Liberty Trip/P.U.A
1. Liberty Trip
2. Close to you III
3. Close to you IV
4. ALICE
後にZipangと改名するP.U.Aの1stシングル。
1999年の作品です。
Pure→P.U.A→pjuerとバンド名をマイナーチェンジしていく彼ら。
最終的にはZipangに落ち着くのですが、それまでに様々な試行錯誤があったことが伺えます。
本作の作風も、Zipangのメタリックなサウンドとは異なり、強く打ち出されているのは白系要素。
過渡期の1枚であったと言えるでしょう。
表題曲である「Liberty Trip」は、透明感のあるアルペジオとヴォーカルのみでスタートするポップロックチューン。
バンドサウンドに移行するまでに1分半を擁するため、出だしからグダってしまうところはあるのですが、世界観に入り込むための心の準備と捉えておけばよいのかな。
本編に入ってしまえば、演奏陣については相応に安定してきます。
特にギターのフレーズが特徴的で、ポップネスが異国情緒の中に溶け込み、幻想的な広がりを見せていく。
ギターソロも派手さがあって、耳に残りますね。
カップリングとして挿入された「Close to you III」、「Close to you IV」は連作なのかな。
2曲は繋がっているような雰囲気で、「Close to you III」は雨のSEにVo.葵さんのアカペラが重なるという導入的なナンバー。
2分ほど、じっくりと引き込むと、ソリッドで激しい「Close to you IV」に突入していきます。
途中でサウンドエフェクトを用いるなど、演出面でも凝った仕掛けを持ち寄って、彼らなりのダークさを表現。
重低音を意識したフレーズが多く、マニアックさが隠し切れないところもポイントですな。
ちなみに、本作の前にデモテープを発表しているはずですが、ⅠとⅡもどこかで聴けたりするのでしょうか。
ラストの「ALICE」は、ここまでの流れの良いところどり。
疾走感のあるリズムと耽美的なメロディの相性が抜群で、演出過剰気味なところはあるにせよ、このベタさが味になっていました。
むやみやたらとダークさを振り回すのではなく、ポップな部分ではポップに振り切ったのも良し。
王道的なヴィジュアルロックが気に入るのであれば、このサビはたまらないのでは。
歌唱力が演奏隊のテクニックに追い付いていないのがもったいない。
音質の悪さも相まって、ヴォーカルが埋もれてしまった形。
1曲目でアカペラからバンドサウンドへ、という演出を使ったばかりの状況で、2曲目も導入的なアカペラが長々と続いていく構成になっていたのも、配慮が必要だったのではなかろうか。
曲は悪くないのですが、もう少しこだわりが見えてくると更に深みが増したかと。
もっとも、Zipangとの音楽性の違いを聴くだけでも面白かったりしますので、ルーツを辿るのが好きな方はどうぞ。