MeRISE / Sabão | 安眠妨害水族館

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MeRISE/Sabão

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1. 春 ~spring~(Sabão ver.)

2. なぜ…(Sabão ver.)

3. ふたりぼっち(Sabão ver.)

4. Dear(Sabão ver.)

5. グロウアップ(Sabão ver.)

6. BIG VENUS

7. アップデート

8. ||:Repeat:||

9. アソビ

10. Milk

11. あいうえおで へ~んしん

12. なぜ… [electro remix] byアサキ

13. 春 ~spring~[jazz piano remix] byござ

14. 今 ~present~

15. また明日

16. 未RISE

 

ex-Hysteric BlueのVo.Tama、Dr.楠瀬タクヤによるユニット、Sabão。

本作は、ヒスブル時代から数えてのデビュー20周年を意識して制作されたフルアルバムです。

 

「春 ~spring~」や「なぜ…」といったヒット曲のセルフカヴァーと、Sabãoでの代表曲、それに新曲「未RISE」を追加して現在、過去、未来を表現。

Sabão名義では初のフルアルバムにして、実質的なベストアルバムとも言えるでしょう。

ヒストリー的な内容になるのであれば、デビュー曲である「RUSH!」が入ってもいいかとも思ったけれど、20歳になる心境を綴った「Dear」を、デビュー20周年というタイミングでリテイクしたのは気が効いているというか。

Hysteric Blueからの選曲は、概ね納得感のあるラインナップでしたね。

 

再録曲については、やはり深みを増しています。

オリジナルの勢いやフレッシュさも魅力ではあるのですが、ミディアムナンバーの歌モノ「ふたりぼっち」では、表現の部分での成長が特によくわかる。

聴きすぎて新鮮味を失いつつあった「春 ~spring~」、「なぜ…」にしても、それぞれジャズとエレクトロにリミックスされたバージョンが収録され、ここにきて楽曲のポテンシャルがまだまだ残されていることを痛感。

ポップセンスはそのままに、大人の味わいを武器として足してきました。

 

Sabãoの楽曲群については、初のCD化となるものも多く、入門書としても機能しそうな内容に。

「Alliance vol.1」からの選曲がなかったのは意外ですが、アッパーなロックチューンである「Know」はタイプが重なる楽曲も多く、バランスを考慮すれば「Milk」をセレクトしたというのも理解できます。

配布CDだった「今 ~present~」、「また明日」も無事収録。

サウンドのバランスが改善され、しっかりした音質で聴けるようになったのはありがたい限りですよ。

 

音楽性としては、良い意味でヒスブル時代から変わっておらず、純粋にあの頃の続きを楽しんでいるイメージ。

背伸びしようという意識が抜け、シンプルに良いメロディを奏でることがモチベーションになっており、むしろHysteric BlueよりもHysteric Blueらしいとすら思えます。

特筆したいのは、「あいうえおで へ~んしん」。

小学館ドラゼミの特典に収録されていた、要するに幼児向けの楽曲となるのだけれど、実はヒスブルのカップリング曲には、言葉遊びを重視したこの手の楽曲が多かったのだ。

コアなファンこそ、これに当時の雰囲気を感じ取れたのでは。

 

最後に収録された新曲の「未RISE」は、"未来図"とのダブルミーニング。

伸びやかな歌声がマッチする、広がりのあるバラードで、バンドサウンドに絡まるピアノの音色が切なさを助長しています。

Sabãoの"未来"を示す楽曲ということで、明るく突き抜けていくのかと思いきや、なんともしっとりした楽曲だったので意表を突かれたのですが、楠瀬さんらしいメロディラインは相変わらずで、変わらないまま成長していくというメッセージのよう。

まだまだ、彼らの楽曲を聴いていたいな、と思わせるだけのパワーを持っています。

 

残念なことに、10月28日のライブをもって、Tamaさんのライブ活動の休止、およびSabãoとしてのライブ活動の満了が発表されており、今後の動向は不透明。

あくまでライブ活動と休止の範囲を限定していることだし、楽曲制作等はゆっくりでも続けていってほしいな、と都合の良い方に捉えたくなりますが、出されたコメントを見る限り、実質的には全面休止なのだろうなぁ。

ただし、"こういう夢なんてもう二度とないんだ"というフレーズが特徴的な「Know」を選外にし、「春 ~spring~」の"こういう夢ならもう一度逢いたい"を2回も詰め込んだ意図が、そこにあると信じたい。

ラストアルバムにはなってほしくないな、と強く願う1枚。