未来へ…(2nd Press)/ze零ro
1. 未来へ…
2. 演舞
2002年にリリースされた、ze零roの6thデモテープ。
2nd Press盤は、B面に「演舞」が追加収録されています。
ex-LuinspearのCamusさんが天羽名義で制作に携わっていたことでも、話題を集めていた彼ら。
配布盤100本、1st Press盤300本、2nd Press盤500本。
合計、900本を販売し、すべてソールドアウトさせた事実は、当時の勢いを示していると言えるでしょう。
それまでの作品は、手作り感に溢れたカラーコピーのジャケットに市販のカセットテープというものが多かったのですが、本作はきちんとプレスされていました。
その「未来へ…」は、卒業をテーマに制作されたバラードナンバー。
まさに卒業式の合唱を思わせるスローテンポの歌モノに仕上げた彼らの新境地で、Vo.いづみさんの伸びやかな歌声が活きています。
ただし、もともとは配布音源だったことを踏まえれば、企画モノとしての意味合いが強かったのかも。
特に歌詞には若さが出ており、クラシカルで耽美な世界観を求めていた彼らが、急に等身大の楽曲を書き下ろしてきたのだから、リスナーに戸惑いがなかったと言えば、嘘になるでしょう。
演奏もまだまだ拙さが前に出ており、ヴォーカル以外の魅せ場は少なく、ピアノとバンド演奏が噛み合っていない場面もしばしば見受けられますね。
とはいえ、音楽性の面でCamusさんにばかり頼るわけにもいかなかったのも事実。
ここは、武器がひとつ増えたと捉えましょうか。
実際にこれ以降の作品では、青春ポップス的な作風の楽曲も増えていくze零ro。
その路線における源流と捉えておいたほうが、ストレスなくフラットに聴けるのかと。
B面に収録された「演舞」は、一転してコテコテのダークチューン。
A面の青春バラードとのギャップが物凄くて面喰ってしまうのですが、バランスをとったというのか、両極端を見せようとしたというのか。
ダークな語りに、シャウトの掛け合いも。
突っ込んだリズムとともにメロディアスに疾走するサビは、王道そのものです。
いずれにしても、これが入ったことによって、表題曲で与えた脱ヴィジュアル系への不安を払拭したのは間違いなく、半年後にリリースして予約完売を果たした1stCDへのはずみをつける効果はあったのかもしれません。
個人的には、彼らにクラシカルでメロディアスなLuinspearの後継的な音楽性を求めすぎてしまっていたので、消化不良だったというのが本音。
リスナーの幅が拡大しつつある中、追加収録するのなら定番曲の再録でいいのにな、と。
なんというか、その後の展開も含めて、勝負どころでなかなか持ち味を出し切れなかった感があるのですよ。
しかしながら、知名度が上がっていくタイミングで、何か個性を打ち出そうと勝負した結果でもあったのだろうな。
振り返って聴いてみると、その後の音楽性に繋がる試行錯誤が見て取れる。
ひとつのターニングポイントになった、という意味では、しっかりと卒業ソングの役割を果たしたと言えるでしょう。
<過去のze零roに関するレビュー>
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