鬼 / gibkiy gibkiy gibkiy | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

鬼/gibkiy gibkiy gibkiy

 
1. さぁ、そのまま、帰ろう。
2. 電動ではない、鋸の優しい手解き
3. 20160306
4. 鬼
 
gibkiy gibkiy gibkiyのライブ会場限定シングル。
グロテスクなジャケットは、彼らの特権と言えるでしょうか。
 
成熟するにつれ、Vo.kazumaさんによる歌の要素も増えてきた印象。
マニアックさは変わらずにあり、ポップさとは無縁といった音楽性ではあるのですが、一見さんお断りのディープな楽曲だけでなく、比較的聴きやすいナンバーも出来始めています。
 
「さぁ、そのまま、帰ろう。」から「電動ではない、鋸の優しい手解き」への流れは、まさにそのスタイルを地で行く選曲。
変拍子を多用して、難解なリズムが展開される「さぁ、そのまま、帰ろう。」は、確かに邪道であるものの、ライブ感、勢いと結びついていて、意外にも体にすっと入ってくる。
逆に「電動ではない、鋸の優しい手解き」は、演奏はシンプルに仕上げているのだけれど、ずっしり重たい世界観を作り上げることで、拒否反応をあえて呼び起こしているようなイメージ。
もちろん、一度ハマれば抜け出せない中毒性を孕んでいるので、これで聴くのをやめよう、なんて思うことはなく、拒絶すら厭わない濃厚さを武器としているのです。
 
どちらにも共通しているのは、kazumaさんがメロディを歌っているということ。
今後のgibkiy gibkiy gibkiyは、この路線で行くのだな、なんて決めつけてしまったときには、既にもう彼らの手の内でした。
「20160306」は、楽器隊は置いてきぼりで、ひたすらkazumaさんの呻き声。
曲という概念がもはやわからなくなってくる。
ただし、一辺倒に呻いているわけではなく、声の出し方にもドラマ性を感じてしまうのが深みを感じてしまうところ。
日付のようなタイトルも、意味深です。
 
そして、表題曲である「鬼」へ。
悲壮感のあるロックバラードとなっており、"首から明日へ"という、抽象的だけどインパクトのあるフレーズの連呼は、どうしたって脳裏に焼き付きます。
そして、注目すべきは、その歌詞。
明確に関連性が示唆されているわけではないのですが、どうもMerry Go Round時代に発表された「桜の満開の木の下で」の続きモノ的な気配なのですよね。
仮に1987年1月6日から2016年3月6日まで、あの狂気の世界が続いていたとしたら、なんて考えてみると、おぞましさに鳥肌が立つ。
ここにきて、あの世界観を深掘りしてくるか、ととにかく衝撃的でした。
 
唯一無二の音楽、なんてキャッチコピーはこの世界に溢れているけれど、彼ら以上にその言葉が似合うアーティストは、シーンにどれだけいるのだろう。
圧倒的なオリジナリティに、熟練味を増したいぶし銀の演奏力。
それに、過去バンドからのリンクまで隠し材料として含んでいるのだから、ファンからしてみたら感涙モノ。
手に入りにくいのがネックですが、それでもライブ会場で手に入れておきたい1枚です。

 

<過去のgibkiy gibkiy gibkiyに関するレビュー>

連続性の細工

In incontinence

不条理種劇