Kreis/V.A.
1. Days… / D≒SIRE
2. Review for fate / Blüe
3. Sky / Ize
98.
現在はKαinのヴォーカリストとして活動しているYUKIYAさんが1996年に設立したレーベル、Kreis。
本作は、創設期の所属バンドが1曲ずつ楽曲を提供した、オムニバスCDとなります。
スリーブケースの一部が切り取られており、ブックレットや裏ジャケと連動したデザインになっている特殊仕様。
ブックレットには、各バンド、アートワークと歌詞で見開き分のスペースが確保されています。
加えて、バイオグラフィーが記載された3バンドそれぞれのアナザージャケットも付属する等、実に豪華。
CDバブル時代だからこそ、と言えるのかもしれませんが、現物を手にする価値がある作品に仕上がっていました。
YUKIYAさんは当時、D≒SIREに所属。
本作が発表された1998年は、メンバーが固定できず、バンド形式での活動が難しかった時期。
この「Days…」が、久しぶりとなる新曲でした。
シリアスなビートロックで、必ずしもバラードというわけではないのですが、6分半を越える長尺。
しかし、歌詩を読んでみると、このぐらいのボリュームが必要だったというのも頷ける。
それだけ、沈黙していた期間に伝えたかったメッセージが多かったのだと納得せざるを得ないのですよ。
バランス感覚も絶妙で、ヴィジュアル系としての佇まいを崩さずに、聴きやすさと奥深さを両立。
サビだけを聴けば、ポップでキャッチーなのだけれど、一度本質に触れると、グッときてしまう1曲なのです。
Blüeは、「Review for fate」で参加。
解散時にリリースされたベスト盤に収録されるまで、他の作品には未収録だったので、本作の価値を高めることに寄与していました。
ストレートなビートロックをキーボードの音色でファンタジックに色付け。
正統派の疾走チューンとして、彼らの強みを存分に出したうえで大きなインパクトを放っています。
アウトロのノリに合わせて、呟くような英詞を重ねるアプローチは、L'Arc~en~Cielの「予感」のオマージュ的な意味合いもあるのかな。
彼らが白系サウンドにルーツを持っていることを示しているようで、余韻を残しつつ、アピールにも成功していたのでは。
Izeは、代表曲である「Sky」を収録。
ミニアルバム「Ark」の制作と並行していたこともあり、先行発表のような位置づけとなったのかな。
「Ark」収録版とはテイクが異なっており、聴き比べも面白いでしょう。
この段階で、"Kreis"の色というのは見えてきた感触で、白系的世界観と、ビートロックを融合したサウンドを、彼らも踏襲。
ただし、彼らの場合は、Vo.HIROKIさんのロックバンド然としたスタイルも相まって、他の2バンドとは異質な雰囲気に仕上がるから面白いですね。
強いて例えるなら、MUCCの逹瑯さんのような声質で、表現力にも長けていました。
発売年にちなんで、98トラック目に、シークレット扱いでレーベルソングである「MOMENT」を収録。
後にシングルとして発表されるものとは異なり、YUKIYAさん、ARIHITOさん、HIROKIさんでのKreis All Starsとなります。
2コーラス目が終わったところで、フェードアウト。
完全盤はシングルで、ということなのでしょうが、その頃にはレーベルメイトが増えていることもあって、これまた違った味わい。
このヴァージョンもフルで聴きたかったな。
まさに少数精鋭。
白系バンドを、所謂ソフトヴィジュアル系のフォーマットに落とし込んだ功績は大きく、その後のブームを牽引したと言っても過言ではないかと。
曲数の少なさ故に、レーベルオムニバスの文脈でも話題にされにくいのがもったいない。
インディーズシーンを含めたV系史を語るうえで、忘れてはいけない1枚です。