valse/Agnus÷Dei
valse
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1. "666"
2. Fades
3. Valkyrie
4. 呪…
5. 救世主
6. EDEN~新しい季節~
1998年にリリースされたAgnus÷Deiのミニアルバム。
ex-Loz'a≠VeriaのVo.芹 彼方さんが、Tonny名義で在籍していました。
音楽性としては、語りや発狂シャウトを駆使して、猟奇的な世界観を表現する耽美寄りのコテコテ系。
エナメルレコードの系譜、と言った方が伝わりやすいかもしれません。
彼らの個性的だった部分は、その呪術的なフレーズでしょう。
派手なリフを好むギターや、チャーチオルガンを用いたアレンジ、台詞を交えての過剰演出など、展開はシアトリカル。
一方で、歌メロには抑揚がなく、なんとも淡々としているのです。
そのギャップが、黒魔術のような禍々しさを纏っていると言いますか、デカダンな表現として効いている気がしてくるから不思議なものですよ。
教会風のSE「"666"」、シャウトの掛け合いを中心にハードに攻める「Fades」、不協和音の中でじわじわドロドロと狂気性を増していく「Valkyrie」と、マニアックな楽曲へ少しずつ潜っていこうとするアプローチ。
最下層にあるのはこれ、と言わんばかりの「呪…」に、ハードさに振り切りつつも一筋縄ではいかない「救世主」と、統一感のある楽曲たちで構成されていました。
バリエーションを絞る代わりに、どっぷりと世界観に浸らせる。
ここまでの狙いは、割とはっきりしていたのでは。
その中で問題作とも言える楽曲だったのが、ラストの「EDEN~新しい季節~」。
ダークやデカダンがメインに据えられていると認識したうえで最後まで辿り着いただけに、このポップさ全開っぷりには驚かされましたよ。
ただし、残念ながら、両極端を扱いこなすだけのスキルを身に着けておらず、どのパートもぎこちない。
歌だけでなく、演奏もがグダグダになってしまっては演出上での誤魔化しも効かず、むしろ蛇足という評価になってしまった部分は否めません。
最後の最後に、統一性を持たせきれなかったのがもったいない。
「EDEN~新しい季節~」が、それまでの流れを汲んだ楽曲に差し替えられていたら、もっと語られる機会も多かった作品だっただろうに。