哀燦々 / ヘルタースケルター | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

哀燦々/ヘルタースケルター

哀燦々(通常盤) 哀燦々(通常盤)
1,620円
Amazon

 

1. 哀燦々

2. シュレディンガーの猫

3. まやかし

4. ボーナストラック

 

期間限定バンドとして活動していたシュレディンガーの猫のメンバーが、新バンド、ヘルタースケルターを始動。

本作は、初の全国流通作品となるシングルです。

 

ex-叙情四重奏カノンのVo.朝比奈 悠さん、Dr.魅影さんが在籍。

メインコンポーザーはGt.御笠 ねるさんが担当していますが、悠さんの歌声を活かすべく、その流れを汲んだ歌謡ロックを武器としているようですね。

哀愁のあるメロディと、ストーリー性のある歌詞。

近年ではニッチになりつつあるものの、一定のニーズがある音楽性ですので、期待感が高まります。

 

「哀燦々」は、疾走感がある歌モノロック。

序盤は哀愁たっぷりに、サビまで進むとキャッチーに。

サビメロにおいては昭和歌謡っぽさが薄れていますが、そこだけを狙っているわけではなく、純粋に歌モノとして成立していれば良し。

そんな割り切りが潔くて、好印象でした。

テーマの重さに対して、ファルセットを使った歌メロには軽やかさすらあって、表に出している態度と内面での心境とのギャップや、自分と相手の温度感といった歌詞のストーリーとも結びつけてしまえるから奥深い。

シングルとして切ったのも納得と言えるでしょう。

 

準備期間中のバンド名を冠した「シュレディンガーの猫」は、レトロさを押し出した哀愁歌謡。

「哀燦々」が現代リスナーの聴きやすさも意識していたのに対し、こちらは終始、趣味全開といったところです。

お洒落なピアノのサウンドとは裏腹、場末感が漂っているのが、この曲の味わい。

丁寧な情景描写により、実際に届けられるサウンド以上に想像力が働きますよ。

 

本編最後は、「まやかし」で締め。

昭和歌謡ベースの歌モノバンドには必ずある、シャッフルリズムでレトロ感を出したノリの良さも求めるナンバー。

といっても、わちゃわちゃ騒ぎすぎず、ナイーヴさを残したまま進行していくのがヘルタースケルター流なのだろうな、と。

 

ボーナストラックは、ライブトラックの一部とラジオ風のコメント。

ライブテイクをまるっと聴かせてくれても良かったのに、と思う一方、収録曲として強引にメンバーのキャラクターを植え付けてしまうのは、バンドに愛着を持たせる意味では良い手なのかも。

特典のコメントCDだったら聞かない場合もあるけれど、これだったら1回は聴いてみよう、となるもの。

 

悠さんの歌唱力は安定感を増していて、表現にも磨きがかかった印象。

弦楽器隊のレギュラーチューニングによるシンプルなフレーズも、現代シーンではかえって新鮮でした。

このスタイルでどこまでシーンを駆け上がれるか、というのは注目したいところ。

素直に"良い曲"で勝負してくるバンドですので、気に入った楽曲が見つかれば、一気に深みにハマるのでは。