放送禁止の死んだふりをする潔癖症の実験体と、箱の中の毒入りショートケーキと、逆回転でまわるエゴイストのパラノイアボックス/Merry Go Round
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放送禁止の死んだふりをする潔癖症の実験体と、箱の中の毒入りショートケーキと、逆回転でまわるエゴ...
4,800円
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1. 注文の多い料理店
2. インスパイア
3. ノイローゼ
4. 白い華を散らして
5. 飴と鞭
6. M's COMPLEX
7. 籠
ブログタイトルの文字数制限に引っかかるほどのタイトルの長さ。
Merry Go Roundが1998年にリリースしたアルバム作品です。
1996年に発表されたCT「放送禁止の死んだふりをする潔癖性の実験体と箱の中の毒入りショートケーキ」に、新曲3曲を追加してCD化。
スリーブケース仕様の凝ったデザインにて、メジャーから15,000枚限定での流通となりました。
マニアックの象徴とされる名古屋系バンドの作品が、それだけのニーズを想定されていたというのも、当時のV系バブルを物語っているでしょう。
初期の楽曲だけに、衝動性が高いのが前半の4曲。
まずは、宮沢賢治の代表作をモチーフに、ぼそぼそとした語り口調で作品の裏側にあるホラー感を表現する「注文の多い料理店」。
アイディアの勝利といったところではあるのですが、徐々に不気味さが増していき、不協和音を奏でるピアノによるラストシーンまでの流れはおぞましいとしか言いようがなく、導入としてのインパクトは抜群でした。
続く「インスパイア」は、ワンフレーズの中毒性で狂気を表現するお得意のナンバー。
テンポアップの使い方が巧みで、聴いているだけでもキリキリと焦燥感に追い立てられるギミックとなっています。
「ノイローゼ」も同様のスリリングさを孕んでいるのですが、こちらは更にパンを左右に振って、物理的な気持ち悪さを上乗せ。
Vo.真さんの吐き捨てるような歌唱法は、メロディを歌い上げるという意味での歌唱力に左右されない分、カリスマ性の有無で勝負が決まってしまうという側面があるのですが、初期の段階でこれを成立させてしまっていることに驚きを隠せません。
ドロドロ、じわじわと沈み込むように暗さだけを帯びているデカダンなバラードは、「白い華を散らして」。
これを退屈ととるか、深みがあるととるかで彼らへの耐性がわかりそう。
メジャー流通なのに過激な表現があったのか、"ピー"音が挿入されているのも、かえって想像力を刺激されますね。
追加曲となるのは、「飴と鞭」からの3曲。
サウンドやフレーズの好みなどはアップデートされた感があり、「飴と鞭」にはストレートな構成を。
「M's COMPLEX」には色彩をもたらすギターリフを。
「籠」には演出過剰とも言えるほどのギミックを、強みとして付加しています。
それらにより多少は洗練された感がある一方で、変態性が衰えていないのが恐ろしい。
変拍子にテンポチェンジ、そして、もはや演技と言った方がよさそうな表現力。
それぞれの切れ味は、格段に上がっているのですもの。
名前の長さで話題に上がることは多いものの、収録曲まで言及される機会が少ない作品。
実際、収録曲単体では前作「-"S"-」に入った「ラ・リ・ル・レ・ロ」や「桜の満開の木の下で」の知名度のほうが高いと言えるでしょう。
とはいえ、彼らの黄金期を語るうえで避けては通れないアルバムには違いない。
多くのリスナーにとって、アングラの底に叩き落とされるきっかけとなった1枚です。
<過去のMerry Go Round に関するレビュー>
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