Providence/KISAKI
1. Providence
2. Ambroid
3. Irreplaceable World
4. Innovator
5. Mind Collapse
6. Nothingness Cage~New Recording~
7. Answer
8. Sacred Xanadu~New Recording~
9. Dance Macabre
10. Loveless of Earth
KISAKI・バンド活動30周年企画として3ヶ月連続でリリースされるフルアルバムの第一弾。
ゲストヴォーカルとして名を連ねるのは、苑(摩天楼オペラ)、TAKA(defspiral) 、椎名ひかり、AKIRA(MIRAGE、RENAME)といった錚々たる面々。
AKIRAさんが6曲、TAKAさん、苑さん、椎名さんが1曲ずつという内訳になっていて、やはりAKIRAさんの信頼度は抜群といったところでしょう。
ギターについても、VersaillesのHIZAKIさんやPhobiaの源 依織さん、GOTCHAROCKAのJUNさん、NEMOPHILAのSAKIさんといったゲスト陣に加えて、過去にKISAKI PROJECTへ参加していたサポートメンバーも勢揃い。
リズム体を、Ba.KISAKI、Dr.森谷亮太の両名で固定しているだけに、上物パートの個性がより際立つという構造になっています。
KISAKIさんと言えば、ヴィジュアルシーンにおいてベーシストの存在感を強めたひとり。
その爆音で、主張の強いベースフレーズによって、コテコテ系のど真ん中をひた走り、今もなお第一線で活躍中ですが、本作を聴いて興味深かったのは、ゲストヴォーカルの個性を引き立てるような作曲スタイルを意識していること。
苑さんが歌う「Irreplaceable World」は、熱量の高いメタリックなサウンドに、椎名さんによる「Mind Collapse」は、アンニュイな雰囲気が強調されたミドルチューンに、TAKAさんの「Answer」は伸びやかな歌声を活かした歌モノロックに仕上げていて、新境地といったアプローチも見られます。
特に、「Answer」のポップロック的なメロディがKISAKIさんから出てくるとは驚きましたよ。
もっとも、MIRAGEの盟友・AKIRAさんが半数以上の楽曲で歌っているため、KISAKIさんにとっての王道サウンドが中心に据えられた形。
期待通りのヴィジュアル系を展開して道を作りつつ、その他のアーティストの個性がアルバムにおける柔軟性となって、絶妙なバランスを構成しています。
神秘的なシンセがダークな世界観を彩る「Ambroid」で多用されるキメだったり、「Innovator」においてサビでの盛り上がりを引き立てるデカダンなエフェクトヴォイスだったり、実にらしいな、と。
この情報量の中では埋もれてしまいそうになるけれど、目黒鹿鳴館の救済プロジェクトの一環で制作された「Nothingness Cage」や、凛-the end of corruption world-のセルフカヴァーとなる「Sacred Xanadu」が新録で収録されているのも、目玉と言えそうですね。
最後の2曲には、変態性のあるマニアックな「Dance Macabre」と、美しく壮大なバラード「Loveless of Earth」、正反対の長尺曲を持ってきて、圧巻のクロージング。
激しさに振り切った楽曲など、まだ見せていない一面は残されているものの、ここから更に2枚もフルアルバムが待ち構えているとなれば、それはもう伏線でしかありません。