L0/LIQUID
1. doll
2. 疑惑
3. REDO(v.2.0)
4. MENTIRA
5. INSIDE MISERY
6. 月光(v.2.0)
7. 至要たる剥離
8. 影
9. fluoride
10. 穢れ
仙台を拠点に活動中のLIQUIDによる1stフルアルバム。
何度目かの発売延期を越えて、ようやくリリース。
待たされた分、濃密な作品になったのは言うまでもなく、初期の楽曲は新たなアレンジが施されています。
「fluoride」はCDにのみパッケージ。
配信版には、代わりに2019年にリリースされたデジタルシングル、「D4221964」が収録されており、聴き比べの楽しみを生んでいました。
Vo.hibariさんの艶やかな歌声と、Gt.レムさんの渋いギターフレーズが絶妙に絡まり合う、翳りのある楽曲たち。
Dr.Tadatoshiさんのメリハリの効いたドラムプレイも世界観の創出に大きな役割を果たしており、ライブで熟成させてきたことがわかるコンビネーションが堪能できます。
現代ロックのように多用な声色を巧みに操るわけでもなく、複雑な展開や奇をてらったギミックに頼るわけでもない。
小手先のギミックは不要と言わんばかりのシンプルさを含みながら、深海のごとく奥が深いのが、LIQUIDのサウンド。
既存曲が半数を占めるものの、「doll」、「疑惑」と、特にメロディが立った新曲を畳み掛け、アレンジ違いの「REDO」を噛ませ、ヒリヒリするスリリングさを帯びた「MENTIRA」で勝負を決める、出し惜しみをしない構成の勝利と言えるでしょう。
メインコンポーザーはレムさんではあるけれど、あえてhibariさん、Tadatoshiさんが原曲を持って来たナンバーでスタートしたのも奏功。
アルバムを耳にするにあたってのフレッシュさを与えていて、細かい心配りが至るところに見受けられるのですよ。
中盤以降は、アルバムのバランスを意識して、外さないセットリストを組んできたと言ったところ。
初期から演奏されていた「月光」は、ミステリアスな世界観を崩さずに洗練され、退廃的な美を強調。
「至要たる剥離」、「影」のコンボも、キラーチューンを並べて高揚感を煽り、盛り上がりのピークを演出します。
CDにのみ収録された「fluoride」は、Tadatoshiさんの原曲による雰囲気モノ。
淡々と刻むリズムが、妙に切ない気持ちを運んでくるミディアムチューンに仕上がっており、ラストの「穢れ」の前に心を浄化。
配信版に挿入された「D4221964」は、彼ら流のデジタルロックを体現した実験性のあるナンバーであり、どちらもアクセント的な楽曲ではあるのだけれど、アプローチが正反対なのが面白いですね。
そして、LIQUIDの音楽は「穢れ」に収束。
激しい顔も、穏やかな顔も、妖艶な影も、眩しい光も。
締めの1曲は、これ以外にあり得なかったな、と納得のラストシーンでした。
ノスタルジーと普遍性を兼ね備えた、2021年最後の名盤。
<過去のLIQUIDに関するレビュー>