四月一日/わたぬき
1. スノードーム
2. Nocturne
3. わたしのうた
宮城県を拠点に活動中のわたぬきによる、2020年4月1日にリリースされた1stEP。
Pf &FemaleVo.きたぴー、Gt &MaleVo.岡崎による、男女混合弾き語りユニット。
岡崎さんは、emonchhichiの1stEPにゲストヴォーカルで参加する等、ヴィジュアル系シーンにもあかるく、ギター、ベース、プログラミング等で獅子奮迅の活躍を見せていたのが記憶に新しいところです。
本作は、ライブ会場とBOOTH通販にて販売されているCD-R。
アートワークも岡崎さんが自ら手掛けており、実質的なセルフタイトルらしい熱の込め方がうかがえますね。
「スノードーム」は、作詞をきたぴーさん、作曲を岡崎さんが担当したミディアムナンバー。
メルヘンチックな情景描写と、キラキラしたピアノのフレーズが特徴でしょうか。
ポップス調ではあるのだけれど、きたぴーさんの凛とした歌声は、切なさ、寂しさを表に出さないように努めているようで、しんみりしすぎない明るさが、かえって涙を誘うのです。
冬を連想させながら、室内のあたたかいイメージを持たせる逆説的なアプローチも上手いな、と。
一方で、岡崎さんが歌い上げる「Nocturne」は、翳りが前面に押し出されていて、白と黒、光と影の対比を感じました。
サウンドとしても、透明感のあるピアノと、歪ませたギターの音がコントラストを強めている印象。
バンドサウンドに近づけたアレンジは、疾走感が気持ち良く、ハスキーな声質も、どこか物憂げな表情。
マイナーコード好きの琴線を刺激していくのですよ。
あらゆる面で対照的な2曲ですが、どちらもがヴォーカリストとして主軸を張れる強みを活かして、双方向からこうも激しく揺さぶってくるのだから、がっちり心を掴まれるのも時間の問題。
もうこの段階で、勝負ありです。
最後に届けられた「わたしのうた」は、ピリッとした空気を解きほぐす、自分への応援歌。
弾き語りユニットらしい、シンプルなサウンドで構成した楽曲ですが、これはこれでパワーがありました。
誰にでも伝わる、誰にでも共感できるストレートなメッセージ。
両極端だと思わせた前の2曲とは、また別の方角を向いた楽曲をパッケージしたことで、わたぬきの引き出しの多さを証明したと言えるでしょう。
掴みどころがないのに、いちいち刺さる。
素直に、もっとたくさんの楽曲が聴きたいな、と思わせる1枚。