Eternally/KISAKI
1. Cross Peagent ~New Recording~
2. Mermaid
3. Doppelganger ~New Recording~
4. Kagerou
5. Last Eve
6. Irreplaceable World ~New Recording~
30周年プロジェクトの最終章となった、KISAKIによるミニアルバム。
フルアルバム三部作を経て、まさかもう1枚ミニアルバムが控えているとは。
「Doppelganger」や「Irreplaceable World」は、三部作からの再録となり、やや早すぎる感はあるのですが、前者はTHE SHEGLAPESのVo.蟹江敬子さんがメインヴォーカルとなって雰囲気が変わり、後者は摩天楼オペラのVo.苑さんが歌詞を書き替えている等、どちらもアナザーヴァージョンとして捉えるべきでしょう。
X JAPANを聴いたときの衝動をはじめ、影響を受けた音楽をダイレクトにアウトプットすることがコンセプトとのこと。
そのせいか、シンフォニックなメタルサウンドが基調となっています。
1曲目を飾る「Cross Peagent」は、KISAKI PROJECT feat.樹威の「憧憬」を、苑さんの歌声でリレコーディングしたもの。
間違いようのない名曲から幸先よくスタートすると、MIRAGE、RENAMEのVo.AKIRAさんが歌詞を担当した「Mermaid」に突入。
ハイトーンよりもミドルキーが活きる楽曲は、すべてAKIRAさんが拾ってくれるという信頼感は、ここでも活きていました。
「Kagerou」を含めて、アクセント的な楽曲を担うことが多く、使い勝手の良いバイプレーヤーになってしまっている感はあるものの、メインを張れる楽曲はMIRAGEに取っておく、という意図もあったりして。
ある種の目玉となったのは、「Last Eve」。
DEATHGAZEやDARRELで活動しているVo.藍さんが作詞と歌唱で参加。
名古屋系を地で行くダークな歌声が、KISAKIさんのメタリックな楽曲とどう化学反応を起こすのかが気になるところですが、そこはV系偏差値の高いKISAKIさんといったところで、シリアスかつヘヴィーな名古屋系サウンドを自らの音楽性の範囲内で昇華。
耽美な美しさと、退廃的な暗黒が隣り合わせで、危うい関係性が中毒になる楽曲へと仕上げています。
そして、その美しさを最大限にまで引き立ててクロージングしていくのが、「Irreplaceable World」。
ここにきて重要な位置付けを仰せつかったな、というメタルチューンですが、なるほど、この刹那的な疾走感、この耽美的なメロディ、KISAKIさんの美学を象徴しており、プロジェクトの締めくくりにふさわしいですね。
もっとも、真の終焉は、福袋の内容物という特殊な形で販売されたシングル「破戒」にあるとのこと。
美しく築き上げた音楽に対して、それを瓦解させてしまう破壊の美学も、同時にKISAKIさんに存在しているのでしょう。
その意味では、衝動性を神秘性に置き換えて表現したコンセプトミニアルバムと言えなくもない本作。
メロディアスな王道曲を好むリスナーであれば、精度の高さが武器となる1枚です。
<過去のKISAKIに関するレビュー>