メーズ/ハイダンシークドロシー
1. メーズ
おぼえていますか? あなたのわたしを。
コロナ禍の中で結成された、ハイダンシークドロシーの1stデジタルシングル。
実験台モルモットのVo.谷琢磨、ex-犬神サアカス團のGt.情次2号、Ba.ジン、ex-KraのDr.靖乃というメンバー編成。
それぞれ積み重ねてきたキャリアがあるベテランたちですが、それぞれの活動シーンは近いようで様々。
どのような音楽性になるのか想像もつかない、というワクワク感からのスタートとなりました。
本作は、1stアルバムのリリースに先行する形で配信されたシングルの第一弾。
かくれんぼの途中、覗き込んだ鏡の向こうの世界に誘われる。
ノスタルジックでメルヘンな世界観に、どこか不気味な空気感が纏わりつく、ドラマティックなナンバーです。
かれらのテーマでもある"かくれんぼ"は、遊戯としてのそれというよりも、何かから隠れる、逃げ込むという意味合いも持っていそうですね。
サウンドについては、ほんのりとジャジーな要素を持つ、クラシカルな楽曲。
異国におけるレトロ感というか、古めかしさはあるのだけれど、様式美的でもあるのかな。
靖乃さんらしい跳ねたリズムが、ダウナーに傾きがちな曲調にメルヘン色を足していて、メンバーのキャリアが、こういう風に化学反応を起こすものかと感心してしまいました。
言葉ではなかなか伝わらないのだけれど、実験台モルモット、犬神サアカス團、Kraの持ち味が、ハイダンシークドロシーのサウンドとして、ひとつに融合していると、はっきり理解できるのですよ。
その中で、武器として押し出しているのは、やはり谷さんの3オクターブの声域を活かしたメロディライン。
地を這うような低音から、本当に男声かと思うレベルのハイトーンまで、ジェットコースターのように歌唱スタイルが切り替わっていく。
真似しようと思っても真似できない圧倒的な歌唱力は、もはや圧巻です。
同じメロディでも、キーを変えて繰り返すことで、表情がガラっと変わるから面白い。
キャッチーさには欠けるのかもしれませんが、インパクトを与えるには十分でしょう。
なお、通常の配信版に加え、非圧縮の音源データ、ジャケットや歌詞の画像データ、インストヴァージョン等がZIPファイルに同梱された"デラックスエディションパック版"もリリース。
このような環境下において、どのような活動展開になっていくかも気になるところですが、まずは、「メーズ」で提示されたハイダンシークドロシーの音楽を紐解きながら、アルバムの発表を楽しみに待っていようと思います。