「無機質な部屋と横たわる君の隣で」「ENCAGE【lier】」 / [enver] brain | 安眠妨害水族館

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無機質な部屋と横たわる君の隣で/[enver] brain

 

1. 無機質な部屋と横たわる君の隣で

 

 

ENCAGE【lier】/[enver] brain

 

1. ENCAGE【lier】

 

 

ex-焔のVo.カユキさん、Gt.憂佑さんを中心に結成された[enver] brain。

本作は、2016年に会場限定でリリースされ、現在ではオフィシャル通販でも購入できるシングルです。

 

【人間の裏側】を描くコンセプチュアルリリースとして発表された作品群。

各1曲入りのため、世界観に没入させるには断片的すぎるのでは、といった部分はあるのですが、補完するためにオリジナルノベルが付属する仕様となっていました。

 

1stシングルにあたる「無機質な部屋と横たわる君の隣で」は、シンセを前に出した疾走感のあるイントロからスタート。

刹那系の王道といったベタさがあるのだけれど、それが好きでV系を聴いているという層も多いであろう絶妙なライン。

主張したり、引っ込んでみたりというギターの駆け引きも、なかなか的を射ています。

 

ただし、ここは好き嫌いを分けるだろうな、というのがサビの歌メロにおけるリズムの取り方。

実質的にテンポを1/2にしているので、曲の雰囲気がミディアム調に。

これはこれで、抜けていくようなメロディが効いているので、切なさを表現できているのですよ。

一方で、これから盛り上がるぞ、と期待した中で煮え切らなさを感じてしまうリスナーもいたと思われ、初音源ということを踏まえれば、こなれた感を少々出しすぎた部分はあったでしょうか。

 

同日発売ではあるが、2ndシングル扱いとなるのは「ENCAGE【lier】」。

メロディアスな側面を1stで強調したことへの対比として、ダークさ、激しさを押し出していると言えます。

ゴリゴリとしたベースも立っているし、相変わらずギターの押し引きのバランスは絶妙。

比較的ストレートに進行するので、こう行ってほしいという方向にサビで爆発するという安心感もありました。

 

激しいとはいえ、シャウトやデスヴォイズを使わず、メロディを活かそうとする姿勢がうかがえる。

この2曲を聴くことで、彼らが目指そうとしている音楽性は見えてきますね。

どちらかと言えば「ENCAGE【lier】」のほうがシングル的なアプローチだったので、1stと2ndの位置づけを入れ替えたほうが、その思惑はより機能したと想像するのだけれど、この順序にしたのはストーリー的な要因なのかな。

 

なお、付属するオリジナルノベル「CONFESSION」は、一応、続きものになっているようです。

とはいえ、それぞれ歌詞カードの1ページに抽象的なワンシーンの情景が書き綴られているのみで、ボリューム感はあまりなく。

正直なところ、ストーリーを深掘りするには材料が足りないかな、といった感想でした。

これがあることにより、1曲入りのCDが1,000円、2枚で2曲2,000円という価格設定になっているのだとしたら、割高感は否めないかと。

 

何か新しいことを、面白いことを、という意気込みは買うが、肝心の音を聴かせるためのハードルを上げてしまったのが惜しまれる。

曲はなかなかツボを押さえているだけに、もったいないですね。

2016年から2018年の間に、シングルだけを10枚出している彼ら。

Ba.零牙さんの脱退以降はリリースペースが落ちていますが、そろそろ入門編となるアルバム作品があるといいのですけれど。