最後の晩餐/キナルラ
1. 残酷な現実
2. ヘルイブ
3. 最後の歌
2007年にリリースされたキナルラのラストシングル。
グロテスクでホラーテイストの強い世界観を武器としていた彼らですが、後期はだいぶスタイリッシュになっていた印象。
特に、リードトラックとなる「残酷な現実」のストレートな疾走ロック感は、初期の音楽性しか知らなければ驚くのではなかろうか。
マイナーコードが基調となっており、ポップになったと形容するのは妥当ではないと思うのだけれど、ヴィジュアル系の王道的なアプローチで突っ切っており、ドロドロとした世界観を期待しすぎると肩透かしになってしまうでしょう。
ただし、これはこれで、先入観を持たなければ格好良い。
とっつきやすさがある分、入り口として機能しそうなナンバーとも言えたので、むしろ早い段階でこの楽曲をドロップできていれば、ディープな世界観に沈み込ませるための撒き餌として使えたかもしれないな、と少しもったいなさも感じます。
従来からの継続性としては、「ヘルイブ」が担う位置づけでしょうかね。
文字通り、ラストソングとなってしまった「最後の歌」が、1曲目同様、V系シーンとしてはベタな部類に入るであろうデカダンなバラードだったことを踏まえると、ここにもう一歩踏み込んだインパクトが欲しかったな、と。
クオリティの高まりとともに、ラストシングル故の悲壮感やメッセージ性も感じられる作品。
聴きやすすぎたがために、リスナーが彼らに求めている音楽性とはズレが生じてしまったというのは皮肉なのですが、今だから再評価できる部分はきっとあるはず。
万人受けはしないけど確固たる個性を持つことと、規模を大きくするために大衆性を持たせること。
芸術作品における永遠のテーマではありますが、そのバランスの難しさについて考えさせられる1枚です。
<過去のキナルラに関するレビュー>