新宿は燃えているか / ヘクトウ | 安眠妨害水族館

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新宿は燃えているか/ヘクトウ

 

1. 新宿は燃えているか

2. クチナシ

 

Vo.小林写楽、Gt.桜井青、Dr.中西祐二にて結成されたヘクトウ。

本作は、その初手としてドロップされた1stシングルです。

 

【カッコー】以来、8年ぶりとなる小林写楽&桜井青のコンビ。

それぞれメトロノームやcali≠gariの活動がある中で、わざわざ新プロジェクトとして立ち上げるのだから期待が高まるのも必然で。

サポートベースには、アレルギー、JUST FOR ONE DAYの中西智子さんが参加。

このメンバーだからこその人選、といったところですね。

 

収録曲は、どちらもパンフレットに付属する"デモテープカード"にて発表されていた楽曲。

まさに結成当初のパッションが詰め込まれた作品ということになるのでしょう。

その中で、特に代表曲として育てていく意図が見て取れるのは、タイトルトラックである「新宿は燃えているか」。

"新宿系文学バンド"を提唱する彼らにとって、"そもそも新宿系とは何ぞや"という問いに対して真っ向から答えをぶつける、パワーを感じるナンバーなのですよ。

 

最初の一節を聴いただけで、作詞・作曲を担当したのが青さんであると理解できる、桜井節ど真ん中。
自身のことを歌っているようでもあるのだけれど、群像劇的に様々な感性が溢れかえる新宿という街を訪れる誰にでも当てはまりそうな普遍性を持っていて、なんとも共感できてしまう。
雑多な街に抱く、郷愁とは違う愛着と、群衆の中で感じる孤独感が、疾走するリズムとぶっきらぼうな歌い回しで表現されており、ヘクトウで実現したい音楽が感覚的に伝わる1曲に仕上がっていました。
最後にぐいぐい盛り上がっていくドラマ性もあって、これは反則でしょ、と溜息が漏れるぐらいにインパクトを残します。

 

カップリング扱いとなる「クチナシ」は、写楽さんの作詞・作曲。

2分台のショートチューンで、パンキッシュな衝動性が実に写楽さんらしい。

歌詞の文字数が多い青さんの歌詞とは対照的に、シンプルで短い言葉でまとめられているのですが、かえってそれが文学的にすら思えてきます。

引き算の美学とでも言いましょうか、情報量が少ない分、ひとつひとつの言葉に強度が出て、脳裏にこびりついてくるのだもの。

 

ひとまず、名刺代わりになる1枚が出来上がったといったところ。

【カッコー】は、その1枚だけで終わってしまいましたが、こちらはきちんとミニアルバムのリリースも発表されているので一安心。

より深掘りした世界観が堪能できそうで、楽しみです。