LAST DANCE / Lycaon | 安眠妨害水族館

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LAST DANCE/Lycaon

 

1. LAST DANCE

 

2015年にリリースされた、Lycaonのラストシングル。

アルバムには未収録の表題曲、「LAST DANCE」を収録しています。

 

DVD付きの初回盤が3,000円、CDのみの通常盤が2,000円。

ブックレットは一般的なシングルよりも充実しているものの、1曲入りのシングルとしては割高であり、発売当初はファンアイテムの側面が強かったでしょうか。

現在では、一般的なシングル価格まで値下がりしており、当時購入を見送っていたリスナーは、改めて入手を検討してもいいタイミングかもしれません。

 

さて、内容ですが、こうきたか、と。

王道的な疾走チューンか、総括的なバラードか。

1曲だけでラストソングを切ってくるのであれば、その二択しかないかなと思っていたのですが、そのどちらでもなかった。

ある種の通常営業といったところで、メロディアスなミディアムチューンとなっていました。

 

Lycaonらしく、全体的に艶めかしさが漂っていて、どことなくアダルティ。

ギラついたダンサブルなアレンジに、悠希さんの色気のある歌声が絡みつきます。

一方で、歌詞は間違いなく終わりを意識していて、メッセージ性が強いものになっているのかな。

悲壮感が色濃く出ているのだけれど、決してそれだけではない。

次を見据えた力強さも感じ取れ、なんだかグッとくるのですよ。

 

スカッと爽快に終わらせてくれるわけではなく、余韻を残すのがいやらしい。

いつもの延長線上にあって、このままどこまでもLycaonが続いていきそうなのに、歌詞を読むと、それは幻想であると認識せざるを得ない切なさ。

正攻法ではないにしても、確実に爪痕を残すアプローチで、こんなラストの形もあるのかと感心してしまいました。

 

もっとも、その後の顛末はご承知のとおり。

同じメンバーでInitial’Lを立ち上げ、再び5人で音を重ねてくれています。

その意味では、本作のサウンドに感じた"このまま続いていきそうな感覚"は嘘ではなかったことになる。

もちろん、言葉は言葉でそのときの心情を正直に表しているのだろうけれど、音というのは、実は本人たちも気付いていないようなもっと素直な気持ちが表れていたりするのかな、と思ったり。

解散を前にしたメンバーの心境を想像しながら聴くと、より趣深さが増す1枚。

 

<過去のLycaonに関するレビュー>

Camera obscure -カメラオブスキュラ-

マゾヒストレッドサーカス

薔薇~Rose~
嘘と女と『 』