雷音/カミナリ
1. 雷音（Instrumental）
2. CLITICAL MOMENT
3. 人生楽なきゃ苦しかない
4. 青い咆哮
5. NIPPON CULT
6. 東京キラー
7. 天王道
8. 負け唄
ex-llll-Ligro-のメンバーが在籍している新バンド、カミナリ。
本作は、2000枚限定で無料配布されているミニアルバムです。
"まずはバンドの「音」で判断して欲しい"という強い意向のもと、いきなりアルバム作品をドロップ。
しかも、それを店舗で配布してしまうのだから、無謀というか、太っ腹というか。
公開されている「NIPPON CULT」についても、あえてMVを作成せず、リリックビデオとしているこだわりよう。
ヴィジュアルイメージやパフォーマンスではなく、とにかく音から入ってくれ、という方針は、バンドとしてあるべき姿であり、ある種、シーンへの挑戦でもあり、これは注目を集めそうですね。
SEを経て、「CLITICAL MOMENT」で勢いよくスタート。
Vo.KENTAROのハスキーで男らしい声質をフルに活かした楽曲といえ、がなり声を左右から交互にまくし立てるBメロ部分のインパクトは絶大です。
２分という短い時間に衝動性を途切れることなく注ぎ込み、その潔さがかえって印象を強めていました。
「人生楽なきゃ苦しかない」も、激しい衝動性を残したまま、キャッチーな要素、マニアックな要素もそれぞれ加えて。
なるほど、ハードにゴリゴリ攻めていくのが、カミナリのスタイルなのですな。
なんて思っていたら、重苦しいサウンドと中毒性の高いメロディが特徴のミドルチューン「青い咆哮」、レトロなギターと攻撃的なボーカルでV系歌謡ロックも守備範囲に捉えた「NIPPON CULT」、シャッフルリズムでジャジーにまとめた「東京キラー」と、想像を超えたバリエーションを見せてきたので驚いてしまう。
正攻法のラウド系、拳系のバンドと見せかけて、所謂、お洒落系的なアプローチにまで手を伸ばしているのだもの。
もっとも、それで軟派な印象に振れるかと言ったらそんなことはなく、硬派で尖ったイメージは維持。
これは、間違いなく彼らの武器になりそうな引き出しの広さですよ。
クロージングは、バキバキと唸るベースを前に出し、再び衝動的に畳みかける「天王道」から、哀愁漂うメロディアスなサビでさえ、バックのコーラスに妙に男臭さを感じさせる「負け唄」への流れ。
段々と彼らの聴かせたい音楽がわかってきたところで、その真骨頂をガツンと持ってくる構成の上手さも見せてきます。
正攻法の楽曲を１曲公開しても、埋もれてしまう。
かといって、１曲で幅の広さを示すことも難しい。
彼らの音楽性、および強みを考えれば、ミニアルバムの配布というのは効果的だったのではないでしょうか。
ちゃんとしたパッケージで、音質も悪くない。
ボーカルにやや垢抜けなさがあるが、そこはむしろ伸びしろがある期待値と捉えるべきところ。
ありそうでなかったラインを上手く突いている、多くの人の耳に届いてほしい１枚です。