結局何が言いたいの?/甘い暴力
1. 尽くし癖
2. 暴れ少女
3. 絶対純愛光線
4. 結局何が言いたいの?
少年記のメンバーを中心に、黒姫の夢遊病、および白日ノ夢としての活動を経て、2016年に結成された甘い暴力。
本作は、2018年にリリースされた7thEPです。
3年半の活動の中で、流通音源のリリースはなし。
ただし、ライブ会場限定作品はコンスタントに発表しており、ある種、新たなバンドの活動モデルを生み出した彼ら。
音楽性についても、ライブに振り切った活動方針を反映するかのようなものが多いですね。
ノリが良い、暴れやすい、ギミックにも工夫を凝らしている。
ジャンルとしては雑多としか言いようがないのですが、V系のフォーマットは踏襲しており、一見さんでも体を動かしやすいというのも意識していたりするのかな。
ライブが前提、となっている点は、歌詞も同様。
大衆ウケを狙って新規層を開拓しようとか、プロモーションのための話題性を作ろうとか、戦略的な部分にリソースを割かなくていい分、コンセプトがブレることがない。
リスナー層も絞り込めるため、ピンポイントの共感力を高めることができていますね。
言ってしまえば、バンギャネタや、その闇を切り取った内容が多いのだけれど、普通のバンドがやったら主語が大きく感じられてしまうような歌詞でも、このCDを手に取る権利があるリスナーの中では、共有しやすいテーマだったりするのかもしれません。
「尽くし癖」は、ダークなリフと、ヘヴィーなリズムで進行。
サビでは、メロディアスに疾走していくという王道展開で、歌詞にさえ抵抗がなければ、すっと聴けるのでは。
続く「暴れ少女」も、タイトル通りに激しく攻めるスピード感のあるナンバー。
やはりサビでは、持ち前のメロディを強さを発揮していました。
もっとも癖が強く、好き嫌い分かれそうなのが「絶対純愛光線」。
ここまで砕けた歌詞やポップなメロディ運びは、ファンからはどう受け止められているのだろう、とは気になるぐらい。
少なくとも、硬派なV系を求めているリスナーには、アレルギー反応が出そうなノリなのですよ。
ただし、この曲が入ることによって、ラストに収録された表題曲、「結局何が言いたいの?」のシリアス性が増したとも言える。
最後の最後で、メッセージ性を含んだ、エモーショナルなロックンロールを持ってくるのがニクいなと。
シーンとしては珍しいタイプの楽曲だとは思うのだけれど、それを見事に昇華して、自分たちのフィールドに持ち込んでくるのは、少年記時代からの彼らの真骨頂です。
色々な意味で、賛否両論のスタンス。
黒姫の夢遊病や白日ノ夢が、コンセプトをがっちり固めた世界観重視のプロジェクトだっただけに、甘い暴力のスタイルにギャップを感じてしまうのも、無理はないでしょう。
とはいえ、誰も通っていない道を模索しようとする姿勢には、実はヴィジュアル系の本質があるとも言えるわけで。
過去からの蓄積と、今の彼らがやろうとしていること。
そのどちらもが等身大で詰まっている本作は、リスナーが彼らに抱いていた「結局何が言いたいの?」の答えを示してくれているような気もします。