活動を再開。
テーマとして掲げる"原点回帰"と"新生"を同時に表現するにあたり、まずドロップしたのは、セルフカヴァー作品でした。
2005年にリリースした1stシングル「黒衣の下の欲望と、苦悩の果てに視た百景の百合達」から、2009年の1stアルバム「MASTAR OF ROMANCE」までに発表された初期の楽曲から、メンバー自らが選曲を敢行。
性質上、2008年に発表されたセレクションアルバム「「SADIE」〜UNDEAD13+2〜」との重複は多いものの、全曲が再録されていることを踏まえれば、明確な比較対象があるのもまた一興と言えるのでしょう。
2015年の活動休止以降も、Vo.真緒さん、Gt.美月さんがThe THIRTEEN、Gt.剣さんがRAZORに所属し、第一線で活躍。
Ba.亜季さん、Dr.景さんにしても、複数のプロジェクトやサポートに携わり、キャリアを積み重ねてきた彼ら。
その経験を還元した本作は、初期の楽曲を演奏しているだけに、より一層成長の跡が浮き彫りになります。
攻撃性やヘヴィネス、あるいは退廃的な世界観といった原曲の武器は殺さないことを前提に、勢いだけで突っ走っていた部分を整理。
"丸くなった"と言われない配慮を施しながら、素材の魅力を引き立てるアレンジに再構築しており、サウンドの鋭利性が際立っていますね。
すっきりした感がある一方で凶悪性を増した「妄想被虐性癖」を聴けば、洗練されることと丸くなることは同義ではない、ということが理解できるのでは。
また、シンプルに表現力が増したことが、大きく変えずとも圧倒的にオリジナルを上回ったという印象を強めています。
やや心もとなかった歌モノも、安定感が出ただけでなく、感情の機微まで伝わるようになっていました。
同系統の楽曲が多いという課題も、歌唱や演奏が衝動性のゴリ押しだけではなくなったことにより、メリハリがついたなと。
期間内にリリースした作品から満遍なくピックアップしている中で、しっかりとアルバムとしての構成も意識されていて、はじめてSadieに触れる1枚となるのなら、オリジナルアルバムと捉えてすら良さそうです。
ある種の縛りがある中での、このクオリティ。
懐古的な感傷がある部分は否定しないものの、これを踏まえた新曲が聴きたくなったという意味で、未来を見据えたアルバムになっています。
これで終わりなんて言わないでよね、と声高に訴えたくなる1枚。
<過去のSadieに関するレビュー>
COLD BLOOD
黒衣の下の欲望と、苦悩の果てに視た百景の百合達