不条理種劇 / gibkiy gibkiy gibkiy | 安眠妨害水族館

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不条理種劇/gibkiy gibkiy gibkiy

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1. 劇中劇
2. 嫋嫋たる対象
3. 箍を外す場合、穴に群れる具合
4. spoiled me
5. 管
6. 形状において歪な、または不自然な
7. 形の無い、何よりも、愛したのは、お前だけが
8. 脳内に
9. 蟻は血が重要である

highfashionparalyzeを母体に、HIGH FASHION PARALYZEを経て結成されたgibkiy gibkiy gibkiy。
本作は、この名義での初音源となる1stアルバムです。

メンバーはHIGH FASHION PARALYZEと同一。
ただし、highfashionparalyzeにリズム陣をゲスト的に迎えた位置づけであるHIGH FASHION PARALYZEに対して、対等の関係として恒常的なバンドとして成立しているのがgibkiy gibkiy gibkiyという整理なのでしょう。
HIGH FASHION PARALYZEとしてリリースされた「MA&MA&MA」は、実質的な先行シングルにあたるのかな。

収録曲は、highfashionparalyzeとして発表されていた楽曲たちのリテイクが中心。
文字にすると、ベスト盤的なイメージを与えてしまうのだけれど、必ずしもそうではないのがこの作品のポイントだろう。

そもそも、オリジナルがエレキギター1本にどす黒いボーカルが重なる異形の音楽。
率直に言って、ドラム&ベースの音が加わるだけでも、大幅なアレンジを加えたのごとく聴き心地が変わってしまうのである。
そのため、一度聴いたことがあるはずの楽曲すら、新曲として楽しめてしまう新鮮さ。
この特異な経緯で完成されたバンドだからこそ味わえる感覚は、大きなインパクトとなってリスナーを刺激しています。

オリジナルが前衛的すぎただけに、アングラな要素が変わらなくても、聴きやすくなったと思ってしまうから不思議なもので。
もちろん、だからといって大衆受けするような代物になるはずがなく、ヒリヒリ焼き付くダークネスが耳を伝って襲い掛かる。
highfashionparalyzeに存在した禍々しい空気感は失われておらず、漆黒の闇が数メートル先の視界ですら遮っているような黒いサウンドは健在でした。
サウンド面でのアプローチは異なれど、根っこの部分は地続きなのだな、と。

では、オリジナルを知らなければ楽しめないかと言ったら、おそらく、それは違う。
だって、Vo.kazumaさんの呻き声のような歌声からも、Gt.aieさんの乾いたギターの音色からも、以前にも増して、狂気的なエモーションがビシビシ漂っているのだもの。
リズム隊が個性を出そうとすると、当初からのメンバーもそれを凌駕しようとする相乗効果。
セッションというのか、ジャムというのか、アドリブ合戦も多く含まれているのではないかと思わせる各パートのスリリングな鬩ぎ合いも相まって、息を吐くことすら許さない緊張感が作品全体から感じ取れるのです。
単体で勝負しても、余裕でリスナーを引き込むことができる殺傷力の高さ。
聴く人を選ぶのは確かだが、highfashionparalyzeは理解に至れなかったけれど、これならノックダウンされてしまいます、という層だって少なくないはず。

一見、フルアルバムと捉えるには、曲数が足りないように見えるかもしれません。
しかしながら、それで騙されてはいけないわけで。
精神力をギリギリと削られる音楽性も勘案すれば、トータル55分という尺は十分にお腹いっぱいになるレベルのボリューム感。
軽く聴き流そうとすれば、痛い目に合うことは請け合いです。
どうぞ、濃密で濃厚な暗黒を召し上がれ。