四人目ニ生マレタ精神分裂症ナル胎児ヘ / 螺旋 | 安眠妨害水族館

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四人目ニ生マレタ精神分裂症ナル胎児ヘ/螺旋

 

0. Hysterical silence

1. Noi[z]e

2. 殺戮

3. 蜃気楼

 

90年代後半のV系シーンには珍しい、女声ボーカルを擁した螺旋。

本作は、1999年にリリースされたデモテープです。

 

一般的なプラスチックのケースを、紙のパッケージで覆うボックス仕様。

各メンバーのフォトカードも付属して、とても豪華なのだけれど、テープは市販のものという。

なんとか個性を出そうと試行錯誤する、当時のインディーズバンドらしいギミックですな。

 

表記上、ゼロトラックとなっている「Hysterical silence」は、導入となるショートチューン。

メロディも歌われているけれど、そこに重ねられる語りのほうがボリュームが大きく、あくまで雰囲気作りといったところ。

ブツ切りのような形で終わり、リードトラックとなる「Noi[z]e」に突入します。

 

Vo.凪さんの歌声は、おどろおどろしく中音域に響かせることを意識している印象。

あまり高音に突き抜けることはせず、言ってしまえば男声ボーカルでも出せそうな音域なのだけれど、台詞まわしのような語りを多く取り入れたコテコテダークバンドの様式美を踏襲しており、だからこそ、持って生まれた声質の違いが引き立つのですよね。

歌い上げるところでの垢抜けなさが気になってしまうが、マイナーバンドのデモテープということで、そこは大目に見ておきましょう。

 

「殺戮」は、掛け合いを中心としたハードなナンバー。

肝心の掛け合い部分について、凪さんひとりの声でなんとかしようとしすぎていて、少々いたたまれない。

まぁ、こういうのを大真面目にやってもメタにならなかったのが、90年代という時代だったのですよ。

ラストの「蜃気楼」は、不協和音的なリフと、語りに近いボーカルラインが特徴的。

2分に満たない短い尺の楽曲なのだけれど、勢いよく攻めるというよりも、ドロッとした雰囲気を持っているのが不思議でした。

 

そもそもV系シーンにおいては好き嫌いを分ける女声ボーカル。

しかも、セオリー通りにメロディを活かすタイプの楽曲がないという、ニッチもニッチなバンドだった彼ら。

マイナーなままで終わってしまったのも、さすがに仕方なかったのかとは思います。

しかしながら、改めて聴いてみると、名古屋系バンドや和風ダークバンドに通ずるアプローチも見られ、演奏力なのか、表現力なのか、もうひとつピースがハマっていれば、唯一無二になっていたのかも。

リリースから20年近く経っても、まだまだインパクトだけは薄れていない作品です。