奥の唄道 / 最上川司 | 安眠妨害水族館

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奥の唄道/最上川司

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1. まつぽいよ

2. 望郷じょんから

3. 津軽海峡・冬景色

4. 北酒場

5. みそ汁の詩

6. みちのくひとり旅

7. 北国の春

8. 津軽平野

9. 南部蝉しぐれ

10. 北の花嫁

11. 愛しき日々

12. 花は咲く

13. まつぽいよ (English Ver.)

 

THE MICRO HEAD 4N’Sのドラマーとしても活動するTSUKASAこと、最上川司さん。

本作は、2015年にリリースした1stアルバムです。

 

インディーズ時代は企画モノ要素も残っていたのですが、デビューが決まってからは、その本格派っぷりに驚かされるばかり。

バンドよりもメディアへの露出が多いほどで、日に日に注目度は高まっていますね。

"山形発!世界初!!大型新人ビジュアル系演歌歌手登場!"というキャッチが示すとおり、山形出身を押し出している彼。

ソロとしては初となるフルアルバムは、自己紹介も兼ねてか、東北にちなんだ楽曲を集めたカヴァー集となっていました。

 

「津軽海峡・冬景色」、「北酒場」といった定番曲から、「みそ汁の詩」をはじめとした通好みなナンバーも。

演歌のカテゴリーではありませんが、東日本大震災のチャリティーソングであった「花は咲く」も、東北をコンセプトにしているのであれば納得の選曲。

このような歌謡曲も、しっかり演歌的な歌い回しで染め上げてしまうあたり、演歌歌手としての歌唱力が付け焼刃ではないことを示しているでしょう。

 

また、彼の特色であるロックとのクロスオーバーは、カヴァー曲でも健在。

ド演歌としてのイメージは崩さず、だけどズシリと響くドラムだったり、和楽器とエレキギターの融合であったり、ロックに慣れた耳にもすっと入ってくるように、ほんのりと味付けしているのがニクいですよ。

オリジナルでは、もっと踏み込んでデジタルサウンドで冒険する楽曲も制作していますが、そこはわきまえているといったところ。

あまりロックに寄せすぎてもイロモノ的な風合いが出てしまう中、老若男女に刺さる絶妙なバランスに仕上げてきたなと。

 

唯一収録されたオリジナルナンバーは、「まつぽいよ」。

掛け合いが入るノリの良さと、正統派の演歌節で、当初はV系演歌という意外性での面白さが先立っていたのだけれど、こうして往年の名曲の中に混ざっても違和感がなく、それでいてキラーチューンとして個性を放っているのを目の当たりにすると、スタンダードにもなり得るクオリティだったのだな、と改めて気づかされます。

どのニーズに対応したのかわからないが、英詞バージョンのインパクトも絶大。

英語の演歌を聴くという経験がなさすぎて、ついつい聴き入ってしまう。

V系リスナーにとっても、演歌のファンにとっても、とにかく斬新な発想だったことは言うまでもありません。

 

カヴァーアルバムは、ロックと演歌の橋渡しとして効果がありそう。

シリーズ化も展望してほしいものです。

もっとも、現時点で発表されているアルバム作品が、カヴァーアルバムとベストアルバムの2枚。

その前にオリジナルアルバムも聴きたいところですが、演歌の文化圏って、あまりアルバムは出さないものなのでしょうか。

 

<過去の最上川司(TSUKASA)に関するレビュー>

まつぽいよ/ひとひらの桜