慎一郎&杏太による単独公演「お誕生日ライブが好きな杏太のお誕生日ライブ2021 ~杏太さんの好きな事全部やらせてあげてぇんだ~~」に行ってきました。
本来は、1月に開催される予定だったバースデーライブが、緊急事態宣言等の影響により、3月まで延期。
結果として、緊急事態宣言は延長されることになってしまいましたが、もともと小規模でのライブだったこともあり、無事開催される運びとなったようです。
参加したのは第二部。
もはやバースデーとは、というタイミングにはなってしまったこともあってか、特にサプライズ的なものはありませんでしたが、心なしか杏太さんの楽曲が多かったように感じましたね。
基本的にオリジナルとセルフカヴァーのみ。
レミオロメンの「粉雪」を歌わせるつもりだったが、延期になってそんな季節でもなくなってしまった、とのことです。
誕生日にちなんだ緩いトークからスタートして、1曲目は「向日葵」。
第一部が、「今、光を」で終えたことから、カップリングに挿入されていた「向日葵」で再開することで、繋がりを意識したようです。
もっとも、慎一郎さんにはその理由までは、伝えられていなかったようですが。
毎回、詳細を知らずに、オーディエンスと同じ目線で驚く慎一郎さんを見守るのも、慎一郎&杏太のライブの正しい楽しみ方。
結局、そこからゆるゆるMCが膨らんでいくまでがお約束なのです。
続いて演奏されたのは、「ラストシーズン」。
ゴーストレインで発表されていたこの曲が杏太さんのバースデーで披露されるのは意外だったのですが、季節に合わせた春めいたナンバーとしてセレクトされたのでしょう。
慎一郎さんが、一度音楽を辞めた後にはじめて作曲した楽曲とのことで、思い入れは十分。
喉の調子も良さそうで、なんとも気持ち良く歌い上げると、杏太さんのソロ曲、「歪んだ世界」へ。
こちらは、慎一郎さんはギターに回り、杏太さんがメインヴォーカルを担当。
コロナ禍における鬱憤を詰め込んだメッセージソングとなっており、いつもよりも強めに声を張る杏太さんが印象的でした。
続けることで、ヴォーカリストとしての安定感も増してきた気がします。
「茜さす部屋で」と「細胞」は、この日リリースとなった会場限定シングルから。
一発目はレコーディングの完成形に近づけたいから、と同期を使ったバンドヴァージョンでの初披露。
どちらも、杏太さんが作詞・作曲を手掛けており、正統派の哀愁系ナンバー「茜さす部屋で」と、どっぷり沈み込むような暗さを持つ「細胞」。
さすが、らしさを残しつつ、慎一郎さんの歌の旨味を良く理解しているな、と。
伊達に20年近く一緒に音楽を奏でているだけありますよ。
「茜さす部屋で」は、Bメロに重ねる杏太さんのがなりが特徴。
流れるように歌い上げる慎一郎さんパートとのギャップにより、インパクトが高められています。
「細胞」は、キーが高く、慎一郎さんの限界に挑戦しているようなのですが、ギリギリの部分でせめぎ合っている様子が、曲で表現しようとしていることとシンクロして、鬼気迫る、圧倒的な世界観を見せつけていました。
結果論ではありますが、3.11に近い日付でのライブとなったこの日。
当時、引退して東北に拠点を移していた慎一郎さんが、被災者のリアルな視点で描いた「3月の雪」が演奏されたことは、とても意味深に感じます。
運命だったというか、曲が呼び込んだ奇跡ともいえるのか、震災から10年。
改めて想いを馳せるには、絶妙のタイミングでした。
間をあけずに演奏された「氷雨」も、実は被災者ではない杏太さんが感じ取った内容を大きく反映している楽曲とのこと。
演奏だけでなく、表情で語る力強さが、強烈に目に、耳に焼き付いています。
ラストの「紡ぐイノチ」は、意外な選曲。
音数を減らした杏太さんのギターと、そのフレーズにハマっているのかいないのか、少し読みにくいメロディを歌う慎一郎さん。
序盤では、それぞれの紡ぐ音がバラバラに聞こえているのですが、楽曲が展開されるに従い、やがてひとつになっていく。
このアレンジと、ひとつになってからの説得力が、とにかく凄かった。
当時は理解しきれていなかった楽曲のポテンシャルを、今更思い知ったといったところで、二重にも三重にも意義深いライブになったな、と素直に思うのです。
コロナ禍の状況もあり、曲数的には少な目。
ただし、MCが長いとか、そういう意味ではなく、充実感で十分なボリュームを感じさせてくれた単独公演だったのかな。
匂わせているアルバムの制作についても、詳細が楽しみ。
どういう時代であっても、精力的に活動してくれるのは嬉しい限りです。
1. 向日葵
2. ラストシーズン
3. 歪んだ世界
4. 茜さす部屋で
5. 細胞
6. 3月の雪
7. 氷雨
8. 紡ぐイノチ