ILLUSION Ⅲ/ILLUMINA
1. TIME LIMIT
2. I miss You
3. FALL
4. 雪に吐息を
1996年にリリースされた、ILLUMINAの3rdCT。
ジャケットに採用された二次元化したメンバーのイラストも、特徴のひとつでしょうか。
A面、B面にそれぞれ2曲ずつ収録されており、ボリューム的にはミニアルバムサイズといったところです。
ビートロックをベースに、スタイリッシュなロックを展開していた彼ら。
この段階で、既に演奏力や楽曲の構成力は高いレベルにあると言え、後にメジャー進出となったのも納得の仕上がりですね。
結果的に、90年代後半デビュー組のソフト・ヴィジュアル系バンドとしては、やや地味な存在になってはいますが、一度でも彼らの音楽を耳にしたリスナーであれば、それが必ずしも実力で劣っていたわけではないと理解できるはず。
Vo.Naoさんのハスキーな歌声も、メジャーで通用しそうな普遍性を持っていただけに、きっかけが掴み切れなかったのが惜しまれます。
「TIME LIMIT」は、メジャーでもシングルカットされた王道的なビートロック。
期待感を高めるギターのアルペジオから、一気に高揚感を持ったサビに突入していきます。
リズム体のキメだったり、インパクト重視のギターソロだったり、ギミックは多め。
メロディーはキャッチーで、聴きやすい疾走感を維持する展開も、V系リスナーにはとっつきやすいこと請け合い。
音質的な良し悪しはありますが、このままメジャーでリリースできそうなクオリティでした。
続く「I miss You」は、スピードはあるけれど、重さも感じさせるマニアックなリズムが肝。
聴きやすいロックとしてのテンポ感は維持しつつ、精神的な重苦しさを楽器隊が表現しているようなアレンジの上手さが見られます。
終盤のサビでは、吹っ切れたように、そのマニアックなリズムを王道的な疾走リズムに切り替える演出も効いている。
カップリング曲的なイメージは確かにあるのだが、それはそれとして、人気が出そうな楽曲だな、と。
仕切り直しとなる「FALL」は、サビでのコーラスとの掛け合いがたまらない。
全体的にはシンプルでベタな構成に仕上がった印象ではあるのですが、このコーラスワークによって、ドラマ性が増しています。
また、シンプルがいけないというわけではなく、ここまでが演出が多めに盛り込まれていた反動で、期待どおりに進行する楽曲が入っていたことでのカタルシスがあったことも事実。
ビートロックという前提を崩さずに、楽曲ごとに色味を変えていくアレンジ力のたまものなのですよ。
最後は、「雪に吐息を」。
この楽曲がまた、切ないミディアムナンバーで。
本作の構成上で足りなかったピースを埋め込んでくれたといった感覚でした。
もちろん、切なさに特化するとしても、リズムはタイトさをキープしているし、ギターはバンド感をしっかり出したアピールも。
しんみりしすぎず、バンドサウンドの延長線上で違いを出せたことで、自信にも繋がっているのでは。
なお、本作はデモテープながら2,000本のセールスを記録。
そのため、メジャーデビューしたバンドのCTとしては、比較的、中古で手に入れやすいのかな。
特にB面の楽曲は、現状なかなか耳にする機会もないと思われますので、もし再生環境が整っていれば、手を伸ばしても損はないであろう作品です。
<過去のILLUMINAに関するレビュー>