未完成のモダン派パズル-The Unfinished Modern Puzzle-/MASQUE
1. ROMANESQUE
2. 夕焼けの綺麗な丘で
3. 東京夢物語
4. 僕の華になれ
ex-TELEPHONE:LOVERSのギタリスト、Junichi Asakuraらで結成されたMASQUE。
本作は、1996年にリリースされたミニアルバムです。
現在でこそ、サブジャンルとして確立されている昭和歌謡系ですが、ヴィジュアルシーンの中で一般化していくのはゼロ年代以降。
その意味で、90年代半ばにレトロフューチャーな音楽性を武器にしていた彼らは、時代を先取りしすぎていたのかもしれません。
特に、1曲目の「ROMANESQUE」は、70年代後半~80年代前半のレトロモダンな雰囲気を詰め込んで。
哀愁よりもアダルティーな要素を強めているのが現代のそれとは異なりますが、まだレトロがレトロとして定着していない時代、インパクトはあったのでしょう。
サビ前で溜める楽曲構成も、ムードたっぷりといったところです。
「夕焼けの綺麗な丘で」、「東京夢物語」は、90年代ポップスの要素も強まり、アレンジはややマイルド。
このような楽曲であれば、当時としてはリアルタイム感があったりするのかな。
キャッチーなメロディには時代を感じないわけではありませんが、なんだかんだで耳馴染みが良い。
一方で、時折主張するギターのフレーズであったり、終盤での盛り上がりであったりを見るに、ロックバンドとしての矜持も持ち合わせているのがよくわかるなど、ポイントを押さえているのですよ。
ラストの「僕の華になれ」は、クリアなギターの音色がギラギラしたシンセと重なり、これはこれでノスタルジック。
演奏隊の魅せ場も多く、これが本作におけるキラーチューンと言っても良さそうです。
ブレイク時の間の取り方も絶妙。
ちょっとタイミングをズラすことで、曲とマッチする艶やかさを手に入れていました。
1996年当時には、どうしても古臭く感じてしまうという声もあったのかと。
ただし、それが1周回って、普遍的なアプローチになりつつあるのが面白い。
音質や音圧によるチープさは仕方ないとして、案外、昔よりも現在のほうが聴きやすかったりするのかも。
複数の意味で、温故知新を感じさせる1枚です。