吸血くんと愉快な軽犯罪者 / ぶえ | 安眠妨害水族館

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吸血くんと愉快な軽犯罪者/ぶえ

 

1. 蚊

2. 舐めまわし

3. 痴漢

4. 即死

5. 万引き

 

ぶえにとって初のアルバム作品となる、1stミニアルバム。

 

12月に先行的にデジタルリリースされていましたが、1月になって満を持してのCD化。

ライブ会場と一部店舗限定で販売開始となりました。

自主盤倶楽部では購入特典として、CDR「悪趣味音源 壱」が付属しています。

 

全編にわたって、ナンセンスっぷりが全開。

1曲目のテーマが蚊。

それ以外は、身近にいるかもしれない変態たちの歌。

タイトルの「吸血くんと愉快な軽犯罪者」は、ある意味で内容に忠実なであると言えるのです。

 

「蚊」は、蚊が飛ぶ音をギターで表現したイントロから特徴的。

あの忌まわしい羽音をリフとして取り込むアイディアは、さすがぶえと言わざるを得ません。

激しいラウドチューンに、コミカルなフレーズを乗せて、ヴィジュアル系以外では存在しないであろう世界観を構築。

ふざけているようで、実は奥深いようで、やっぱりふざけているのかなと思わせる、二転三転して深いところと浅いところを行ったり来たりするセンスは、真似したくとも真似できない独自性ですね。

 

特に、ひたすら凶悪な攻撃性を示しつつ、歌詞であることを諦めたようにも見える「舐めまわし」や、どうやったらこんなにシンプルな言葉だけで気持ち悪さを際立たせる歌詞が書けるのだろうという「即死」が、強烈なインパクトを残しています。

サウンドワークから変態性を強めて、ウネウネドロドロの展開を見せる「痴漢」についても、サビでメロディアスに転調する一方で、歌詞だけは暴走して、一番ふさわしくない言葉を当ててしまうのが、実に彼ららしいな、と。

ラストの「万引き」も、捉えどころのない展開、メロディ、メッセージが、ひたすら脳にダメージを与えていく仕様。

メリハリをつけるセオリー通りの戦略は持ち合わせず、ただ珍奇な楽曲をまくしたてるというスタンスは、ここまでやりきってしまうと圧巻。

ここまできたら、フルアルバムが聴いてみたくなりますよ。

いったい、どんな問題作に仕上がるのでしょう。

 

なお、「悪趣味音源 壱」は、曲目は不明ですがナンセンスな歌詞と、カオティックなサウンドで構成された楽曲を1曲収録。

チープな電子音に、同じフレーズを繰り返すヴォーカルラインが重なる半SEかと思いきや、ぐちゃぐちゃのバンドサウンドが突如として押し寄せ、真っ黒に塗りつぶされてしまいました。

彼らの悪ふざけの源流がこれだとすると、出来る事なら聴いてみたいと思ってしまうのがファン心理。

人に薦めづらいバンドであるものの、ハマれば抜け出せない中毒性の塊なので、聴くときには注意が必要です。

 

<過去のぶえに関するレビュー>

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