恐怖遊園地 / キナルラ | 安眠妨害水族館

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恐怖遊園地/キナルラ
 

1. 恐怖遊園地
2. 魔の巣
3. 少女監禁
4. ヘルスセンター
5. 畸人病

2001年~2007年の期間に活動していたキナルラの1stミニアルバム。
本作は、2003年に、1,000枚限定でリリースされました。

Vo.ジェームス、Gt.青井、Ba.コゴエ、Dr.どこでもドラの4人編成。
メンバー名だけを見れば、ナンセンスでネタ色が強そうなイメージがあるのですが、いざ聴いてみると、まったくそんなことはなく。
おどろおどろしく、猟奇的なオカルトホラー。
サウンド面はコテコテ寄りながら、世界観としては、かなりアングラ臭が強い内容に仕上がっています。
御茶漬海苔先生のジャケットイラストともマッチしているのではないでしょうかね。

遊園地のBGMっぽくも、なんとなく通り魔が出てきそうな不気味さがあるSE、「恐怖遊園地」で雰囲気を作ると、激しくまくし立てる「魔の巣」、「少女監禁」と続く。
ダークで、ハード。
ホラー的な雰囲気を高めようとすると、雰囲気モノのミディアムナンバーが多くなりがちなのだけれど、これだけの激しさを持って、和風の恐怖を演出しているのは、なかなか面白い。
スピード感があるズタズタな演奏に、わざと癖を強めて歌うようなボーカルと、90年代後半のジャリバン要素が濃いものの、かえって、この泥臭さが味になっているような気もします。

「ヘルスセンター」は、スローでドロドロと。
三拍子でじわりじわりと進行される展開は、背筋に迫るような怖さがあるな。
拒食症をテーマにしているようで、曲も、歌詞も、気持ち悪さを押し出していますね。
アクセントの位置づけではありますが、ある種、ジャケットから想像できる世界観にもっとも近いイメージの楽曲とも言え、これがあることで世界観が明確になるといったところか。

「畸人病」は、展開が多く、やや難解。
ベースはベタなコテコテサウンドにあるのだけれど、奇妙なコーラスワークや、多用される転調により、マニアックに聴こえてきます。
ラストシーンは、王道的に疾走していくところなど、最後に配置された楽曲として、しっかり役割を果たしていると言えましょう。
締めるべきところは、きっちり締められている。

スキル的な意味では、まだまだ荒削り。
ピッチの甘さは、わざとなのか、ただ下手なだけなのか、判別つきにくい面もあり、手放しで傑作と評価できるような作品ではありません。
演奏についても、あまり、まとまりは良くない印象ですね。

しかし、個性の面で、もっともキナルラらしさが発揮されているのは本作なのかと。
後期は、わかりやすいヴィジュアル系的アプローチを用いることも増え、聴きやすくなった反面、不気味さ、おどろおどろしさといった強すぎるアクが弱まってしまった部分があります。
一般受けは期待できないし、和風ホラーの世界観が苦手な人にはおススメできませんが、キラキラ系よりもジャリバンドが肌に合うというなら、このCDも選択肢のひとつになりうるのかも。