fuzzy knot/fuzzy knot
1. 深き追憶の残火
2. ダンサー・イン・ザ・スワンプ
3. ダイナマイトドリーム
4. 愛と執着とシアノス
5. トリックスター・シンドローム
6. Sunny Days
7. こころさがし
8. Joker & Joker
9. #109
10. キミに降る雨
シドのGt.Shinji、ex-Waive、RayflowerのVo.田澤孝介によるユニット、fuzzy knotの1stフルアルバム。
CD盤は、MAVERICK STOREでの限定販売となっています。
全曲、作詞は田澤さん、作曲はShinjiさんが担当。
Shinjiさんのルーツが詰め込まれているといったところで、思った以上に音楽性のバリエーションは豊富に仕上がった印象です。
１曲目の「深き追憶の残火」から、和のテイストを帯びたメロディが耳に残るロックチューン。
続く「ダンサー・イン・ザ・スワンプ」はジャジーな香りを漂わせて、先行シングルとなった「こころさがし」の90年代ポップス路線ばかりではないぞ、と主張していました。
エスニック調のリフが特徴的な「ダイナマイトドリーム」、がっつりブルースに落とし込んだ「愛と執着とシアノス」、ファンキーな「トリックスター・シンドローム」に気怠さのあるポップロック「Sunny Days」と、その後もアプローチは様々。
ただし、それでも実験的ではないな、と思わされるのが面白いところ。
というのも、そのひとつひとつは、確かにこれまで、シドの音楽の中でちらっと見えていたエッセンスを多く含んでいるのですよ。
Shinjiさんのフィルターを通して凝縮すると、こういうサウンドが出来上がるのだな、と納得できてしまう。
改めて、シドの音楽性の中での彼の存在感の大きさを実感せずにはいられません。
この中に入ると、「こころさがし」のイメージが、少し変わって響くのもポイントですね。
これがfuzzy knotの王道になるのかと予想していたら、数あるアプローチのうちのひとつだったとは。
もちろん、キラーチューンであることに変わりはなく、存在感は更に強まった形。
このキャッチーさを求めすぎると肩透かしにあうのかもしれませんが、大人びた楽曲が多い中、突き抜けた爽快感をもたらすことで、アルバムのピークを生み出す役割を果たしていたと言えるでしょう。
タイアップがついて、MVも制作されたリードトラック「Joker & Joker」は、スカやファンクに歌謡曲を重ねた意欲作。
早期予約特典として、この楽曲の8cmシングルが付属するという企画も、気が利いています。
タイアップ内容がシールとしてビニールに張り付けてある仕様に、当時の再現性の高さを感じ、思わずニヤリとしてしまう。
あらゆる角度からノスタルジックを表現していて、話題の作り方も上手かったな。
ハードに疾走する「#109」、しっとりとしたバラード「キミに降る雨」と、最後はライブの終盤を意識した構成に仕立てていて、クロージングもまとまっています。
特に、「キミに降る雨」における、田澤さんの歌声の透明感といったら。
すべてを浄化するようで、おもちゃ箱のような雑多感はありつつ、なんだかんだ、作品としての流れがスムース。
セルフタイトル作の名に恥じない、最初のアルバムであり、最高のアルバムでした。
＜過去のfuzzy knotに関するレビュー＞