華 / BAISER | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

華/BAISER
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1. 君のいない世界

2. プリズム

3. 毒

4. プログラム

5. フローラ

6. 眠りの瞬間

7. レプリカ

8. ラグナロク

9. 赤い破片

10. エンジェル


ベーゼと読むんですよ、ベーゼ。

たまにCD屋さんで「ハ」のところに置かれているから注意。

"バイザー"って読まれたんだろうな。


もともとはハードでダークな路線の激しさ重視のバンドだったのですが、ボーカル・紫を残して全員が脱退。

メンバーチェンジ後は、メロディ重視のポップ路線に転向しました。

ドラムの桂さんがex-SHAZNAだったこともあり、フォロワー的な扱いを受けることもあったでしょうか。

90年代後半のV系ブームに乗じてメジャーデビューを果たしましたが、結果を出せず解散してしまいます。


とにかくメロディが最優先の曲構成になっていて、聴きやすいキャッチーな楽曲が多かったのが特徴的。

本作は、メジャーで残した唯一のアルバムですが、さすがメジャーといったクオリティになっていて、今まで感じていた音質の悪さ、アレンジの薄さが解消された。

激しいだけの楽曲は収録されておらず、メロディアスなナンバーばかりで耳馴染みも良い。

まさに彼らの最高傑作とでも言うべきアルバムだと思いますよ。


特に人気があったのが「フローラ」。

疾走感のある王道V系メロディアス路線で、とても気持ちいい。

デビュー曲の「プリズム」をはじめ、「毒」、「エンジェル」といったシングル曲も、メロディが立っていてとてもキャッチー。

一方で、ポップすぎてつまらないという印象もなく、ほんのり含まれるダークな世界観が、これぞV系!という要素になっていました。

「眠りの瞬間」や「赤い破片」といったバラードにも初挑戦しており、「プログラム」はボーカルとドラムにエフェクトがかかって、機械的で渇いた印象に仕上げている独特な楽曲。

「ラグナロク」のような激しい曲担当として収録されたナンバーもあって、幕の内弁当のような多彩さ、バラエティの豊富さを持つアルバムでした。


個人的には「レプリカ」の、泣きのギターと淡々としたリズム、そしてもの悲しげなメロディがお気に入り。

フレーズは淡々としているのに、サビでは光が差すようなイメージも持ちました。

上モノの重ね方も上手ですね。

位置づけとして、とても地味な楽曲ですが、こういう曲、好きなのです。


ちなみに、1曲目「君のいない世界」は、歌詞カードに歌詞が書いてありますが、実は導入のインストナンバー。

では、この歌詞はなんだろう、と思っていると、ラストにシークレットトラックとして、1曲目のインストとつながる同曲の完全版が収録されているという。

こういうのも、期待⇒がっかり⇒サプライズ!っていう、聴き手のテンションを上げる遊び心で面白いと思いますね。


ネックになりそうなのは、Vo.紫さんの歌い癖か。

アクが強いというか、ベタっとした歌い方で、杓子定規的に捉えれば、歌唱力が高いとは言えません。

音を大きく外すわけではないものの、あまりきちんと腹式呼吸ができておらず、苦しそうな印象。

そういう意味では、表現力、説得力に欠けてしまいます。

歌詞も、時代を感じるクドいラブソング的なものも相応に多く、あまり深みには至らず。

この辺は、同時代のどのバンドも割とそうなので、当時の近い系統のバンドが聴ければ、そんなに引っかかる部分ではないのかもしれませんけれど、作曲センスが良かっただけにもったいないな、と。


お亡くなりになったメンバーもいるようで、オリジナルメンバーでの復活はありえなくなってしまいましたが、時代を盛り上げたバンドのひとつ。

レジェンドバンドとして語られることは少なくても、押さえておきたい作品です。