ASH / BAISER | 安眠妨害水族館

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ASH/BAISER

 

1. Fall

2. Dye

3. Amnesia

4. Metamorphosis

5. Mechanixx

6. Answer

7. Dementia

8. 狂人日記

9. Slay

10. Fetus

11. Promise

12. Rebirth

 

BAISERが1995年に発表した2ndアルバム。

初回盤はスリーブケース仕様となっています。

 

脱退後にJagged Little Pillを結成するGt.秀楼さん、Ba.灰二さんが在籍していた時期の作品。

ドラムはAKIHIROさんから俊美さんにチェンジしていますが、初期BAISERの集大成と言ってしまって良いでしょう。

1stアルバム「接吻~くちづけ~」が未熟すぎたというのはあるものの、音質面では大幅に改善。

音楽性についても、ゴス/インダストリアルをルーツとしつつ、正統派の黒服系バンドとして昇華しており、メンバーチェンジ後のポップで煌びやかなイメージとは正反対のスタイルを確立していました。

 

サウンドとしては、インストナンバー「Fall」が象徴するように、無機質でノイジー。

「Dye」、「Mechanixx」、「Slay」のようにハードに攻める楽曲も相応に多いのですが、シャウトをまくし立てていたとしても、どこか冷たさがあるというか、感情が一定に保たれているのです。

メロディラインも、ギターのフレーズも、あえて抑揚をつけずに平坦にしている印象。

バラードを歌うのであれば、Vo.紫さんの表現力上の課題となる部分もあるのでしょうが、デカダンな世界観を徹底している本作においては、その淡々とした演奏も、演出のひとつになっているのですよ。

 

他方で、テンポの緩急については、うまく散らばせていますね。

12曲のボリュームの中、ダラっとした空気にならないよう、世界観重視の楽曲とスピード感を活かしたナンバーのバランスを配慮。

猟奇的な歌詞を、語りとしてじっくり綴っていく「狂人日記」から、激しさに振り切っていく「Slay」への流れで見て取れるように、ひとつひとつの強弱を意識して構成を組み立てています。

 

終盤になって、「Promise」のような王道的な疾走チューンが放り込まれるのも、満を持して、という頃合い。

振り返って聴いてみれば後期の音楽性への伏線にもなっているようで、絶妙な采配だったな、と。

ラストの「Rebirth」が、これをクロージングに持ってくるか、と唸らせるマニアックさを孕んでいるので、その直前で正統派の楽曲が気持ち良さを駆り立てているのも、見事な伏線となっていました。

 

技術的には、まだまだ稚拙な点も多いのだが、ほころびのある退廃的な世界を表現していると思わせる演出の工夫。

持ちうる武器で最大限の効果を、という意味では、これ以上ないパフォーマンスを発揮している1枚です。

もっとも、ここから何枚も名作を送り込むことができたか、と問われると限界が近かった感はあり。

紫さん以外全員の脱退や、それに伴うメロディ主義のスタイルへの転換は、必然だったのかもしれません。

 

<過去のBAISERに関するレビュー>
ペガサス


psychoballet

くちづけ
接吻~くちづけ~