存在したくない/暗黒崎堕落子
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存在したくない
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1. フラン
2. 沈黙の悪魔
3. 揺れる陽炎
4. 虐殺天使
5. 自殺する僕の夢
6. 幼虫
7. 走馬燈
8. 饒舌な天使
9. 無言の悲鳴は鼓膜を裂く
10. 豚箱
"どんな学力も暴力の前では屈服せざるを得ない"を信念にアーティスト活動をしているきゅーちゃん。
本作は、"暗黒崎堕落子"名義でデジタルリリースされた1stアルバムです。
創作活動のメインは、デストピアな世界観をぶちまけるイラスト。
V系バンドのCDジャケット等にもイラストを提供してきた事実が証明しているとおり、目を背けたくなるようなダークな作風は、従来よりシーンとの高い親和性を持っていたと言えるでしょう。
そんな彼女が、自らの美学を音楽でも表現すべく制作されたのが、この「存在したくない」。
商業音楽とは一線を画すサウンドは、まさに冒頭の信念を体現するものでした。
音楽性としては、一貫してノイズ。
耳をつんざく機械音がメインディッシュとして据えられており、そこに奇妙な旋律の同期が重なっていくスタイルですね。
デカダンスにかろうじて彩りを添えていると言える暗黒崎女史のロリータボイスも肝で、メロディを歌うという一般的な歌謡曲とはかけ離れているものの、ある種の聴きやすさを与えています。
無邪気さを帯びた、尖った声質。
暴力を表現するサウンドを、より鋭利なものに変え、救いと絶望とは隣り合わせであると暗示しているかのよう。
アンサンブルやメロディがほとんどないので、相当に聴く人を選ぶ音楽なのだとは思う。
音楽理論から楽曲を評価したり、純粋に聴いたときの心地良さを音楽に求めるタイプのリスナーには、間違ってもおススメできない。
ただし、9割の人が嫌悪感を示したとしても、残りの1割は陶酔する。
そんなマイノリティのカリスマ的なポテンシャルは秘めているのではないかと。
付け焼刃の音楽理論で媚びるのではなく、あくまで表現の一環と腹を括って、躊躇なくこんな問題作を放り込める絶対的な自信こそ、彼女の強みなのだろうなぁ。
序盤はじわじわと、終盤に行くにつれて情報量を増やして、という構成も良し。
ボーカルがかなり押し込められたミックスになっているので、すべての歌詞を聴きとることはできませんが、10曲を通してひとつの物語という感覚。
アートワークも武器になるということを勘案すれば、デジタルミュージックではなく、CDで欲しかったなというのが本音です。
イメージカットを眺めながら、歌詞の解釈に没頭する、そんな楽しみ方も求めたくなる。
色々な意味で、他人には公言できない格好良さ。
イラストの世界観を音楽でも表現、と言うと月並みですが、知り得る限りにおいて、もっともそれを忠実に行っているなと感じる作品です。