OVER/mitsu
1. 蜃気楼
2. 鼓動
3. リバーシブル
4. じゃないか
ex-ν[NEU]のヴォーカリスト、mitsuによるソロEP。
特徴的なハスキーボイスにより、強い存在感を放っていたmitsuさん。
本作は、アプローチがバラバラの4曲を、彼の歌声で繋いだEP作品ということで、音楽性の幅を再確認できる1枚に仕上がっています。
率直に言えば、V系然としている楽曲はなく、ポップス寄りの作風。
だが、サウンド面では何でもありなのが本来のV系シーン、ソロワークスならではのチャレンジ精神は、排除すべき異質なものではなく、取り入れるべき興味深いものとして捉えてみると良いのでは。
まず、リードトラックの「蜃気楼」から、ラテン風のリズムとストリングスを取り込んだサウンドワークで、独特の世界観を創出。
バンドでは表現しきれなかったであろう異国情緒を描いていくと、続く「鼓動」では、むしろバンド時代以上にストレートなバンドサウンドを表現。
同期も用いていますが、デジタル意識の強かったν[NEU]と比べると、ベースとドラムが素直に引っ張っていくアレンジは新鮮で、爽やかで瑞々しい感覚を運んできます。
シンセポップを再現した「リバーシブル」は、あえて古臭く仕上げたギラギラしたレトロフューチャー感が魅力。
お洒落なサウンドと、ラフな歌唱のギャップで心の距離を縮める「じゃないか」も、mitsuさんの新たな一面を垣間見たといったところでしょう。
どこにこんな引き出しを隠し持っていたのだろう。
彼には、どういう音楽的なバックボーンがあるのだろう。
そう思わせるには十分な、お洒落さとダサさを両立させた不思議な作品。
コロナ禍の影響でν[NEU]の復活は一旦は頓挫してしまいましたが、mitsuさんのソロでの経験が還元されたν[NEU]も、いつか見てみたいものです。